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Book(Movie) Review-5:夜と霧

【もはや何も残されていなくても】

そのとき、ある思いがわたしを貫いた

ブック(Movie)レビュー 5th
「夜と霧」
著/Viktor Emil Frankl
訳/池田香代子

「好きな芸能人は誰なん?」って不意に聞かれ、思わず「上白石萌音"と西野七瀬」っと答えていた。後で頭を抱えて"スゲー若いし、関連性が全然無いじゃん…"と反省したが、同時に理由も思い出した。

著者はアウシュビッツに収容されたユダヤ人の精神科医で、収容所での生き抜いた体験と、壮絶で人間のある一線を超えた極限の状況を考察し、この1冊の本にまとめた。飢えと寒さと死が目の前にありながら、どのように人が壊れ、死に、また順応して行ったのか、"全集中の呼吸"で生き耐え抜くまでの精神の変化を丁寧に綴っている。

"悪意の手記"にも繋がるが、収容生活から解放された人々が、死の恐怖から逃れられず、暴力に手を染めていく過程も描かれていた。人は思ったほど自由になれず、自分を見失いやすい。

妻を思い出す章がある。自己実現の道が絶たれた悲惨な状況でも、内に秘めた愛する人の面影を思い出して満たされる事が可能だと。愛は生身の存在ではなく、哲学者の言う"本質"に関わっていて、肉体とか妻の生存は問題の外であると。人の一面を鮮やかに描いた考察だと思う反面、その愛が相手の拒絶(死を含む)で断絶したら、その末路を考えただけで心が荒む。極限であれば、または繊細であるほど、思いの断絶を恐れるほどに、愛の本質に触れようとは思わないのではないか。

この本は2回買っている。1回目は社会人1年目で、その時点で自分は相当にメンヘラだなっと思った(笑)
何回目かの転勤で、1回目の"夜と霧"を手放した。でも数年前、女優の上白石萌音さんのインスタで、この本を"大切な本"と投稿していた。こんな本を、こんな若い人が読むんですかっと驚愕したのを覚えている。でも、スゴい嬉しかったのも事実で、気がついたら彼女のアカウントをフォローしていた。その後の話、ある日の本屋さんで"夜と霧"に再会し、気がついたらレジの前に立っていた。

あ。
西野七瀬…



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