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Book(Movie) Review-2: ぐるりのこと。

本棚の本を紹介するブックレビューを、昔からやってみたくて始めてみました。今回は映画なのですがご興味あれば幸いです。
まずは1作品目

【ぐるりのこと。】

翔子:何で私なんかと一緒にいるのよ?
カナオ:好きだから・・・

ブック(Movie)レビュー 2nd
「ぐるりのこと。」
原作・脚本・監督:橋口 亮輔

学生時代に観た映画で、最も記憶に残る2本のもう1本で、今でも1番好きな映画。翔子は女性編集者として小さな出版社でバリバリ働き、仕事を転々としていたカナオは法廷画家の仕事を始める。翔子の母と兄夫妻はカナオの事を良く思っていないが、小さな命を宿した翔子には、将来の不安より喜びが大きかった。カナオと並んで歩く夜道で、翔子は小さくふくらんだお腹に手を触れる。幸せがあふれていた。しかし、その子どもを亡くした悲しみから、翔子は鬱に向かって坂を転がり落ちていく。

翔子とカナオの10年を、法廷で絵を描きながら繰り広げられる社会の変化とともに描いている。時代はバブル崩壊後の1993年から10年間で、2人は翔子の鬱とともに、プカプカと水面に浮かびながら丁寧に毎日を過ごしていく。坂を転がり落ちていったのは、翔子ではなくてその周りだった。

暗い映画だと思う。カナオが蜘蛛を殺そうした瞬間、翔子の鬱がピークに達し、カナオに向かって暴れ出す。家の中を暴れ回り、位牌の前で我に返って、位牌に目を背けて泣き沈む。カナオは背中をさすり、ただ静かにいる。翔子は呟き、カナオはそれに答え、翔子の鼻を舐める。その翌日から、2人の日々に光が刺しこむ。

自分が本当に病んでしまって精神科通院しているせいか、心が落ちしまっていた時に、この映画がとても救いになったような気がするし、学生の時に見た時と同じ様に、心の腑を鷲掴みにされた気がする。ある評論家は、監督について"人間のはらわたをつかんで描く"と評した。これからもずっとそばに置いておきたい大事な映画。

もし、これを知ったら、その時に心が弱ったり落ち込んだりしていたら、一度見て欲しい映画です。暗い映画だけど、見終わった時にベクトルが少しだけ上向いていると思います。落ちてる時はどうしようもないのだけど、ベクトルが上向く時に人間は変わります。必ず。。。

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