【コロナと私の日常】 Day95
95日目 8月9日(日)
ポロロンと響く携帯のアラームに友人の家で目を覚ます午前10時。寝るのが遅かったので、まだまだ眠い。小一時間ほどぐうたらして、出かける準備を始める。昭和記念公園でピクニックでもしようか、という話をしていた。
カーシェアの車を使って行く予定だったけれど、連休だからかなんなのか、近くの車は全部出払ってしまったらしい。仕方がないので、自転車を借りることにする。便利な世の中になったもので、最近はシェアサイクルも至る所で見られる。それでも、中国とかの自転車シェアの流行り具合には敵わない気がするけれど。電動自転車を借りてきた。つよい。
昼ごはんを食らいに、チャリできこきこ30分ほど漕ぐ。立川のららぽーとへいざゆかん。久々に電チャリに乗ったけれど、ペダルを踏むたびにぐわんとアシストが効くので凄い。もはや私の筋肉なんかいらないのではという気になってくる。それにしても、わたしの電動自転車はなかなか騒音を発していて、漕ぐたびにキュルキュルと変な音を立てているのでいつ壊れるかとちょっとハラハラした。壊れなかった、よかった。
滝のように汗をかきながらようやくららぽーとに着く。まるで蒸し風呂にいるような気分。立っているだけで汗が噴き出てくる。ここ半年で一番汗をかいている自信があるくらいには、汗をかいていた。建物内に入ると、人工的な涼しい風が体に吹き付けてくる。人工でも、天国ならばそれでいい。ありがとうクーラー。神様。素敵。コロナの感染者が400人を超えても、ららぽーとはそんなことはまるで嘘かのように混み合っていた。めちゃくちゃ密である。みんなもはや気にしなくなってきているらしい。行き交う人々がつけているマスクも、どうせ飾りみたいなものなんだろうな。社会性がある人間に少しでも見られたくて、ウイルスなんて防げないようなマスクをとりあえずつけている。私も、友人も。
Eggs 'n thingsでオムレツを食べて、ぶらぶらとウィンドウショッピングをして、昭和記念公園でサイクリングでもして帰ろうという話になった。オムレツは美味しかった。パンケーキを食べるお腹の余裕はなかった。私のTシャツの下は、汗で凄いことになっている。エアリズムを着ていてよかった。ありがとう、ユニクロ。
再びチャリに乗って、公園へと向かう。明らかな自然がだんだんと近づいてくる。セミの声、青い空、青々と茂った高い木々。その間を自転車で通り抜ける大学生。夏だ。夏を感じる。なんだか、青春かもしれない。こういうのを、青春と呼ぶのだろうか。チャリを漕いでいる間は外しているマスクが、前かごの中でちらりと顔を出す。
コロナウイルスが蔓延る世界で、私たちはこうしてマスクを外し、トトロの出そうな緑の木々に囲まれ、ミンミンと鳴くセミの声を聞きながら、自転車を漕いでいる。なんだか、幻想的で、非日常的で、綺麗だ。とても懐かしい感じがする。このなんとも言えない感動を、私はきっとこれからも思い出す。あの時、あの頃、コロナでも、こんな幸せがあったんだと、ふとした時に思い出すのだ。そのキラキラとした思い出を噛み締めて、私はずっと生きてゆく。辛い時にも、幸せな時にも、ふとした瞬間に、きっと蘇る記憶の中に、この今があればいいな、と強く思う。吉本ばななの言っていた、絶望の中で見出す光というのは、こんな見え方をするのだろうか。
450円を払って入園し、1時間ほどサイクリングを楽しむ。涼しさの中に熱の入り混じった風を顔に感じながら、ペダルを踏みつける。素敵な休日だった。私はこんな風に、楽しみたかったのだ。ずっと。そう思い出した。
そのまま鷹の台に戻り、自転車を返却して、パピコを食べて、友人たちと別れ、自宅へ帰る。揺れる中央線の中で本を開いたまま爆睡していたくらいには、疲れ果てていた。
熱いシャワーを浴びて、今日はもう寝よう。
ああ。今日は、夏を楽しんだ。
おやすみ。
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