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技術イノベーションの視点で見るウェアラブル市場の今後

 近年、Apple watchやSamsung GearなどのスマートウォッチやFitbitなどのフィットネストラッカーを身に着ける人が多くなり、ウェアラブルデバイスが急速に普及してきました。
 今後のウェアラブル業界はどのようになっていくのか、特許発行数のデータを元に見てみましょう。

 下記は、世界の特許データベースを運営するWorld Intellectual Property Organizationの特許データベースでキーワードを入力してヒットした数、及び特許発行数の成長率のプロットです。
 例えば、「スマートウォッチ」と入力して検索すると、特許にスマートウォッチというキーワードが含まれたものが表示されるため、検索ヒット数≈特許発行数としています。

ウェアラブル特許×成長率

出所:World Intellectual Property Organization 

※点線は平均線、2019年5月時点のデータ


 このグラフを平均線を元に4つのセグメントにわけると、下記のように分類できます。

①高成長率&特許数少: 技術が完全に確立されているわけではなく、マーケットのプレーヤーは技術開発を行っている最中。更に多くのプロダクトが近年市場に投下されると考えられる

②高成長率&特許数多: 技術が確立されており、プレーヤーがR&Dに投資し続けている。既に市場にプロダクトが存在し、さらに洗練されたプロダクトが投入されていく

③低成長率&特許数少: 技術が確立されておらず、市場のプレーヤーはあまりR&Dに投資していない。長期的な成長ポテンシャルはある

④低成長率&特許数多: 技術が確立されており、プレーヤーのR&Dへの投資が緩やかになっている。現在市場に存在するプロダクトが今後も残り続ける可能性がある

 このことから、技術イノベーションの視点で見ると、スマートウォッチ、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスは市場が顕在化している、スマートリング、ジュエリーなどは現在開発が進んでいる分野である、スマートクロージング(衣服)やスマートパッチなどはが本格的に市場に現れるのはまだ先といったことが読み取れます。



ウェアラブルデバイス市場のポテンシャル

 次に市場ポテンシャルを見ていきましょう。下記は、ウェアラブルデバイスの市場規模とウェアラブル関連特許の発行数のグラフです。

ウェアラブル特許×市場規模

出所:World Intellectual Property Organization, Varian market research
※特許付与数 = World Intellectual Property Organizationで「wearable device」と検索してヒットした数。2019年5月時点


 これを見ると、特許付与数が急激に上昇した数年後にプロダクト化され、プロダクトが市場に現れ、市場規模が増加しているということが言えます。市場のプレーヤーは更なる機能や改善を加えたプロダクトを投下し、市場規模が更に拡大していきます。ただし、特許付与数が時がたつにつれて緩やかな伸びになっているため、ウェアラブルの技術が確立しつつあるということが同時に言えます。

 ウェアラブルデバイス市場は、R&Dフェーズが終わり、市場拡大のフェーズに差し掛かっていると考えられます。


 スマートウォッチなどは既に普及していますが、今後は更に高度化が進み、電話、メッセージ、生体情報取得、音楽再生、決済、ウェブブラウジング、コードリーダーなどスマートフォンでできる事が不便なくできてくると更に普及していくでしょう。
 ヘッドマウントディスプレイは、既にゲーム、エンタメ分野での活用が進んでいますが、VR/ARの普及と共に更に広がっていきます。
 その他のデバイス(ジュエリー、衣服、パッチ等)は特定のニーズにマッチした製品開発によってニッチ市場として今後発展していくと考えられます。



著者

西垣和紀

高校を中退、仕事を転々としながら荒んだ生活を送るが、一念発起して留学カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)、オックスフォード大学大学院MBA(経営管理学修士)修了

外資系コンサルティングファームなどを経て、ロンドンのテックスタートアップの戦略責任者、外資系企業の取締役COOなどとして従事する傍ら、様々なメディアでの記事の執筆や留学・キャリア支援等を行う

また、アーティストとしても活動しており、1万人規模のフェスへの出演やイギリスのトップアーティスト「ピクシー・ロット」などと共演を果たすなど多方面で活躍

主な著書「オックスフォード大学MBAが教える人生を変える勉強法」、「図解入門 最新スマートデバイスのトレンド予測」



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