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【なるべく意識を低く保て】 書けないと悩む人のための、原稿の書き方 : 〜雑誌原稿を実例に〜

この記事は、執筆業を15年(専業5年/副業10年)ほど続けている人間が、どのように原稿を書いているかを解説する、執筆メイキング記事です。

私が2年、寄稿していた『本の雑誌』新刊レビュー原稿を例として、初稿から完成稿までどのようにバージョンを重ねているか、説明します。

◆【前置き】この記事を書いた背景

◇想定読者

想定読者は、「原稿をなかなか書き出せない人」「原稿を書くのに時間がかかる人」「原稿を思うように書けずに苦悶している人」です。

◇きっかけ

もともと本稿は、執筆に悩む家族のために書いた、家庭内閲覧用の文書です。

家族(執筆の専業経験なし)は、たまに専門領域の記事や書籍の執筆依頼を受けて書いています。執筆するたびに「書けぬ……書けぬ……もうだめだ……」とうめきつつ、どうにか書き上げるのが風物詩でしたが、今とりかかっている原稿はとりわけ難産らしく、毎日「何の成果も!得られませんでした!!」状態でした。大変だねえと話をしていたところ、「ふくろうは締切がタイトな原稿が多いわりに、苦悶している様子なく書き続けているが、どうやっているのか」と質問を受けたので、アンサーとして書きました。

私の執筆スタイルは、専業時代にいろいろ試した末にたどり着いた独自スタイルなので、あまり参考にはならないのでは……と思いましたが、少なくとも家族の役には立ったようで(なんと、半年以上も寝かせていた原稿に再着手できました!)、インターネットにも放流することにした次第です。

◆【概要編】執筆スタイルの全体像

まずは、原稿執筆の全体像を俯瞰します。私の場合、原稿執筆は下記のように進めます。

◇執筆の進め方

  1. 最初から最後の結びまで、通しで書いていく

  2. 書いている途中は、前に書いたものに戻らない(編集や書き直しをしない)

  3. 最後の結びまでたどりついたら、また最初から、読み編集しながら書く

  4. 仕上がるまで、1~3を繰り返す

原稿を最初から最後まで書く回数は、4~7回ほどです(3000~1万字ぐらいの場合)。私が回数を重ねて書くのには、理由があります。

◇「意識を低く、ラフに何度も書く」を目指す

この執筆スタイルで目指すのは、「ラフに何度も最後まで書く」「書く心理ハードルを下げる」「なるべく意識を低く保つ」ことです。

1バージョンで高い完成度を目指さず、何度も編集を重ねて、じわじわと完成度を上げていきます。

後ほど私の初稿を掲載しますが、まあ読めたものではないです。「これは初稿と呼べない」「ただのメモでは?」と思うレベルです。しかし、この低クオリティの文章をあえて「初稿」と呼ぶことで、意識を低く保てるようになります。

ちなみに、書けないと苦悶していた家族の執筆スタイルは、「完成度の高い日本語で書いていき、あまり気が乗らない時は前に書いた文章を見直してブラッシュアップして、気力があるときに新しい文章を書いていく」ものでした。

私のスタイルと比べると、格段に意識が高いです。その結果、書く心理ハードルが上がる→書き始めることがおっくうになる→ずっと気が乗らない状態になる→新しい文章を書き始められなくなる→前に書いたものの見直しばかりをする、と状況が停滞していって、原稿進捗が死んだとのことでした。

原稿を思うように書き進められないのは、意識(=ゴール設定)の高さが原因である可能性があります。「完成度の高い原稿」「滋味のある文章」「オリジナリティのある文章」など、最初から目指したところで書けません。意識を高くしすぎると、現実と理想のギャップを目の当たりにしてしまい、原稿が進まなくなります。

原稿執筆に、高い意識は無用です。意識は、なるべく低く保つように心がけます。

◇各稿フェーズで目指すゴール

「意識を低くする」=「ゴール設定を低くする」ことです。

意識=ゴール設定を低く保ちながら、フェーズごとに原稿の完成度をじわじわと高めていきます。各フェーズのゴール設定は、下記のとおりです。

  • 初稿:完成度30%
    【ゴール】書き始める/頭の中にある情報やアイデアを出す/とりあえず最後まで到達する
    →頭の中をそのまま垂れ流すフェーズ。読者=自分のみ。他人が読めるレベルではない。

  • 再稿(二稿、三稿):完成度30%→70%
    【ゴール】内容と流れを固める/他人が読める日本語で書く
    →初稿を整理して減らし、中身を足していくフェーズ。読者=他者が読むことを考えて、読める日本語で書く。内容と流れを完成させる。

  • プレ最終稿:完成度70%→90%
    【ゴール】読者として読める文章に仕上げる/納品基準をクリアする
    →自我を捨て、他人(=読者/はじめて原稿を読む編集者)になりきって読んで編集するフェーズ。誤字脱字の修正、口調の統一、文字数の調整などを行う。

  • 最終稿:完成度90%→100%
    【ゴール】読者として、違和感なく読める/自分が編集者なら、直すところがない文章に仕上げる
    →プレ最終稿を一晩寝かせて、最後に読み直し、「自分の中で完成」レベルに仕上げるフェーズ。

各フェーズの進捗については、実際の原稿を見たほうがいいと思うので、実際の原稿進捗を例として用いて、細かいところを見ていこうと思います。

※この原稿フェーズは私の執筆スタイルに合わせたものなので、一般的な「初稿」「再稿」とは意味が異なります。

◆【実践編】原稿の要件確認

さて、ここから実践編です。

実践編では、月刊誌『本の雑誌』の連載「新刊めったくたガイド」に寄稿した原稿(2022年10月号)の一部を、サンプルとして使います。

執筆にとりかかる前に、出版社/メディアの原稿要件を確認します。

「新刊めったくたガイド」原稿の要件

  • 直近1~2か月に刊行された海外文学の新刊紹介

  • 1回につき4冊以上を紹介

  • 文字数:上限2324文字

  • 必須項目:書誌情報(著者/タイトル/訳者/出版社/価格)、あらすじ、見どころ

  • 表記:出版社から共有された表記表に準拠

この連載原稿の特徴は、「少ない文字数で、必要情報をみっちみちに盛りこむ」ところです。300~500字で1冊の本をあらすじ付きで紹介するのはなかなか大変で、いつも文字数との戦いでした。

この原稿は文字数調整に時間をとりますすが、広告のコピーライティングはもっと文字数制限がシビアですし、企業向けのPR記事などは、内部調整の大変さがあります。原稿ごとの要件と納品レベルは、書く前に、依頼者としっかりすりあわせて、合意をとっておきます。

◆初稿:自分以外には読めない文を書く

それでは、初稿です。C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』を紹介した文章サンプルです。

◇初稿

C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房二八〇〇円)。舞台、ゴールドラッシュ後、荒廃したアメリカ西部。中国系移民2世の子供2人の家族の物語。親世代と子供世代、2つの世代の物語。最初から腐乱パパが強烈。腐乱パパでぐっとつかまれ、どうなる腐乱パパと気になる、ぐいぐい読んだ。勢いがある。限界旅。親たちと一緒の極貧暮らし、においがやばい。移民小説の貧乏描写の迫真、『サワーホーム』もやばかった。「ホーム=家」「土地」という意味の多重性。土地を求める理由。黄金、富、安住の土地、ここは自分の故郷だといえる場所。父はアメリカの土地に富を求め、母は中国の土地に故郷を求める。子供たちが求めたもの、自分たちを受け入れてくれる土地。中国とのつながりはない。すでに故郷がなく、故郷喪失者としての2世の痛みがつらい。あのラストはどう解釈。風景描写が美しい。荒廃した丘、黄金色の土地の美しさが光る。かつて黄金が埋まっていて収奪されたけれど、なお黄金に輝く土地。コーマック・マッカーシーぽい。ホームを夢見ながらも叶わない一家の苦悩と、バッファローのもので収奪された歴史を持ち、西部の土地が掘り尽くされて所有されてきた歴史が重なる。家族小説。移民小説。移民2世の苦悩。アメリカ移民小説の定番を踏襲しつつ、新しい地平。古くからある西部小説の21世紀に書き直した小説。

この初稿は、新生児がうまれた直後、連続した睡眠時間が3時間しかとれなかった限界コンディションで書きました。思いついた文章をそのまま垂れ流して書き、見直しも修正もしていません。書いた期間は1日(1〜2時間)です。

◇初稿の特徴

さて、初稿を読んだ感想は、「読みにくい」「内容がよくわからない」だと思います。

初稿が読みにくい/内容がよくわからない原因を、技術的な視点から挙げてみます。

  • 体言止めの多用(例:「土地を求める理由。」)

  • 言葉の重複(例:「家族の物語」と「2つの世代の物語」)

  • 内容の重複(例:「子供2人と家族の物語」と「家族小説」)

  • 助詞「の」の連続(例:「中国系移民2世の子供2人の家族の物語」)

  • 文法エラー(例:「古くからある西部小説の21世紀に書き直した小説」)

  • 長い修飾句(例:「バッファローのもので収奪された歴史を持ち、西部の土地が掘り尽くされて所有されてきた歴史」)

  • 説明のない独自用語(例:「腐乱パパ」)

  • 前提知識を必要とする固有名詞の使用(例:『サワーハート』、コーマック・マッカーシー)

  • 答えのない自問自答(例:「あのラストはどう解釈」)

  • 前後の脈絡のなさ(全体的)

  • ネタバレ的な記述(例:「父はアメリカの土地に富を求め、母は中国の土地に故郷を求める」)

一言で言えば、読者のことを考えていない文章だから読みにくいわけです。

ですが、私としては、初稿はこれでOKです。「初稿が目指すゴール」はクリアしているからです。

◇初稿が目指すゴール

初稿が目指すゴールは、3つです。

  1. 書き始める

  2. 頭の中にある情報やアイデアを出す

  3. とりあえず最後まで到達する

とりあえず書き始めること、頭の中にあるアイデアや情報をとりあえずいったん出しきること、とりあえず最後まで書き終えること、この3つがゴールです。

逆に言えば、この3つ以外はスルーします。文法として正しい日本語、読者が読みやすい日本語、オリジナリティや音の美しさが光る日本語、そんな高いレベルは求めません。

読者は自分のみと割り切り、自分が読んでわかればいい日本語にしています。

初稿というよりは執筆メモに近いですが、あえて初稿と言い張ることにしています。初稿に求めるゴールは、意識的に低く設定する必要があるからです。

◇初稿ポイント1:いちばん重いタスクは「書き始める」

なぜかといえば、原稿で最もつらいタスクが「書き始める」ことだからです。

書き始めるタスクは、最初にあるわりに、心理ハードルがとてつもなく高い作業です。人類に仕事が向いていない理由の大半がここにあり、「致命的な設計バグ」と呼んで差し支えないと思います。とはいえ、締切は待ってくれません。

心理コストを低くするには、ゴールを実現可能レベルまで低く設定することで対応します。

書き始めることができれば、仕事の3割は終わったも同然で、初稿を最後まで書けたら5割は終わっている、と言っていいでしょう。

◇初稿ポイント2:アイデアを出し切り、脳内メモリを開ける

原稿という大仕事を完遂するためには、初稿段階でなるべく精神の重荷を降ろしたいものです。

精神的な重荷1号は「書き始める」ことです。

精神的な重荷2号は、「まだ書いていないため、記憶していなければならないアイデアや情報」です。

言語化していないアイデアや情報は、脳内ワーキングメモリの相当量を食います。私は脳内ワーキングメモリが少ない自覚があるので、書いていないことがあるだけで、「覚えていなくちゃ……でも忘れそう……いや覚えていなくては……」とプレッシャーを感じて、疲れて眠くなって気分転換をしたくなります。そうすると、原稿の進捗が終わるわけです。

解決策は、とりあえず全部を書いて「外部記憶」にしてしまうことです。そうすれば、きれいさっぱり忘れても安心安全。「書きたいことを覚えていなくてはならない」プレッシャーから解放されます。

◇初稿ポイント3:「最後まで書いた」実績をつくる

精神的な重荷3号は、「まだ最後まで書いていない焦り」です。

限界執筆村で古くから伝わることわざに「書き終えられないのは、書き終わってないから」があります。

「こんなに書いたのに、まだ30%しか進んでいない……」「こんなに苦労して、まだ半分……」「まだ70%……残り30%もあるの……??」と、心理プレッシャーを感じながら書き続けるのは、並大抵のことではありません。

こんな心理プレッシャーからは、なるべく早く解放されたいものです。

たとえ人に読ませられるレベルではなくても、いちど最後まで書いてしまえば「いったんは最後まで書いた」実績を解除できます。

この実績解除の心理効果は、目覚ましいものです。「きれいな文章で全体の20%しか進んでいない」より、「20%レベルの質で最後まで書いている」ほうが、同じ完成度であっても、安心感がぐっと高まります。

それに人間は、「新しく書く」よりも、「すでに書いてあるものを編集する」ほうが楽だと感じる生き物です。

たとえメモレベルの質でも、いったん終わらせたものを編集し続けるほうが、結果として、ずっと早く仕上がります。

◇初稿ポイント4:「時間と気力が必要」幻想を捨てる

精神的な重荷4号は、「執筆にはじゅうぶんな時間と気力が必要」幻想です。

初稿段階で意識(=ゴール設定)を高くすると、「じゅうぶんな環境と時間と心理的余裕がないと取り掛かれない」「今はまだその時ではない」と、原稿執筆を後回しにしがちです。

しかし、「じゅうぶんな環境が整えば書ける」は妄想です。「すべてがそろった時」はやってきません。

まあ、たまにはあるかもしれませんが、あったとしても年に数回のことで、ずっと待っているのは非現実的です。待っている間に人生が終わります。わからない人は、ディーノ・ブッツァーティ『タタール人の砂漠』を読んでください。

理想のコンディションを待った結果、やってこなくて、締切ぎりぎりになってようやく始めて、満足できないアウトプットになってしまう悲劇が繰り返されます。

なので、「本気を出せばいける」妄想と、高いゴール設定を捨て、ハードルが低く実現可能なゴールに書き換える必要があります。

実現可能なゴールとは、「じゅうぶんな時間と環境がない中、たいしたアウトプットを出せない自分を許容する」ことです。

上述のとおり、私はこの初稿を、睡眠時間がとれない限界コンディションで書きました。「じゅうぶんな時間と環境」とはほど遠い状態ですが、意識を低くしていれば書けるし、「まあこのレベルでもいっか」と自分を許せるようになります。

◇初稿ポイント5:未整理の文章ならではの情報がある

初稿は頭の中の垂れ流しなので、未整理ですし、重複している情報がいくつもあります。これはこれでいいことです。なぜなら、重複そのものがメッセージだからです。

重複する内容はだいたい、自分が何度も思いつく情報、すなわち「重要な情報」「書きたい情報」です。重複した内容は、再稿フェーズで、整理してまとめて、配置場所を考えればいいことです。

初稿で「これはさっきも書いたな」「この情報をどこに置くべきか」と悩み始めると、執筆スピードが落ちて、最後まで書き切れなくなります。

悩む作業は、強い決意と自己信頼でもって、再稿フェーズの自分に丸投げします。

◆再稿:減らし、足し、編集する

次は、再稿(二稿、三稿)です。再稿は、初稿を「頭から読みながら修正していく」スタイルです。2回書いた原稿のうち、新しいほう(三稿)を紹介します。

◇再稿

重めの家族小説がすごい。1冊目は、アメリカ西部で黄金採掘の夢を見た中国系移民一家を描く、C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房二八〇〇円)。舞台は、ゴールドラッシュ後の荒廃した西部。中国系移民2世の子供たち二人が、死んだ父を埋葬する場所を求めて、父の死体を馬で運びながら、西部の荒野を放浪している。黄金を採掘され尽くした西部の岳を背景に、一攫千金の夢を見て西部を転々としてきた一家の歴史が紐解かれていく。父の埋葬パートは、とりわけ強烈だ。ろくな装備も食料もない限界旅の中、父の死体は容赦なく腐乱していくのだが、子供たちの対応がいちいちすごい。人間の旅は限界であるにもかかわらず、かつて黄金を抱いていた丘の風景は美しく、対比が見事だ。一家の会話には、"土地"と"家(ホーム)"という単語が繰り返し登場する。安住の土地=ホームを夢見ながらも叶わない一家の苦悩と、かつてバッファローのものだった西部の土地が掘り尽くされ所有されてきた歴史が重なる。アメリカ移民小説でありながら、古くからある西部小説の書き直しでもある家族小説。

再稿は、昼寝をして頭がすっきりして、頭がそれなりに働いている労働モードで書きました。

家族に新生児の世話を頼んで6時間睡眠をとり、日中1〜2時間ずつの細切れ時間をつないで、数日かけて書いた記憶があります。

◇再稿の特徴

再稿は、「それなりに読んで読める」レベルかと思います。理由は、初稿の特徴で上げた問題点に対応しているからです。

初稿で挙げた問題点には、「減らす=削除/統廃合する」「足す=情報や文章を書き足す」「修正する」の3パターンで対応します。

減らしたもの

  • 言葉の重複

  • 内容の重複

  • 答えのない自問自答

  • ネタバレ的な記述

  • 長い修飾句

足したもの

  • 体言止め→文章化

  • あらすじ、登場人物、説明

  • 用語への説明

修正したもの

  • 助詞「の」の連続

  • 前後の脈絡のなさ

  • 文法エラー

  • 長い修飾句

◇再稿が目指すゴール

再稿が目指すゴールは、2つです。

  1. 他人が読める日本語で書く

  2. 内容と流れを固める

初稿は読者=自分のみでしたが、再稿では「自分以外の人間」が読んでわかるレベルまで日本語を仕上げます。

「内容と流れを固める」とは、大幅な内容修正を必要としないレベルにまで書き上げることです。

「大幅な内容修正を必要としないレベル」は、「読んでいるときの直す頻度」で判定します。最初から最後まで読んでいって、大きな加筆や削除、順序変更をしなかったら「ゴール到達」としています。

再稿はいちばん時間がかかる作業です。テーマや相性によりますが、だいたい2~4回、「最初から読みながら最後まで編集して書く」を繰り返します。

かかる日数は、バージョンごとに1~2日で、全体で3日~7日ほど(2000~1万文字の場合)で仕上げます。

※副業のため、細切れ時間を作業時間に充てています。だいたい1日あたり1〜4時間の作業時間です。子供が家にいる土日の日中は作業できないので、平日での換算です。

◇再稿ポイント1:完成した日本語は目指さない

再稿フェーズでは、「他人が読んでわかるレベルの日本語」を目指しますが、「納品レベルの日本語」は目指しません。

なぜなら日本語の細部をこだわって修正するのは、「最後の最後」でやったほうがいいと思っているからです。

多くの読者は基本的に、一気に文章を読みます。そのため「一気に読んだ時に違和感がない」ものである必要があります。

ですが、再稿フェーズでは、数日かけて文章を修正しています。この「数日かけて書く」が落とし穴です。「ベストな日本語」はその日その日によって少しずつ違います。書いた日ごとのベスト日本語を集積すると、微妙にトーンが異なる「ベストの集合体」になってしまい、全体のトーンが合わなくなります

  • 序盤:1日目のベストな日本語=A

  • 中盤:2日目のベストな日本語=A'

  • 終盤:3日目のベストな日本語=A''

結果、後から読み返すと「なんか日本語の流れがおかしい」と感じて、せっかく磨き上げた文章をまた編集しなおすことになります。完全に無駄な作業です。

なので、再稿は「内容の精査」のみに集中し、「日本語の精査」は次のフェーズに丸投げます。

◇再稿ポイント2:想定読者の知識に合わせて書きこむ

「書き足す」情報の書き込みレベルは、想定読者の知識レベルを考えて書きます。情報の書き込み量が変わってくるからです。

このレビュー原稿の場合を考えてみます。『本の雑誌』は、本に興味を持つ人に幅広く向けた雑誌です。日本語の本に興味を持つ人が読む雑誌で、必ずしも文学や海外文学を読みなれた人が読むわけではありません。だとすると、「海外文学ファン」向けの書き方では、読者を置いてけぼりにする可能性があります。

例えば、下記の文章サンプルを見てみます。

この西部描写は、コーマック・マッカーシーを彷彿とさせる。

海外文学ファンになら「なるほど、西部のドライ殺伐ブラッディエモ系ってことね」となんとなく雰囲気が伝わるかと思いますが、そうでない人にはさっぱりだと思います。ちなみに、コーマック・マッカーシーは現代アメリカの小説家で、多くの作品が映画化されています。現代アメリカ文学の超有名どころなので、「全人類が知ってるのでは?」とガイブン狂は考えがちですが、世間ではそうではありません。

もうひとつ例を。下記は、IT専門媒体向けの文章サンプルです。

Wi-Fi6(11ax)の最大通信速度(理論値)は、Wi-Fi 5(11ac)の約1.4倍です。理論値は1.4倍とそれほど速くなった印象は受けませんが、実行スループットは4倍と、大幅に向上しています。Wi-Fi6より搭載された技術「OFDMA」と「MU-MIMO」により、同時接続台数の増加と実行スループットの高速化が可能になります。

ネットワーク技術の知識があるていど読者を想定しているので、用語説明を省き、「理論値は1.4倍? それほど速くないね。Wi-Fi5になった時はもっと速くなったでしょ?」という感覚を共有している前提で書いています。ネットワーク技術の知識がない読者には「なにが速いのか、なぜ速いのか、よくわからん」文章だと思います。

このように、想定読者の知識が高いほど、説明を省略できますが、知識がない読者には読めない文章になります。幅広い読者を想定する場合は、説明が長くなり、文字数が増えます。

想定読者が持つ知識レベルは、きっちり決めておく必要があります。想定読者の知識レベルによって、内容、構成、文字数、すべてが変わってくるからです。

再稿で想定読者と情報書き込みレベルをきっちり決めておかないと、後々、大幅な手戻りが発生します。最悪の場合、編集者に提出した後に、大幅な加筆を求められることになります。

執筆前と再稿の段階で、「想定読者」の認識を一致させておく必要があります。心配なら、あるていど書いたら、担当編集者や協力者に相談するとよいでしょう。

◆プレ最終稿:他人の目線で読んでいく

内容をあらかた完成させたら、次はプレ最終稿です。

プレ最終稿は、再稿のいちバージョンではありますが、ゴール設定が再稿と異なるため、わけて考えます。プレ最終稿は、「原稿」としての完成度を上げるフェーズです。

◇プレ最終稿

ヘビー級の家族小説が豊作だった。まずは、黄金採掘の夢を見た中国系移民一家を描く、C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房二八〇〇円)。舞台は、ゴールドラッシュ後の荒廃したアメリカ西部。中国系移民2世の子供たち二人が、死んだ父を埋葬する場所を求めて、黄金を採られ尽くして荒れた丘陵を放浪するところから、物語は始まる。旅の情景とともに、黄金を夢見て土地を転々とし続けた一家の歴史が紐解かれていく。まず、この父埋葬パートが強烈だ。父の死体は処置もなしにトランクに詰められているので、容赦なく腐っていくのだが、腐乱父への子供たちの対応がいちいち凄まじい。回想される一家の極貧生活も過酷で、安住の土地=家(ホーム)を望む一家の切望が迫ってくる。土地は、黄金を供給する富の源泉であり、安定した生活の土台であり、アイデンティティの拠り所でもある。さまざまな意味で土地を求める一家の歴史と、人間の強欲により収奪され所有されてきた西部の歴史が重なる展開が見事。人間の強欲にさらされながらもなお黄金に輝く丘の美しさ、荒野系シスターフッドなど、見どころが多い。ドライな荒々しさと割り切れない感情が融合した、鮮烈なウェスタン小説。

プレ最終稿は、再稿を書いてから1日寝かせて、書いた自分から少し距離を置いた状況で書きます。

最初から最後まで読みながら編集するスタイルは、再稿と同じですが、内容の修正はほとんど行いません。

だいたい1~2回で、各バージョンを数時間以内で終わらせます。数時間以内で終わらないレベルの場合、まだ内容が固まりきってないので、再稿フェーズに戻ります。

◇プレ最終稿で目指すゴール

プレ最終稿で目指すゴールは、2つです。

  1. 読者として読める文章に仕上げる

  2. 納品基準をクリアする

「再稿ポイント1:完成した日本語は目指さない」で未来の自分に丸投げした、「完成した日本語にする」「納品できるレベルの日本語にする」タスクを、このフェーズで仕上げます

そのために必要なタスクは下記です。

  1. 他人=読者の目線で読み、違和感がない流れにする

  2. 文字数を目標値に合わせる

  3. 語りのトーン(音の調子)を統一する

  4. 表記統一をする

いちばん重要かついちばん難しいのが、他人=読者の目線で読むことです。

◇プレ最終稿ポイント1:自我を殺す

他人=読者の目線で読むとは、すなわち自我を殺すことです。自分は執筆者であり最初の読者なので、当然すべての内容を知っています。なので自己校正をしていると、つい自分が知っている情報を脳内保管して読みがちです。

他人目線で読むとは、書いていた時期の記憶を抹消し、想定読者レベルの知識レベルに合わせて、はじめて読む人間になりきって読むことです。

おそらくプロとアマチュアでいちばん差が出るのが、このフェーズだと思います。これを難なくできる人は、執筆職や教職やコンサルティングなど、人に伝える技術を獲得している人で、訓練なしに自分でやるのは、けっこう難しいと思います。

とはいえ、そんなことを言ってられない人が多いと思うので、現実的な方法を書いておきます。

いちばん簡単かつ確実な方法は、担当編集者に確認することです。寄稿ならこれで解決ですが、担当編集者がいない個人執筆の場合には使えません。

担当編集者がいない人にとって簡単な方法は、「原稿をしばらく寝かせる」ことです。昨日の自分は「チョット他人」、1週間前の自分は「けっこう他人」、1か月前の自分は「ほぼ他人」です。あらためて読む時は、読者目線に近づいているはずです。

もうひとつの簡単な方法は、「自分以外の他人に読んでもらう」ことです。これは明確に「他人」に読んでもらう方法なのですが、読み手の知識が同レベルだと改善点を見つけられないところ、身内だと甘い判定になりがちなところが、悩みどころです。

最後の方法は、外部のプロに頼むことです。質担保としては確実ですが、お金がかかります。プロの指摘は勉強になることが多いので、私としてはおすすめですが、毎回できるものではないです。なので、自分にとって大事な文章、チャンスが限られている文章(入試/就職の志望動機など)などは、プロに見てもらうことを考えてみるとよいでしょう。

◇プレ最終稿ポイント2:文字数を削る

文字数合わせは、雑誌やコピーライティングなど、文字数制限がある原稿の場合、必要になる作業です。Web記事など、文字数に制限がない記事では、このタスクは飛ばせます。

文字数削りは、「無駄な情報を削る」「無駄な文字を削る」の2パターンがあります。

細かいテクニックはキリがないので、簡単な例だけ挙げます。

削れる情報の例

  • 細かいスペック情報(例:アメリカ合衆国フロリダ州→ アメリカ or フロリダ州)

  • 形容詞(例:美しい海→海)

  • 副詞(例:かなり難しい→難しい)

  • 誇張表現(例:全人類に自信をもって勧めたい→勧めたい)

削れる文字の例

  • 略称がある名前(例:アメリカ→米国)

  • 二重否定(例:興味がない本は読まない→興味がある本を読む)

  • 受動態(例:私は彼に言われた→彼は私に言った)

  • 「思う」(例:とても刺激的だと思う→とても刺激的だ)

  • 「という」(例:文章が長いということが問題→文章の長さが問題)

  • 「すること」(例:新しいことに挑戦することを目標にする→新しいことへの挑戦を目標にする)

※「という」「すること」は皆よく使いますが、9割いりません。これを削るだけで、だいぶシャープになります。

◇プレ最終稿ポイント3:語りのトーンを確認する

頭の中か実際に声に出して、語りのトーン(口調、音の響き)を確認します。

ここは、「ポイント2:文字数を削る」と競合するところです。文字数を削りすぎると、書き手のボイス(語りの調子)が失われます。

ニュースやマニュアルは、書き手の主観や個性を必要としない文章なので、削れるだけ削ればいいでしょう。

一方、コラムやエッセイ、文芸などは、むしろ「書き手のボイス」にこそ価値があるので、削りすぎると原稿の質を損ないます。

また、読者にやさしく語りかける口調が必要な文章(読んでもらって行動をうながす文章)も、事実だけをそっけなく書いていると「冷たい」「難しい」と思われて、本来の目的(読んでもらい、行動をうながす)を達成できません。

さらに、個人の好みだってあります。私の場合は、大和言葉の響きが好きなので、硬い音よりもやわらかい音の響きを好みます。

なのでここは、原稿要件に合わせて都度、微調整する必要があります。

「新刊めったくたガイド」の場合、必要情報を盛り込むだけで文字数に到達するので、言葉の響きを削り、文字数を優先しています。結果、書きたい内容の大半を削り、あまり自分らしくない文章に仕上がっていますが、商業執筆とはそういうものですし、書き足りないことはブログで書けばいいので、ここは割り切っています。

◇プレ最終稿ポイント4:1文字ずつ読んで表記統一する

最後の最後に、表記統一を行います。この作業は、プレ最終稿の最終バージョンでやります。

書いている途中で表記統一をしたくなりますが、ぐっと我慢します。表記統一した後に編集した個所の表記揺れを見逃すからです。これは専業の現場でもよくあるミスです。

寄稿の場合、各媒体の校正表をもらっておくとスムーズです。特に決まりがない場合は、なにかしらの表記統一ルールに従うと便利です。

私は専業時代、『共同通信社記者ハンドブック』を使っていたので、この表記ルールをベースにして、自分好みにちょっと変えた表記で書いています。

普段は適当に生きていて、数字の桁を読み間違えたり、行き先の駅をまちがえたりする私ですが、校正モードの時は、1文字ずつ最初から読んでいきます。

◆最終稿:読者/編集者目線で読む

いよいよ最終稿です。

◇最終稿

ヘビー級の家族小説が豊作だった。まずは、黄金採掘の夢を見た中国系移民一家を描く、C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房)。舞台は、ゴールドラッシュ後のアメリカ西部。中国系移民2世の子供たち2人が、死んだ父を埋葬する場所を求めて、黄金を採られ尽くして荒れた丘陵を放浪するところから物語は始まる。旅の情景とともに、黄金を夢見て土地を転々とし続けた一家の歴史がひもとかれていく。まず、この父埋葬パートが強烈だ。父の死体は処置もなしにトランクに詰められているので、容赦なく腐っていくのだが、腐乱父への子供たちの対応がいちいち凄まじい。回想される一家の極貧生活も過酷で、安住の土地=家(ホーム)を望む一家の切望が迫ってくる。土地は、黄金を供給する富の源泉であり、安定した生活の土台であり、アイデンティティの拠り所である。さまざまな意味で土地を求める一家の歴史と、収奪されてきた西部の歴史が重なる展開が見事。他にも黄金に輝く西部の風景描写、荒野系シスターフッドなど、見どころが多い。ドライな荒々しさと割り切れない感情が融合した、鮮烈なウェスタン小説。

最終稿は、プレ最終稿を書いてから1日寝かせて、すっきりした午前中に、集中して一気に終わらせます。私の場合、下記はマスト条件です。

  • 書いてから1晩以上が経過している

  • 7時間以上寝ている

  • 午前中

  • 割り込みタスクがない(あっても無視する強い決意を持つ)

「はじめて原稿を読む読者」になりきって読むには、これぐらいすっきりして集中している必要があります。全工程の中で、いちばん厳密にコンディションを管理します。

◇最終稿が目指すゴール

最終稿が目指すゴールは、2つです。

  1. はじめて原稿を読む読者として、違和感なく読める

  2. 自分が編集者なら、直すところがない文章に仕上げる

◇最終稿ポイント1:1日で作業を終わらせる

最終稿でいちばん大事なのは「1日で作業を終わらせる」ことです。

理由は、「再稿ポイント1:完成した日本語は目指さない」に書いたとおりです。

多くの読者は、基本的に、数分かけて一気に文章を読みます。なので、「一気に読んだ時に違和感がない」ものである必要があります。

ですが、再稿フェーズでは、数時間~数日かけて文章を修正しています。この「数日かけて書く」が落とし穴です。「ベストな日本語」はその日その日によって少しずつ違います。なので、書いた日ごとのベスト日本語を集積すると、微妙にトーンが少しずつ異なる「ベストの集合体」になってしまい、全体のトーンが合わなくなります

・序盤:1日目のベストな日本語=A
・中盤:2日目のベストな日本語=A'
・終盤:3日目のベストな日本語=A''

結果、後から読み返すと「なんか日本語の流れがおかしい」と感じて、せっかく磨き上げた文章をまた崩すことになります。

「想定読者」になりきって読者のように読むには、「最初から最後まで違和感なくするする読める日本語」にする必要があります。そのため、日本語統一やトーンの統一をして「ベスト原稿」にするには、「その日の自分」だけで完結させます。

当然、別の日に読めば「ベスト原稿」は違うのですが、ずっと編集し続けていると永遠に納品できません。なので、「現時点でのベスト原稿」を書いたら、とっとと世(担当編集者/インターネット)に放ってしまいます。後で読んで苦悶するのも一興です。

さて、これで原稿ができました!

◇最終稿が終わったら

最終稿は、「自分の中のゴール」です。

ブログなら最終稿で終わりですが、寄稿や共同執筆の場合は、相手に送って確認をしてもらうフェーズに移ります。

編集者/校正者から質問、追記、表記統一の要望があった場合、対応します。今回の「新刊めったくたガイド」原稿の場合、追加編集はなかったので、最終稿=掲載原稿です。

◆原稿BeforeAfter

それではあらためて、原稿のBefore Afterを見てみましょう。

◇Before(初稿)

C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房二八〇〇円)。舞台、ゴールドラッシュ後、荒廃したアメリカ西部。中国系移民2世の子供2人の家族の物語。親世代と子供世代、2つの世代の物語。最初から腐乱パパが強烈。腐乱パパでぐっとつかまれ、どうなる腐乱パパと気になる、ぐいぐい読んだ。勢いがある。限界旅。親たちと一緒の極貧暮らし、においがやばい。移民小説の貧乏描写の迫真、『サワーホーム』もやばかった。「ホーム=家」「土地」という意味の多重性。土地を求める理由。黄金、富、安住の土地、ここは自分の故郷だといえる場所。父はアメリカの土地に富を求め、母は中国の土地に故郷を求める。子供たちが求めたもの、自分たちを受け入れてくれる土地。中国とのつながりはない。すでに故郷がなく、故郷喪失者としての2世の痛みがつらい。あのラストはどう解釈。風景描写が美しい。荒廃した丘、黄金色の土地の美しさが光る。かつて黄金が埋まっていて収奪されたけれど、なお黄金に輝く土地。コーマック・マッカーシーぽい。ホームを夢見ながらも叶わない一家の苦悩と、バッファローのもので収奪された歴史を持ち、西部の土地が掘り尽くされて所有されてきた歴史が重なる。家族小説。移民小説。移民2世の苦悩。アメリカ移民小説の定番を踏襲しつつ、新しい地平。古くからある西部小説の21世紀に書き直した小説。

◇After(掲載原稿)

ヘビー級の家族小説が豊作だった。まずは、黄金採掘の夢を見た中国系移民一家を描く、C・パム・ザン『その丘が黄金ならば』(藤井光訳/早川書房)。舞台は、ゴールドラッシュ後のアメリカ西部。中国系移民2世の子供たち2人が、死んだ父を埋葬する場所を求め、黄金を採られ尽くした丘陵を放浪するところから物語は始まる。旅の情景とともに、黄金を夢見て土地を転々とし続けた一家の歴史がひもとかれていく。まず、この父埋葬パートが強烈だ。父の死体は処置もなしにトランクに詰められているので容赦なく腐っていくのだが、腐乱父への子供たちの対応がいちいち凄まじい。回想される一家の極貧生活も過酷で、安住の土地=家(ホーム)を望む一家の切望が迫ってくる。土地は、黄金を供給する富の源泉であり、安定した生活の土台であり、アイデンティティの拠り所である。さまざまな意味で土地を求める一家の歴史と、収奪と所有にさらされてきた西部の歴史が重なる展開が見事。他にも黄金に輝く西部の風景描写、荒野系シスターフッドなど、見どころが多い。ドライな荒々しさと割り切れない感情が融合した、鮮烈なウェスタン小説。
……(次の小説紹介へ続く)

内容は初稿とそれほど変わっていませんが、順番、文章、表現がだいぶ違います。

◆各原稿フェーズの差異

ついでに、初稿と各原稿フェーズの一致度も見てみましょう。

下記の画像は、Diff(差異)を視覚化したものです。白い部分が掲載原稿との一致個所、青い部分が違う個所です。

◇掲載稿 vs.初稿

合致率は15%ほどで、ほぼ別ものです。真っ青(違う個所)ですね。内容も、表記も、むしろ一致しているものがほぼないから、当然です。

◇掲載稿 vs.再稿

合致率は30%ほどです。内容と順番は固まっているけれど、表記へのテコ入れがまだなので、このような結果になります。

◇掲載稿 vs.プレ最終稿

表記へのテコ入れを行ったプレ最終稿になると、合致率は一気に85%ぐらいになります。最後のほうが青い(違う個所)なのは、集中力が後ろのほうで落ちてきたからかと思われます(原稿あるある)。

今回の場合、最終稿=掲載稿なので、比較は以上です。

◆まとめ/感想

以上、私の原稿執筆スタイルを紹介しました。

今回はじめて自分の執筆スタイルと向き合って言語化しました。思った以上にいろいろやっているんだな、と自覚できました。あと、思ったより、だいぶ長くなりました。原稿へのクソデカ感情が可視化された気分です。

思えば、原稿というタスクには、これだけ大量のサブタスクがあるわけです。

  • 想定読者を決める

  • 書き始める

  • 頭の中にある情報やアイデアを出す

  • 内容と流れを固める

  • 想定読者に合わせた情報を書く

  • 最後まで書き終える

  • 文字数を目標値に合わせる

  • 語りのトーン(音の調子)を統一する

  • 表記統一をする

  • 他人=読者の目線で読み、違和感がない文章にする

  • 自分が編集者なら、直すところがない文章に仕上げる

これほどの大作業を、1回の初稿で終わらせようとするほうが、どうかしています。心理ハードルが高くなるのは当然、書き終えられないのも当然です。

ですが、書き終わらない原稿は、誰にも読まれません。それは自分と世界にとって不幸なことです。

意識を低く保ち、タスクをフェーズごとに分解して、少しずつ終わらせていくスタイルが、自分には合っていました。

それなりに癖があると思うので、万人向けではないかもしれませんが、「意識をなるべく低く保って、とりあえず終わらせるんだ」と言いたくて、本稿を書きました。

家族の執筆、そしてすべての人の原稿執筆がつつがなく終わることを願っています。

◆Linkまとめ

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15年書いているライター/編集者が、ない時間をひねり出し、意識を低く保ちながら原稿を執筆する方法を書きます。子育て中なので、さらに意識は低…

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