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「MEDLEY」近江マイコ作品集

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近江マイコの掌編・短編小説、散文詩をまとめたものです。
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#散文詩

「美意識過剰」

 諦めるな! その一言で、音を上げる人の口を封じられますか?  振り返るな! その一言で…

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「ギターと約束と」

 明かりをすべて消した薄暗い部屋の隅で、ヤマハの黒いアコースティックギターがほこりを被っ…

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「ドレスは燃えている」

「僕は緋色が一等好きなんだ」  そんな謎めいた、不思議な短い言葉をあなたは発した。  まど…

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「青い瞳」

 ほんの数分ほどの通り雨が去ったあと、色濃く濡れたアスファルトは翼を広げたカラスの模様を…

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「水曜日」

 ふと、あなたの顔が浮かんできました。あなたに会える(といっても、名も知らぬ他人同士です…

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「赤い動機」

 夕方、いつも世話をしている、狭い庭に咲く、大切に育てた薔薇たちの中で一輪が欠けているこ…

「あまいくつ」

 ピンヒール、ロングブーツ、サンダル、スニーカー、ミュール、果てはロッキンホース等々。靴に種類はいろいろあるけれども、その中でもわたしはバレエシューズが一等好き。  お店の棚にずらりと並べられている、色とりどりの、丸いつま先のぺたんこのあの靴たちを見ると、うっとりする。ちょこんと小さいリボンが付いているとなおいいかな。光るM&M'sチョコレート、若しくは、虹色のゼリービーンズみたいで、ひとつひとつ手のひらに乗せて輝きを楽しむと、舌にその味が伝わってくるよう。  あゝ。その瞬間

「シェリー」

 歌が聞こえる。 ――甘い 甘い ハチミツ とろけるような ハチミツ 夕焼けを映して わ…

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「わたしは黒い夢を見る」

 わたしは毎晩、形のない睡眠と格闘している。  というのも、毎日仕事に疲れ果ててすとんと…

「遊戯」

 雨の数だけ恋したうさぎ。緑の草原を走り、大地に十色の虹を架ける。駆け抜けた先で疲れた体…

「ゾンビ」

 ゾンビが未だ蔓延るこの世界。多くの知の巨人たちが、闘えど、闘えど、姿を消さない。それが…

「大宇宙創造聖黄金神」

 大宇宙創造聖黄金神が耳元で今日も囁く。生きろ、と。大宇宙創造聖黄金神の姿は見えぬが、い…

「煙」

 その男は煙になった。毎日、一箱、煙草を呑んでいたら、細胞の奥の奥にまで煙を入れてしまい…

「土」

 幼子は川を渡った。橋の無い川を。だから、舟で渡った。三途の川でないので、六文銭は要らなかった。身に着けるもののほか、持っていたのは、一握りの土だった。少しも落とさぬよう、その小さく柔らかい手で、大事に大事に握っていた。船頭は口をきかず、幼子も黙っていた。穏やかな流れの川を、船は五分ほどで渡り切った。幼子は、しっかりと組まれた渡し場に降り立ち、今来た景色を見た。だが、いつの間にか霧がかかっていて、よくわからなかった。幼子は、そのことに酷く腹を立てた。すると、大切に運んできたは