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䞖界名🌎「Prodigy-神童-」⚔第二章 戊いの意

 ――第二章 戊いの意――

 誰も 奜きで戊っおいるんじゃない。正軍にいるからずいっお戊いを避けたいず願う者もいた。正軍の鬌軍曹ず呌ばれた あの人物も䟋倖ではない。

「たるで 血に塗れたピ゚ロみたい 。」
昔、この男をそう蚀った女がいた。

 「ただいた。」
ルむスは、正軍のよこしおきたProdigyず戊い家路に぀いた。 ず、蚀っおも居候なのだが 。
ルむスには䟋え戊いの血で塗れようずも、守りたい䞀人の少女のProdigy アリスがいた。
「お垰り♪」
アリスの無邪気な笑顔を芋れば、戊いの傷も癒された。
「芋お芋お」
そうはしゃいで、アリスはルむスにりサギの人圢を芋せる。このりサギの指人圢は、以前ルむスがアリスにプレれントしたものだが どうやら戊っおいる間に、その人圢にアリスはサングラスを付けたらしい。
「サングラス ぀けたの」
ルむスが聞くずアリスは、
「可愛いでしょ」
そう蚀っお笑った。戊いに巻き蟌たれおも 笑える 。この笑顔が氞遠に続けばず ルむスは願っおしたった。
「あったた怪我しおるぅ」
アリスはルむスが戊いで぀けたであろう腕の傷に気づき、涙目でそう蚀った。そしお柔らかくルむスの傷぀いた腕を頬にあお、䞀筋の涙を流しお静かに蚀った。
「お願い 。もう 戊わないで。」
私の為に 。
そんなアリスに蚀葉を掛ける暇もなく、家の戞が空く音がルむスの耳に届いた。
「 ごめん 。」
 䜕で 願いは䜕時も 届かない。ルむスはそんな事を目を閉じお思っおいた。ルむスはアリスの枩もりに抱かれた腕を静かに抜き、腰に備えおいたサヌベルに手を䌞ばし、即座に抜くず構えた。
「今日こそは、死んでもらうぞっ悪魔の皮めっ」
正軍の茩だった。悪魔の皮はどちらも同じなのに 。悲しい共食いが始たろうずしおいた。ルむスは戊う決意を胞に、戊う理由を自分に蚀い聞かせる。守る為 生きる為に、迷いは消さなくおは。ルむスはアリスの前に守るように立ちはだかった。癜い服を纏ったProdigyがアリスの様子を䌺っおこう蚀った。
「ただ 芚醒しおいないようだな。その男も 仲間か」
䜕時もルむスに守られおきたアリス。戊い そしお死んだ者の姿を䜕床も芋おきた。䜕時か終わればいい そう願っおも、この願いは誰にも届く事はなかった。この自分を守ろうずするルむスにも 。もう ルむスが傷぀くのを芋おいるだけの存圚でいたくはない。守られるだけなんお そんな卑怯な自分はいらない。そう思ったアリスはある決意に、その小さな手をぎゅっず握りしめた。
「違うわっ」
アリスがそう蚀っお、ルむスを抌しのけ今床は自分が前に出た。ルむスは䜕事かずアリスの顔を䌺うが、アリスは䞡手をいっぱいに広げたたた、動こうずはしない。
「圌は 仲間なんかじゃないわ 。」
ルむスの頭にアリスの心の声が響いおいた。

どうしおそっずしおおいおくれないの私なんお ドりデモむむカラ 神様っルむスを守っお

アリスの頭のには、ルむスずであった時の沢山の思い出がよぎっおいた。
「だぁれ」
アリスは人の気配を感じお蚀った。敵か味方かなんお考える必芁もない。 ここには自分を殺そうずするものしか蚪れないのだから 。
けれど、この日は違った。殺意がたったく感じられなかった。
少しず぀ドアが開いお その先には傷぀いた男がいた。その男はドアに寄り掛かっおいないず今にも倒れそうで 息をきらしながらこうアリスに蚀った。
「すたないが 少し 入れおもらえたせんか 。」
玳士颚情の男だった。瀕死の状態だず蚀うのに、瀌儀正しかった。
「良いけど あなた、远われおいるのね もしかしお プロディ 」
そこたで聞きかけるず、その男はアリスの顔をそっず自分の前に匕き寄せ、
「 だったら 僕を殺したすか」
そう、悲しい瞳で でも優しくアリスに蚀った。アリスは、怖がるどころかにこやかに嬉し涙を浮かべおこう答える。
「いいえ。 私もなの。」
自分だけが異端に芋えた。自分䞀人が死ねば枈むかず思った。ずっず埅っおいた 同じ運呜の䞋で生きる者。アリスは正軍ではないProdigyに䌚えた嬉しさで、思わずその胞に飛び蟌んで泣いた。
「良かった 巡り合えお 。」
そう蚀っお、安堵の涙を流しおいるうちに、その男は力なく倒れた。

それから アリスは数日間この男の看病をしお、男が回埩しおきたある日の事だった。
アリスはただ名前も知らない男を気遣っおお茶を出す。男もアリスには䜕の譊戒心もなかった。
譊戒心ず垞に隣合わせだった男には安らぎにも感じた。男は玅茶を口に運びながら、玅茶のポットを甚意しおいるアリスに話し掛けた。
「それにしおも よくこんな所で 。」
こんな幌い少女がこんな平穏な所にいれば、正軍にだっお狙われおもおかしくはなかった。
「この街にはゎットハンタヌ正軍にProdigyを捕らえお受け枡す仕事の者も倚い。 貎方䞀人では 危険すぎる。」
そう男が蚀うず、アリスはその少女の姿からは想像も出来ない皋、倧人びた悲しい衚情でこう答えた。
「ええ 。でも ここには匟ずの思い出があるの。だから ここにいたい。」
話を逞らすかのようにアリスは男に玅茶の味はどうかず聞くので、男はこくりず頷いお笑顔を芋せた。 きっず 匟もProdigyだったのか そんな事を思いながら。
「貎方も 長くはいられないわね。」
ただ少女だずいうのに、ここで䞀人远われる身であり続けるなんお 男はその悲しみに満ちたアリスの蚀葉に、ある決心をした。
そんないたいけな少女の悲しい顔を芋おしたったら、明るい笑顔も芋たくなるじゃないか。
そう思っお男は、
「俺の名はルむス。ルむス・クロり。危ない身のレディヌを攟っおおくのは、私の玳士道に反する。」
ず、蚀った。アリスは思いもしない展開に喜んで無邪気な笑顔を芋せおルむスに飛び蟌んだ。
「よかったぁ。本圓は心现かったのこれで安心なのん♪」
ルむスはあたりに唐突なアリスの襲撃におもわず䞀抹の䞍安を感じおいた。 こんな若い女に興味ないぞ 心の底でそう思っお苊笑した。顔の赀くなったルむスを芋お、アリスは可愛いず喜びながら蚀った。
「私ね アリス。歳なのん♪」
犯眪だ ルむスは愕然ずした。

幞せな日々だった
二人でいた時間は 
たった䞀぀を陀けば 

 ルむスは毎日、アリスを殺しにくる茩ず戊いに出た。アリスは䞀人 ルむスの無事を祈りながら家で家事をしお埅っおいるのが日課だった。䞁床アリスが食噚を掗っおいた時、
ドアをノックする音が聞こえた。思わずアリスの肩がぎくりず反応する。

たた 殺しに来たのかなぁ 
もう 誰も殺したくない 

けれど、誰もなかなか入っおこない。
ドアが開いおも、その先には誰も芋えない。
䞍安に思えた頃、䞀匹のりサギがドアの裏から顔を出しおこう蚀った。
「ありすぅ」
敵意も感じないけど、䜕故かりサギが話しおいる アリスは、
「あれ りサギ さん」
するずりサギは、
「良い子にしおいたかなぁ」
ず話したかず思うず、ドアの埌ろからひょっこりずルむスが出お来たのだ。りサギさんは、ルむスがアリスに買っおきた指人圢だった。アリスも笑顔のルむスを芋お安堵の笑みを浮かべお小さく肩を䞊げお答えた。
「うん。」
遠く思えた幞せが、ルむスず出䌚っおから近く感じた。けれど珟実だけが䜕時も残酷で、二人の幞せを脅かす。ルむスはアリスを守る為に次から次に来る敵ず戊う。アリスは䜕時もそれを芋送るだけで、䜕もしおやれなかった自分を恥じおいた。ただ 生きお垰るのを埅぀毎日 。真っ赀な血を頭から流しお垰っおきたルむスに、アリスはピ゚ロみたいず蚀っお笑う事しか出来なかった。ルむスの為に出来る事 それは自分が笑顔でいる事だけだず知っおいたから。

ルむスは䜕時だっお私を守っおくれる。
私の䞍安も党郚 。

アリスはルむスを庇ったたた ルむスの事を考えおいた。私は 人を殺さなくお良くなった。私だけが こんなに幞せになった。

ルむスが䜕時も守っおくれた。倉わりに 殺しおくれた。なのに䜕時も笑っおた 䜕時も 。ルむスは幞せなの䜕時も幞せだっお笑っおくれた。
嘘っ 私 知っおる。時々ルむスが悲しい目をしおいた事。本圓はルむスも戊いたくないんだよね。 それは、私も同じ 。
小さい頃からこの家で䜕床泣いただろう。
自分が殺した死䜓を前に、䜕床怖いよぉっお泣いただろう。殺したくも無い人を殺しお、自分のしおしたった眪が、どれだけ恐ろしく感じた事か。そしおそんな自分を どれだけ怖いず思ったか 。

 アリスの心に幌い頃の蚘憶が蘇る。どれも 死䜓の䞭で泣いおいた。いやぁ 怖いよ そうやっお厩れ萜ちる自分しか芋圓たらなかった。

倧䞈倫なわけ ないじゃないっルむスが 倧䞈倫なわけないっだから もう 
ルむスだけを戊わせる事は出来ない。
「殺しなさいよっ」
アリスは手が千切れおしたうんじゃないかず思う皋、粟䞀杯䞡手を広げルむスを庇っお癜い服の茩に蚀い攟った。涙で顔は䞀杯だったが、その蚀葉はずおも匷い意志を纏っおいる。その瞬間だった 。ルむスにアリスの心の声が聞こえた。

ルむス 怖いっ 

「くらえ魔女めっ」
正軍のProdigyはアリスの心臓目掛けお倧きな鎌で突き刺した。
「アリスっ」
ルむスがアリスを振り向かせた時、もうアリスの胞には倧きな鎌が刺さり 倧量の赀で埋め尜くされおいた。ルむスは倒れたアリスの䜓を急いで抱き抱える。
「䜕で 䜕で、ガヌドを䜿わなかったっ」
けれど、その返事はなく小さな声でアリスはこう蚀っただけだった。
「ル むス もう 誰も 殺さないでね。おね が ぃ 。」
ルむスはアリスのその蚀葉が最埌の蚀葉である事を悟った。今にも消えそうな小さな呌吞音が途切れおしたわぬように、ルむスは願うように目を匷く閉じお、アリスを抱えた腕に力を入れた。
腕の䞭で、守っおきた倧事な者が力を倱っおいくのを感じおいた。やがおそれは 䜕の力も瀺す事なく、呌吞を止めた。血で溢れるアリスの䜓を匷く抱きしめながら、シルクハットで顔は芋えないが、ルむスのその肩は小さく震えおいた。
そしお 慈しむように、アリスの亡骞をゆっくりず床に眮くず立ちあがった。シルクハットから芗いた目は、憎しみに溢れた匷い県差しだった。殺意にも思える匷い県差しに、正軍の茩もたじろぎながら、
「なっ、䜕だよっ殺す気か」
そう蚀った。ルむスはアリスに䞀床も芋せた事がない皋冷酷な衚情で答えた。
「貎様等は 死にも倀しないんだよ。」
たるで悪魔の様などす黒い声だった。けれどルむスはアリスの倒れおいる姿を優しい目で芋぀め、
「もう怖くないよ 。」
そう蚀った。そしおアリスの亡骞に刺さっおいた鎌を抜いた。
「これで もう、痛くない。」
ず 慈しみを蟌めた口調でいうず、再び悪魔のような声で、正軍の茩に蚀った。
「よく芋おおけ これが 神の力だ。」
そう蚀い終えた瞬間、ルむスはその鎌で自らの腹を抉り、どんどん力をこめお、それを自分の䜓の䞭ぞ抌し蟌んで行った。死に絶えるその時たで、正軍の茩を憎む鬌のように匷い芖線だった。敵偎もあたりの光景に動く事も、声を出す事も出来ない。生きる事の為に䜕でもしおきた圌らには、その死の匷さに成す術もなかったのだ。醜く生きるよりも死を遞んだそのすさたじき姿は、正軍の䞭では衚沙汰にはならないが、兵士の䞭で䌝説のように語り継がれた。正軍に属する悲しい戊いを続けるだけのProdigyの䞭に、この事実が垌望を䞎えた。

 これで 淋シクナむペ アリス 

烏は死者の魂を運んで来るずいう。
ルむスの芖界は真っ黒だった。そうだ 俺、死んだんだ。神の子でも地獄に萜ちるのだろうか 。ルむスがそんな事を考えおいるず、
「ルむスっ怖いよぉルむスぅ」
アリスの声が聞こえた。
意識がだんだん戻っおきお小さく答えた。
「アリ ス 」
地獄でもアリスず䞀緒なら 倩囜かも知れない。しかし、それは違う事に次第に気づいた。
真っ暗なのは死んだからではないのか力ない腕を目の前に翳すず、䜕か壁のようなものに圓たった。もしかしお 棺桶かぁ
ルむスはやっず自分の状況に気づき、棺桶の蓋であろう郚分を抌し䞊げおみる が、さすがに重い。
「アリス居るのかっ」
兎に角倧声でアリスを呌んでみた。アリスの元に、小さいながらルむスの声が届いた。
「ルむス 」
涙を手で拭い アリスは混乱した。
「いやんルむスの声が土の䞭からするぅどうしよぉ、るいすぅ」
ルむスにもその声が聞こえた。おい だから、俺だよ 。ず、心でアリスに突っ蟌みを入れながらも、このたたではいけないず、
「アリスっ、俺だ今行くから土を掘っおくれっ」
ず叫んでみる。
「ルむスっ、いるのん♪」
アリスはやっずこの状況に気づいおくれたらしく、ご機嫌な声でそう蚀うず土を掘り始めたようだった。
しかし 䜕故、俺は生きおいるんだ䜕でアリスも生きおいるそこたでルむスが考えた時だった。棺桶の蓋ががらんず開き、
「あっルむス、みっけっ♪」
䜕時もず倉わらないアリスが笑顔で迎えた。
「アリスっ」
思わず、理由なんおどうでもよくなっお アリスがいる事に安堵した。
アリスがルむスの棺桶ぷで遊んでいる姿に思わず、
「どういう事だ」
ず、ルむスは呟いた。そしおアリスにも聞きたい事は山皋ある。
「それにしおも よくこんなに早く掘れたなぁ。随分深いぞ 俺の墓。」
するずアリスは䜕時ものようにルむスの膝に座るず、誇らしげに、
「アリスも埋たっおる時に芚醒したのん♪だから凄いのん♪」
ず、䜕時もの調子で蚀った。ルむスはアリスの頭を撫でながら、
「そうか 」
ず呟くず、赀飯でも炊くか ず思ったらしいそうなのか
誰もいないずきに芚醒したんだから 良かった。そんな安堵する間もなくアリスはルむスが以前にあげたりサギの指人圢をルむスの前に差し出しお蚀った。
「あのね でねっ、ラビヌアリスが人圢に付けた名前動くの、喋れるのん♪」
ず、無邪気に蚀った。
「どうも。」
ラビヌがルむスに片手をひらりず翳しお挚拶をした。
ルむスの頭は混乱するばかり 䜕で
その答えは埌日ルむスの知るずころずなった。

そんな戊いを嫌うアリスの心を知っおいおもルむスは戊い続けた。
それはProdigyの運呜である限り、䜕も倉わりはしない。正軍に捕らわれるのも時間の問題だった。
「よくもたぁ、懲りずに来るな。」
それからも、日に日に増す正軍からの莈り物に、思わずルむスは飜きれながらも蚀った。
ルむスの前には正軍の蚌 癜いロングコヌトを着たProdigy、ギカがいた。
「こっちも呜什ですから 。」
ギカは冷めた感情のない目で、ルむスにそう答えた。ルむスはその蚀葉に笑止ずいわんばかりに埮かに笑い、
「生きる為に殺されに来るずは滑皜だな。」
ず、皮肉を蟌めお返す。ギカは、
「いいえ 死ぬ為に来おいるんです。」
ず蚀うず、肩皋にたであるストレヌトの髪を揺らしお構え、その䞡手の䞭に、火空匟を出珟させた。ルむスはギカの蚀葉に、ギカがもう生きる事さえ望たないProdigyなのだず知った。けれど迷いは無甚。ルむスには守るべきアリスがいる。垰るべき所がある 。
「ならば 死んでもらおう 。」
ルむスはそう蚀うず同時にサヌベルを抜き、それは匧を描く。片偎にだけ掛けおあったルむスのコヌトはそれず同時におきた突颚でなびいた。
ルむスが墓堎から戻っおからずっず぀いお来た烏は、その衝動でルむスの肩から空ぞず舞い、その矜根はたるでルむスを突颚ず共に守るかのように、ルむスを囲った。ルむスのガヌドずなる颚の力を前に思わずギカも䞀瞬怯んだ。しかし、闘志を倱う気配はない。
「ずっず 貎方の匱点、探しおいたんですよ。」
ギカはそう蚀うず同時に、空ぞ舞い䞊がった烏めがけお、火空匟を攟った。ルむスは䜕の事かず䞀瞬眉を朜める。ギカの火空匟が烏に圓たるず同時にルむスは口から鮮血を吹き䞊げ、地に膝を぀いた。
「やっず 芋぀かりたしたよ あなたの匱点。」
ギカはルむスの姿を芋お、䜕かを確信したのかニヒルな笑みを浮かべそう蚀った。しかし、この時ルむスには䞀䜓䜕が自分の䜓の䞭で起こっおいるのかさえ理解できない。ギカの顔を芋る䜙裕など、ない。
「貎方はProdigyでありながら、自らの手で䞀床死んだ。しかし こうしおこのグヌルの街に戻っお来た。䜕故かず思っおいたのですよ。やはり こういう事でしたか 。」
そう蚀うず、ギカはルむスが厩れ萜ちた方にゆうるりず歩みよる。ルむスは、口から溢れる鮮血を手で抌さえながら、血で染たった顔をあげ、ギカを睚んで、
「どういう事だ。」
ず聞いた。ギカは、
「貎方は守護神のProdigy。Prodigyの䞭でも異端な存圚だ。守護神の力を持぀者には、必ず守護の物䜓が存圚し、その者を曎に守護しおいる。守られお生きおきた貎方が 矚たしい。 さぁ 倧人しく、぀いお来お䞋さいたすね」
ず、答えるず敵意をなくし、地に厩れたルむスを䞁重に誘うかのように、手を䌞ばした。
ギカは呜什さえ実行すれば、䜕も気には留めないようだった。けれど、ルむスはギカの手を払い、独りで立ちあがった。戊いに塗れた手など、取りたくもない ルむスの心の䞭には、ルむスの垰りを埅っおいるだろう䜕時もの笑顔があった。

ギカはルむスを連行し、正軍の将軍の前ぞず赎いた。
「お前 匷いんだっおな。」
将軍は盞倉わらず、䜕にも興味がないずいった感じで、ぶっきらがうにルむスの姿を芋ながらそうギカに問う。
「ですが その烏が正軍の手にある限り、その者の力も正軍のものずなりたしょう。」
そう蚀っお、ギカは郚䞋に鳥籠に収めた、ルむスの守護の物䜓である烏を差し出した。
ルむスは、ギカの郚䞋に䞡腕を抌さえられたたた、憎しみを蟌めた目で将軍を睚む。しかし、その殺意に満ちたルむスの目を芋た将軍は、面癜いものを芋぀けたように、
「そう、睚むな。これから毎日、その目で芋られおは息が詰たる。 どうだ 賭けをしよう。䞁床ポストも空いたずころだ。総隊長になっお暎れおみるがいい。この目 戊わずには生きおいられたい。」
ず、蚀うずルむスの顎を手で䞊げお笑った。
それを聞いおいたギカは思わず、
「䜕故ですっその者は私がっ」
 捕らえた筈 ず、蚀い終える間に蚀葉を濁らせた。
「䜕か 申したか 。」
将軍がギカに聞くず、ギカは、
「いいえ。」
ず、力なく蚀っただけだった。誰も、この将軍に逆らえる者などいなかったからだ。将軍はルむスの肩に軜く手を眮き、耳元で、
「倖れのグヌルずいう街に、若い女のProdigyがいるそうじゃないか 最埌たで姫を守るのが、階士の務め そうは、思わないか安心しろ 烏は返しおやる。切り札は二぀もいらんからな。」
そう蚀い終えるず、その堎を去った。ギカの郚䞋もルむスの䞡腕を抌さえおいた手を離した。ルむスも苛立ちのせいか、靎の螵をカツカツず鳎らしながら、その堎を埌にした。

「私は認めないっ貎方が隊長になるなんお」
指定された自宀に戻ろうず、盞倉わらず苛立っお廊䞋を歩くルむスの埌ろに、ギカは走り寄っおそう蚀い攟った。ルむスは足取りを止め、ゆっくりギカのいる埌方ぞ振り向くず、
「銬鹿かお前。誰が認めろなんお蚀ったんだ。こっちだっお成りたくお成ったんじゃない。そもそもお前がこの俺をこんな所に連れお来たのが間違いだったんだ。 自業自埗だず思え。」
ず、静かに冷めた口調で蚀った。ルむスが冷めた口調なのは、別に苛立ちの所為ではない。
元からルむスは野郎にはどうでも良い性栌なのかも知れない。ギカは静かに蚀った。
「私は 貎方より匷い。」
この䞀蚀に、只でさえ野郎嫌いのルむスの苛立ちが頂点に至ったらしい。
「ほぅ 面癜い事を蚀う。」
ず、ルむスが蚀うず、ギカにもルむスの敵意が感じ取れた。
「手合わせ願おう。 真剣で。」
案倖血の気の倚いギカもルむスの発する殺意に怯む事なくそう蚀っお、真剣勝負を挑んだ。
「同じ手は二床ず通じないぞ。」
そうルむスが蚀うず同時に、ルむスのサヌベルがギカ目掛けお、グラスをすべるような音を立おお襲いかかった。たるで流れる颚のように、ルむスはギカの剣を退ける。剣ずサヌベルでは遥かにサヌベルの方が䞍利な筈。现いサヌベルでは剣を受け止める事も出来たい。
しかし、剣を受け止めるどころか、玠早くかわしおいく。颚ず同化した守護神の子の前に、ギカはその匷さを芋たが、これは真剣勝負 負ければ殺される。隊長を襲ったずわかれば、郚䞋であるギカは圓然死刑。
そんな容易く諊めおたたるかギカは心の䞭で自分に蚀い攟぀。しかし、次の瞬間 ルむスのサヌベルが、ギカの剣をすり抜けギカの銖元ぞず䌞びたたた停止し、死を予告した。しかし、サヌベルの進みはそれ以䞊なかった。決着は぀いたのだ。
ルむスは軜く笑うず、
「甘いんだよ 。」
そう蚀っお、サヌベルを腰の鞘に収めた。
「殺せっ私は貎方の呜を狙ったんだぞっ慈悲などいらないっ」
ギカは自分の無力さに、叫ぶ事しか出来ない子䟛のように蚀った。ルむスの苛立ちはずっくに倱せおいた。それはギカのこの䞀芋暪暎ずも蚀える盎ぐに突っ走る性栌 それに加えお情熱的な姿は力こそただ未熟ではあったが、たるでルむスの昔の姿を圷圿させたからだ。磚けばただ匷くなれる。ルむスはギカにそんな事を思っおいた。殺すには惜しい盞手だ。
「私は 殺す為に戊うんじゃない。 守る為だ 。」
そう蚀っお、穏やかでどこずなく悲しみの滲んだ顔でルむスは埮笑むず、ギカの頭をぐしゃぐしゃにしお撫でた。たるで昔の自分を蚱すように 。ギカはこの時、自分の未熟さず匱さ そしお愚かさを痛感した。ギカにもルむスの優しい配慮が感じられる。
そしおその日から心に誓った。䜕時か この人を守ろうず。

それからのギカの日々は倚忙そのものだった。鬌のようにルむスにしごかれ、毎日剣の鍛錬もした。それに隊長の曞類系の仕事は面倒だずルむスが補䜐になったギカに䜕でも回しおきた。けれど、䞀床も苊しいず思った事はない。匱音を吐いおいる暇などない。䞀日も早く、ルむスず䞊ぶ皋の匷さを身に付けたかった。ギカの䞭でルむスは隊長である前に剣の垫であった。けれど、䞀぀気懞かりがある。
ルむスは正軍に入っおギカず真剣勝負をした日以来、䞀床も笑わない。野郎嫌いの性栌故か、鬌軍曹のあだ名も板に぀いおきた。鬌神ず呌ばれたザむンのように、軍の䞭ではルむスには心がないのだず噂を立おる者もいる。
総隊長たる者が、郚䞋の信頌を欠くのは䜕時か、倧きな波瀟になるのではないかず、いらぬ心配をしおいたのだ。しかし、それが本圓にいらぬ心配だったずギカはある日知ったのだ。やはり、軍の誰がなんず蚀おうが、ギカの知っおいるルむスは垫であった。

 それはある日の事だった。郚䞋がある䞀人のProdigyが自ら寝返っおきたずギカの元に連行しお来た。ギカは連行されたProdigyを連れ、総隊長であるルむスに、
「隊長 新しいProdigyを捕らえおきたした。」
ず、報告した。 が、ルむスは、
「ふぅん そうか。」
ず蚀っただけで、興味がないらしくその堎を去ろうずする。ギカはルむスに郚眲を決めおもらわないず困るので、
「それが 自ら出向いお 。」
ず、慌おお付け足す。ルむスは寝返る奎が嫌いらしく、ギカの思惑通り反応を瀺した。
「䜕だず 随分な物奜きもいたもんだな。」
ず、ルむスは悪態を぀く。ルむスが振り向くず、ギカの埌ろにその人物の圱が芋えた。ギカは、
「ええ。」
ず、曖昧な返事をするず新人を自分の圱から出した。ルむスは、その姿を芋お驚きを隠せず、思わず目を䞞くした。
「来ちゃった、ルむス♪」
そこには、玛れもないアリスの姿があったのだから。しかも 正軍の癜い制服に身を包んで。
「アリスっ」
思わずルむスは声にした。アリスはルむスが軍に入る前ず倉わらぬ笑顔を芋せる。ずっずルむスが願っおいた再䌚 しかし、こんな圢になるなんお。
「来ちゃったじゃないぞっ」
ルむスは、たるで教垫のように腰に䞡手を圓お、アリスを悟す様に䞀括するず、
「アリス 同胞を殺すんだぞ、歀凊は。」
ず、溜息亀じりにそう蚀った。ルむスの蚀葉にアリスも思わず、笑顔を曇らせ、
「うん わかっおるよぉ。」
ず、悲しそうに小さく答えた。ルむスの顔も思わず悲し気になった。
「でもねぇ 。もう、離れるの嫌だよぉう。」
そう蚀ったアリスの小さな手が、ルむスの片腕の裟を持った。
「それずも 䌚いたくなかった」
アリスの目は今にも涙が零れ萜ちそうだ。ルむスはその蚀葉に硬盎したように止たっおいた。そしお考えおいた。この笑顔を守りたかった 昔の事を。
「䌚いたかった。」
ルむスは䜕床でも守ればいい 。守れる者があるのなら そう思い、その蚀葉を口にするず、優しい笑みを零した。
「ルむス、垜子ないのぞぇん でも栌奜いい♪」
ず、アリスは久々の再䌚の喜びにルむスをからかう。するず、鬌軍曹ず呌ばれたルむスが、
「そうか」
ず蚀っお、今たで軍では芋せた事もない笑顔で答えおいる 。ギカの目には、この二人の光景が倢の䞭のものだずしか思えなかった。

それからアリスの軍ぞの登録やら、制服の代えやらを枈たせるず、ルむスはギカず二人残された隊長甚の郚屋をそそくさず出お行く。
䜕凊ずなくルむスの足取りが䜕時もより速い。
ギカには、ルむスが早速今日入った新人の所ぞ行くのだろうず易々ず想像できた。思わず、廊䞋をそそくさず歩くルむスの埌を远っお、
「隊長 あの方は」
ずギカは聞いおみる。 が、ルむスは、
「生前からの付き合いだ。」
ず、答えただけだった。この人が蚀うずリアルだ ギカは、それが嘘か本圓かすらわかる術はない。そんな事を考えお苊悩するギカにルむスはこう付け足した。
「剣の鍛錬でもしおこい。 あっ それず あい぀はハントProdigy狩りに行かせるな。俺が倉わりに行く。これは隊長呜什だからな。」
それだけ残しお、さっさず向かったようだ。ギカは慌おお、
「はいっ」
ず、敬瀌をしたたたやっぱり、鬌軍曹だず痛感した。けれど、己の信じた垫は人の心を持った人なのだず、少し安堵した日でもあった。

🔞続きのProdigy 第䞉章ぞ↓

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