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さぶすクラシック日誌。2022年版...

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毎日、1タイトル、スポティファイでクラシックの新譜を聴いてみた。
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2022年11月の記事一覧

11月25日、爛熟のルネサンス、マニエリスムを生きた、ジャケス・デ・ヴェルトの、酸いも甘いも知った音楽の深みに聴き入る。

スイス、バーゼルを拠点とする古楽ヴォーカル・アンサンブル、ヴォーチェス・スアーヴェが歌う、北イタリアで活躍したフランドル楽派、ジャケス・デ・ヴェルトのマドリガーレとカンツォネッタ... "Versi d'Amore"。 ジャケス・デ・ヴェルト(1535-96)。 フランドル東部の小さな町、ヴェールトで生れ、その歌声を買われ、幼くしてイタリアに渡ると、縁あって、イタリアの名門、マントヴァ公、ゴンツァーガ家の分家、ノヴェッラーラ伯爵家に迎え入れられ(1557年にはゴンツァーガ家

11月24日、イギリス・ルネサンス、バードの舞曲に変奏曲、ピアノで弾いてみた!ケミストリー!

南アフリカ出身、ロンドンを拠点とするピアニスト、ダニエル・ベン・ピエナールが弾く、イギリス・ルネサンス、爛熟期を彩った作曲家、バードのパヴァンとガリアード、パッサメッツォとグラウンド... 教会音楽にマドリガーレ... 歌のイメージが強いルネサンス(リュートは欠かせないか... )だけれど、イギリス・ルネサンスにおいては、ハープシコードにヴァージナルといった鍵盤楽器、コンソート・ミュージックなど、器楽も充実していたことが興味深いなと... で、その中心にいた人物、多くの器楽

11月23日、16世紀、大きく揺れたイギリスの、ルネサンス・ポリフォニーにおけるブレないイギリス流の魅力...

トビー・ウォード率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、アンサンブル・プロ・ビクトリアが歌う、イギリス、テューダー朝を彩った音楽の数々... "Tudor Music Afterlives"。 宗教改革(1517)により大きく揺れた、16世紀、ヨーロッパ... イギリスもまたそうで、1534年、ローマ教会から離脱し国教会が成立する。が、カトリックからプロテスタントへ、単に切り替わったというわけではない一筋縄には行かないイギリスの状況があって... メアリー1世(在位

11月22日、1539年、分断を乗り越え、出版された、謎のモテット集の、乗り越えた美しさ、吸い込まれそう...

パトリック・エイリーズ率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、シグロ・デ・オロが歌う、ミラノで編纂され、ストラスブールで出版されたというモテット集... "The Mysterious Motet Book of 1539"。 カトリック圏、ミラノの大聖堂の楽長を務めたフランドル楽派、ヴェレコーレ(ca.1500-after1574)が編纂し、1539年、プロテスタント圏、神聖ローマ帝国、帝国都市、シュトラスブルク(現在のフランス、ストラスブール... )にて出版さ

11月21日、フランドル楽派、黄金期、イザーク、コンスタンツ大聖堂の祝祭を彩った壮麗なる教会音楽...

マーカス・ウッツ率いるドイツの合唱団、アンサンブル・カンテッシモが歌う、イザークの大作にして遺作、『コラリス・コンスタンティヌス』から、四季折々の教会音楽... フランドル楽派、黄金期の巨匠、イザーク(ca.1450-1517)が、コンスタンツ公会議(1414-18)で知られる、ドイツ南端の司教都市、コンスタンツの大聖堂から委嘱(1508)された、クリスマスや復活祭など、四季折々に捧げられる一年分のミサの集成、『コラリス・コンスタンティヌス(コンスタンツ大聖堂の合唱曲)』(

11月20日、知られざるフランドル楽派の末裔... 17世紀、アントウェルペンに響いた、ステーラントの教会音楽。

フランク・アグステリッベ率いる、ルクセンブルクのヴォーカル・アンサンブル、カントLXが、B'ROCK管の演奏で歌う、17世紀、アントウェルペンで活躍したフィリップス・ファン・ステーラントのレクイエム。 フィリップス・ファン・ステーラント(1611-70)。 ベルギー、フラマン語圏、アントウェルペン(当時は、スペイン領ネーデルラント... )の音楽家一家に生まれ、聖ヤーコプ教会(ルーベンスが埋葬されている... )のオルガニストを務めた人物とのこと... いや、初めて知りまし

11月19日、17世紀のヴァイオリン、侮れない!ウッチェリーニのソナタに魅了される!

イギリスから、バロック・ヴァイオリンの新たな逸材!コナー・グリスマニスが、自ら率いるバロック・アンサンブル、ノックスワードとともに、ウッチェリーニのヴァイオリン・ソナタを弾く... マルコ・ウッチェリーニ(ca.1603-80)。 イタリア中部、フォルリ近郊、フォルリンポポリの貴族の家に生まれたウッチェリーニ。アッシジの神学校で学び、聖職の道を歩む中(1635年、司祭になっている... )、音楽も学び、アッシジの大聖堂の楽長でヴァイオリニスト、ブオナメンテに師事したと考えら

11月18日、17世紀のオペラの集大成?盛期バロックを前にした魅力!パスクィーニの『イダルマ』。

アレッサンドロ・デ・マルキが芸術監督を務めるインスブルック古楽音楽祭、アリアンナ・ヴェンディテッリ(ソプラノ)のタイトルロールで、17世紀、ローマで活躍したパスクィーニのオペラ『イダルマ』。 ベルナルド・パスクィーニ(1637-1710)。 ピサとフィレンツェの中間にある小さな町、マッサ・エ・コッツィーレで生れ、隣町、ウッツァーノで音楽を学び始める。13歳の年、司祭だった叔父に連れられ、教皇領、フェッラーラに移り、才能を開花。16歳の年、かつてルッツァスキ、フレスコバルディ

11月17日、リュリ、死の前年のオペラ『アシスとガラテー』の集大成感と"もののあはれ"?に魅了される。

クリストフ・ルセ率いる、レ・タラン・リリクの演奏、ナミュール室内合唱団、アンブロワジーヌ・ブレ(メッゾ・ソプラノ)、シリル・オヴィティ(テノール)らの歌で、リュリのオペラ『アシスとガラテー』。 1685年、太陽王のお小姓に手を付けるというスキャンダルを起こし(ま、それは切っ掛けに過ぎず、積もりに積もったものが爆発したのだろうけど... )、フランス楽壇を我が物としてきた、おべっかクソ野郎、リュリ(1632-87)の命運もとうとう尽きる。リュリのオペラはヴェルサイユで上演され

11月16日、ロックの『プシュケ』、イギリス・オペラ、黎明期の、思い掛けない盛りだくさんに魅了された!

セバスティアン・ドゥセ率いる、アンサンブル・コレスポンダンス、ルシール・リシャルドー(メッゾ・ソプラノ)、マルク・モイヨン(テノール)ら、実力派歌手が揃っての、ロックのセミ・オペラ『プシュケ』。ドゥセによる完全オペラ化で聴く... 清教徒革命(1649)により破壊(キリスト教原理主義政権は、音楽そのものを否定... )されたイギリスの音楽界が、王政復古(1660)によって息を吹き返す!帰って来た王室は、亡命先(フランス、オランダ、ドイツ、各地を転々とした... )、大陸の最

11月15日、いや、久々に聴くと、興味深い... ダウランド、古くて、新しい、稀有な音楽... 秋、深まる中、沁みる。

スウェーデンのリュートの名手、ユーナス・ヌードベリの演奏で、ダウランドのリュート作品アンソロジー、さまざまなリュート練習曲集のナンバーによる、"LESSONS"。 しっとりとプレリュード(P 89)で始まって、軽やかなファンシー(P 73)、味のある蛙のガリアード(P 23a)と続き... エリザベス女王のガリアード(P 41)や、彼女は許してくれようか(P 42)、デンマーク王のガリアード(P 40)、そして、ダウランドと言えば、ラクリメ(P 15)!などなど、ダウランド

11月14日、遠い北欧の宮廷を彩った国際性... ペーザスンの多彩な教会音楽集、『魂の牧場』。

マンフレッド・コルデス率いる、ドイツの古楽アンサンブル、ブレーメン・ヴェーザー・ルネサンスの歌と演奏で、ルネサンス末から初期バロックに掛けてデンマークで活躍したペーザスンのモテットと賛美歌集『魂の牧場』。 モウンス・ペーザスン(ca.1583-ca.1623)。 デンマーク、黄金期の国王、クリスチャン4世(在位 : 1588-1648)が親政を開始(1696)し、宮廷音楽の拡充に乗り出した頃、コペンハーゲンの宮廷礼拝堂の聖歌隊に加わった10代半ばのペーザスン... オランダ

11月13日、マエストロ、ルイジの、ただならないアプローチが導く、息衝くニールセンに圧倒された!凄い...

ファビオ・ルイジ率いるDR交響楽団(デンマーク国立交響楽団)が、デンマークを代表する作曲家、ニールセンの交響曲のシリーズをスタート!その第一弾、4番、「不滅」と、5番。 Deutsche Grammophon/4863475 第一次大戦(1914-18)、デンマークは中立を宣言しながらも、大国、ドイツの圧力を受け、バルト海の封鎖に協力、結果、物流が寸断、厳しい状況に陥り... という最中、作曲された、ニールセンの4番の交響曲(1914-16)。国家存亡の危機を前に、滅ぼし得

11月12日、シベリウスの豊かなサウンドが洪水のように押し寄せてくる!ロウヴァリによる3番と5番、楽しんだ!

注目のフィンランドの次世代マエストロ、サントゥ・マティアス・ロウヴァリ率いる、イェーテボリ響による、シベリウスの交響曲のシリーズ、第3弾、3番と5番の交響曲。 ロウヴァリ+イェーテボリ響のシベリウスの交響曲のシリーズ、最新盤、待ってました!という第三弾は、第一弾(1番)の衝撃を再び味わうようなフレッシュさを放ち... 第二弾(2番)から1年の間(嗚呼、コロナ禍... )を置き、改めてシベリウスを、いや、音楽そのものを見つめ直すのか、ロウヴァリ+イェーテボリ響... ただシベ