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11月22日、1539年、分断を乗り越え、出版された、謎のモテット集の、乗り越えた美しさ、吸い込まれそう...

パトリック・エイリーズ率いる、イギリスの古楽ヴォーカル・アンサンブル、シグロ・デ・オロが歌う、ミラノで編纂され、ストラスブールで出版されたというモテット集... "The Mysterious Motet Book of 1539"。

カトリック圏、ミラノの大聖堂の楽長を務めたフランドル楽派、ヴェレコーレ(ca.1500-after1574)が編纂し、1539年、プロテスタント圏、神聖ローマ帝国、帝国都市、シュトラスブルク(現在のフランス、ストラスブール... )にて出版されたラテン語によるモテット集... 1517年、ルターによる宗教改革に始まる対立、混乱、そして、戦争へと至った16世紀、宗派を越え、生まれた、モテット集を、ミステリーとして捉える、エイリーズ+シグロ・デ・オロの、"The Mysterious Motet Book of 1539"。

プロテスタントの礼拝にラテン語の聖歌は必要ない... はずが、プロテスタントの都市で出版されたモテット集の謎... カトリックに留まった周辺の領邦向け?あるいは、爛熟期を迎えようとしていたカトリック圏のルネサンス・ポリフォニー、その典礼音楽の芸術性に着目?いろいろ思いを巡らせてみるが、その美しさかなと... 宗派を越える美しさ...

で、取り上げられるモテットは、ヴィラールト(ca.1490-1562)、ゴンベール(ca.1495-ca.1560)といったルネサンスに欠かせない作曲家に、ジャック・アルカデルト(ca.1507-68)、ヨハネス・ルピ(ca.1506-39)、ドミニク・フィノー(ca.1510-ca.1556)... さらに、初めて聴く名前が並び、なかなかにマニアックなヴェレコーレ・セレクション。なのだけれど、これが、当時、人気のラインナップか?いや、間違いなく、美しい!

時代を経ての今の評価ではない、当時の評価によるセレクションの興味深さ... 何だろう?より澄んだルネサンス・ポリフォニーに触れることができるような、そんな印象を受ける、"The Mysterious Motet Book of 1539"。「ミステリー」という言葉とは裏腹に、その澄み切った美しさ、吸い込まれそう。で、対立の時代の救いの美しさか?

そんな、興味深い、ルネサンス期の1ページを見せてくれた、エイリーズ+シグロ・デ・オロ。彼らならではの明確なクリアさ、そこから無垢がこぼれ出すようなハーモニーは、謎のモテット集のミステリーをふわっと解いて(美しいが正義!)、聴く者を多幸感で包む。分断の16世紀を生きた人々を癒した?多幸感、沁みます。

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