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11月20日、知られざるフランドル楽派の末裔... 17世紀、アントウェルペンに響いた、ステーラントの教会音楽。

フランク・アグステリッベ率いる、ルクセンブルクのヴォーカル・アンサンブル、カントLXが、B'ROCK管の演奏で歌う、17世紀、アントウェルペンで活躍したフィリップス・ファン・ステーラントのレクイエム。

フィリップス・ファン・ステーラント(1611-70)。
ベルギー、フラマン語圏、アントウェルペン(当時は、スペイン領ネーデルラント... )の音楽家一家に生まれ、聖ヤーコプ教会(ルーベンスが埋葬されている... )のオルガニストを務めた人物とのこと... いや、初めて知りました。てか、バロックが始動してからのフランドル楽派を生み育てた土地(フランドルを中心とした低地地方、かつてのネーデルラント... )というのが、盲点だった。でもって、これが、実に興味深い音楽なのです。

1650年頃に作曲されたレクイエム(6声と5つの器楽による... )に、1656年頃に作曲されたミゼレーレ(5声と5つヴィオール、4声のリピエーノ合唱を伴う... )と、レクイエム(6声と6声のリピエーノ合唱による... )の3作品。バロックが動き出して半世紀、バロックを主導するイタリアのコンチェルタート様式(ポリフォニーを脱し、器楽の伴奏を伴う... )を丁寧に取り入れ、明快にして率直な音楽(17世紀、対抗宗教改革の時代のカトリックならではの... )を編み、ソロとコーラス、声と伴奏といったコントラストが、壮麗さを醸し出す。一方で、ルネサンスの古雅な佇まいもどこかで感じられ、壮麗さにやさしさも生まれるのか... そんなアントウェルペン流が印象的。

という、ステーラントのレクイエムとミゼレーレを聴かせてくれた、アグステリッベ+カントLX。まず、その真摯な歌声が心に響きます。コンチェルタート様式の整理された響きを、真っ直ぐに捉えて見えてくる景色の神々しさ!それは厳しくもあるのだけれど、やさしさも差して、聴く者を真の感動に導くかのよう。その歌声に寄り添うB'ROCK管の演奏もまたすばらしく... まだまだ素朴な17世紀のサウンドだけれど、彼らもまた真っ直ぐにそのサウンドを鳴らし、素朴だからこその真摯な壮麗さ醸し出し、魅了してくる。いや、声と相俟って、見事です。惹き込まれる。

しかし、侮れないです、ステーラント、17世紀のアントウェルペンの教会音楽。一見、最新のイタリアンのスタイルを学ぶ優等生のようで、そこはかとなしに、フランドル楽派の末裔の自負、聴こえてくるような... ネーデルラントのバロック、イイです。

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