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11月16日、ロックの『プシュケ』、イギリス・オペラ、黎明期の、思い掛けない盛りだくさんに魅了された!

セバスティアン・ドゥセ率いる、アンサンブル・コレスポンダンス、ルシール・リシャルドー(メッゾ・ソプラノ)、マルク・モイヨン(テノール)ら、実力派歌手が揃っての、ロックのセミ・オペラ『プシュケ』。ドゥセによる完全オペラ化で聴く...

清教徒革命(1649)により破壊(キリスト教原理主義政権は、音楽そのものを否定... )されたイギリスの音楽界が、王政復古(1660)によって息を吹き返す!帰って来た王室は、亡命先(フランス、オランダ、ドイツ、各地を転々とした... )、大陸の最新の音楽をイギリスに持ち帰り、遅まきながら、英国にもバロックの花が咲き始める... という中、1675年、ロンドン、ドーセットガーデン劇場で上演された、ロック(ca.1621-77)のセミ・オペラ『サイケ(プシュケ)』。オペラをまだ受容し切れていなかったイギリスならではの、ストレート・プレイが混在する半分オペラ、"セミ・オペラ"...

1671年、太陽王のために作曲されたリュリのトラジェディ・バレ『プシシェ(プシュケ)』(リュリがオペラ=トラジェディ・リリクに乗り出す前年の作品... オペラへの準備段階にある作品?)の翻案... ということで、フランス宮廷仕様。合唱が盛り上げ、ダンスありつつの、オペラ・バレ(が確立されるのは、まだ先だけど... )のようなオムニバスで展開される、ロックの『サイケ』。で、まず印象に残るは、その盛りだくさんさ!

オムニバスなのもあるけれど、表情に富む場面が次々に登場... フランスの原典をベースにしながら、イギリス伝統の仮面劇=マスクの要素なども引き入れ、イギリスらしさでも彩り、飽きさせない!のは、フランス宮廷とは違う公開の劇場で上演されたからか... よりポピュラリティーを感じる。で、その音楽、ヘンデルを準備するイギリス流の端正さ、すでに表れており興味深く... またフランス由来の豪奢さ、花々しさ、随所に散りばめられ、ロックの縦横無尽さに驚かされる。いや、これがイギリス・オペラの黎明期ですよ... 遅れてきたからこその良いとこ取りだわ...

そんな、ロックの『サイケ』を聴かせてくれたドゥセ+アンサンブル・コレスポンダンス。まず、ドゥセによるセミ・オペラの完全オペラ化が絶妙!ロックのみならず、リュリの既存の音楽を用い、台詞部分を音楽で埋め切って、盛りだくさん増し増し!その盛りだくさんな内容を、丁寧に、それでいて、花やぎに満ちたサウンドで彩るアンサンブル・コレスポンダンスの演奏も絶妙!で、歌手陣がまた魅惑的なパフォーマンスを繰り広げて... いや、思いの外、素敵なオペラ!

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