シェアハウスでの3か月の歩みとこれから。解散を控えたシェアハウス住民の座談会
異なる背景や価値観をもち、個性豊かな住人が集ったシェアハウス。
ここで過ごした3か月間で思いもよらない変化や出会いが──。
今回は解散前の寺澤邸にお邪魔してお話を伺いました。3か月を共に過ごした彼らに思い出や変化、解散前の今の心境などについてざっくばらんに語ってもらいました。
3か月を振り返って
――今回は寺澤邸にお邪魔しています。
3か月という限られた時間をこのシェアハウスで共有してきた皆さんに、
3か月を振り返っての感想や、解散前の今の気持ち、そして今後の意気込みなど伺えればと思います。
よろしくお願いします!
(布野)よろしくお願いします。
まず、僕らが出会ってから2か月ちょっとが過ぎたわけですけど、この3か月でなにか印象に残っていることはありますか?
(はるき)僕は地区巡りが印象に残ってるかな。
(布野)島に来たばかりの頃のだよね。
(はるき)そうそう。僕は島前高校出身だからこの町のことはよく知っていたけど、みんなの新鮮なリアクションが印象的だった。
(布野)地区巡り良かったよね。あれがきっかけで他のシェアハウスとも仲良くなれたし。
(やっすー)あの時はガイドしてくれてありがとう。
(布野)時生さんはどう?
(時生)いろんな人と出会えたことが思い出かな。
大学を卒業すると、職場の人以外で新しく出会う機会って少ないから。しかも、年齢層が幅広く、いろんな経験をしてきている人たちが集まって、こうして話せる関係になれたのも良かったかな。
(布野)たしかに、25歳でこの出会いの数は普通で考えたらないもんな。
島体験は学生が多いけど、社会人とか比較的年齢高い層にとっても大きな経験になったりするよね。
(時生)そうだね。あとは、研修の時に感じたことを言語化する機会が多かったけど、同じものを見ていてもそれぞれ感性や感じ方に違いがあって、自分にはない考え方を学べたのは本当に良かったと思う。それが思い出かな。
やっすーはどうでした?
(やっすー)思い出か。ありすぎて1つに絞れないけど…時生が車でいろんなところに連れてってくれたり、はるきがガイドしてくれたり、布野が釣りを教えてくれたりしたことが嬉しかったし、新しい経験ができたのが良かったかな。
(やっすー)それから、今こうしてたわいもない会話をしていること自体も、1つの思い出かなと思ってて。
時生とかさ、出会ったばかりの頃はめっちゃ静かやったやん。
(布野)たしかに、寡黙な男だった。
(時生)一言も喋らなかった。
(布野)まじバケモンだった。
(時生)バケモンって言うな。
(布野)でも本性が現れたらすごく喋るやつだって分かったから。
(やっすー)そうそう。人の本性が見えたっていうのも、1つの思い出だと思う。
(布野)短期間でこんな関係になることないもんな。
(やっすー)ないね。大学生のうちにこういう経験できたのはよかったと思う。社会に出てからもいろんな人と出会うだろうけど、気の合う人を見つけるのは難しいから。
(布野)なるほど。ありがとうございます。
と、思い出を振りまくった僕なんですが、実は3ヶ月の思い出はないんですよね。というのも、来島して初期の段階で海士町の暮らしが自分に合っていて地元に近い感覚があったから思い出っていう認識はなくて。全てが日常っていう感覚だから、全部の記憶が等しく楽しかったなって感じ。
(やっすー)つまり全部が楽しかったってことですよね。
(布野)そうそう。
(時生)全部が楽しかったって言いたいけど、それをかっこよく言うために?
(布野)違うわ。全体的に底上げされてるから。全部高いレベルで楽しかったってこと。
(時生)平均が高かったってことね。
3か月で生まれた変化と学び
(布野)では、3か月間の変化についても聞いていきましょうか。時生さんは変化ありました?
(時生)まず、仕事に対しての見方が変わったのが1つあるかな。
前職では殺伐とした空気の中で働いていて、「忙しい」っていうのが楽しくないし嫌なイメージだった。でも、こっちでの仕事を通して「忙しいって楽しいな」って感じるようになった。
(時生)あと、歴史が面白いと感じるようになったのもこの3か月で変わったことかな。
学生の頃は机の上で学ぶ歴史が好きじゃなかったけど、実際にその場所に行って目で見たり、住んでいる人の話を聞いたりすることで、歴史がおもしろいって感じるようになったし、その地域の価値や観光資源としての重要性も感じた。将来観光系の会社を立てることが目標だから、そのためのいい勉強になったなって思ってる。
はるきはなにか変わったことはある?
(はるき)親孝行したいっていう気持ちが強くなった。
(布野)それはなにがきっかけで?
(はるき)きっかけは研修でLife is learningをやったとき。「自分が大事にしたい宝はなんですか」っていう問いに経験って答えたんだけど、経験ができてるのは親のおかげだって気づいて。
(はるき)島前高校に入ったのも、今の満足した生活も、これまで得たものも、親がいたからこそできたことだし、もっと親孝行しないとなと思うようになった。
(布野)なるほど。これまでの経験は親のおかげだったと。
(はるき)そうそう。研修で改めてそれに気づかされましたよ。
(布野)やっすーはいかがでした?
(やっすー)シェアハウス生活や釣り、田植えとかいろいろ新しいことに挑戦できた面で成長できたかな。自分って意外と新しいことにも飛び込めるんだっていう気づきがあった。
(布野)いいじゃないですか。
(やっすー)自分のフットワーク軽いっていう新たな一面を知れたのは大きかったかな。
布野さんは?
(布野)変化はあんまり感じてないけど、気づきはいっぱいあって。例えば、人と接する仕事が自分に合っていることとか、この島での時間の流れ方、人の感じ、暮らしがすごい自分に合ってることとか。それは実際に来てみないと気づけなかったことだから、そこは大きかったと思う。
残り3日 シェアハウス解散前の心境
(布野)はるきとやっすーはあと3日で離島だけど、実感湧いてますか?
(はるき)実感は湧いてますよ。明日で仕事が終わると思うと寂しさも感じるけど、今はやりきろうっていう気持ち。
(布野)なるほど。やっすーはいかがです?
(やっすー)いや、全く実感ない。正直、離島したくない気持ちが強くて、離島の日が近づいてきてるのが寂しいし、悔しい。
(布野)悔しいっていうのはプロジェクトのこと?
(やっすー)もちろんプロジェクトの仕事が途中だから、それを残して帰るのが悔しいっていうのもある。それに、生活面でも仕事面でももっとやれることはあっただろうし、改善したい部分もあったと思う。
(布野)なるほどね。離島する2人の話を聞いてきましたが、離島せずとも僕らもシェアハウスの解散が待ってるわけで。
時生さん、今の気持ちいかがですか?
(時生)俺は最初からここで半年間仕事をする予定だったから、逆算して考えてて。最初の3ヶ月は下積みとして、生活に慣れる期間だった。いきなり職場に入ってこれやらしてくださいって言うわけにはいかないから、ここまでの期間は誰もやらないような仕事にも積極的に取り組んできたけど、これからの3ヶ月はちょっと自我を出していこうかなって思ってる。
(布野)このチームで集まるのもあと3日か。
(時生)そうやね。
(布野)いやあ、寺澤邸が解散するのは実感湧くな。やっぱりこの4人じゃなくなるのは悲しいし寂しい。全てのシェアハウスの中で1番楽しかったって自信持って言える。うちのシェアハウスに勝るシェアハウスはないね。
シェアメイトだからこそ見える一面
(布野)この4人でよかったって心底思ってて、特に時生はね、かなり大きい存在になった。親友と呼んでやってもいいだろう。
(時生)俺はそんな風には感じてないけど…。
(布野)おいおいおい。(笑)
はるきは、一見真面目そうなのにたまにボケが飛び出してきて。その突発さが俺は好きだったし、楽しかった。
(時生)それ、俺も好きだったよ。
(布野)だよね。
やっすーは友達としてもよかったし、ぜひうちのシェフとして名を馳せていただこうと。これからもシェフとしてぜひ頑張っていただきたいなと。
(やっすー)あとで3か月の請求を…
(布野)やっすーが気にいらないこと言ったら請求がくるシステム怖すぎるって。
でも、本当に4人でよかった。この4人が集まったからこそ、この生活ができたし、僕は大変良かったです。
じゃあ時生さんのターンいきましょう。1人1人の振り返りを。
(時生)はるきはすごく気を遣ってくれるし、根がしっかりしてる優しい子だなって感じてた。しっかりしてるけど、たまに年下らしい可愛い部分を感じることもあって。
やっすーは継続力と忍耐力がすごいっていう印象で、自分で決めたことだからやり遂げるみたいな姿勢が素晴らしいと僕は思ってます。
布野はトーク力とリーダーシップがあって、考えに行き詰まって困った時にみんなが見るのが布野だった。いい考えを出してくれるんじゃないか、言葉を発してくれるんじゃなかっていう期待感があるんだよね、きっと。
俺の前だとガキんちょだけど。
(布野)おいおいおいおい。
(時生)俺と一緒にいる時は、みんなといるときとは違って、うるさいガキだなって感じ。でも、俺にそういう部分を見せてくれてるのは、心安らぐ場として感じてくれてるのかなって思って嬉しかった。
(布野)ありがとうございます。
(時生)ここに来る前は、島って閉鎖的なイメージだったけど、1回旅行で来た時に景色とか空間的な意味で開放的だと思った。でも実際に住んでここにいる人と交流してみたら、人の心も開放的だなって感じて。閉鎖的から開放的へ、そしていろんな開放的の意味も変わって、島のイメージがどんどん広がっていった、本当に素敵な場所だなって感じる3か月でした。
(布野)ありがとうございます。
はるきから見た僕らの印象はどうですか?
(はるき)時生くんについては、まず前菜として、車もっててありがたい。
(布野)前菜?!コース料理?!まあ、たしかにそこ大きいけど。
(時生)それ俺じゃねえわ。車へのありがたみね。
(はるき)それから、やっぱり受容力かな。寺澤邸でもそうだけど、いろんな人を受け止めて、いろんな視点とか考え方を取り入れようとしている姿勢に尊敬してる。生活リズムが違うから5分だけとか、3日ぶりとかざらにあったけど、それでもこの家にはいるって安心感はあったね。
やっすーは、プロジェクトとか仕事、学校の部分でもすごい努力してて、見えてないところでも頑張ってるだろうなって感じてて、さっき時生くんが言ってた、継続力にはすごい共感できた。
布野くんはですね、明確な意志をもってこの島に来てるところとか、仕事に対する勤勉さとか、物事に対してアクティブな印象があるかな。ソフトボール大会にも一緒に出てくれたし、僕が声かけたことに積極的に乗ってくれたのがすごい嬉しかった。あと、話術とコミュ力が高くて尊敬してる。
(布野)ありがとうございます。
(時生)次、やっすーいこう。
(やっすー)布野からいこうかな。布野はよく歌うし喋るし、本当におしゃべりなんだなっていう印象で。でも人のプライバシーに触れることは1番嫌ってるんだろうなって感じてて。仲良い人に軽くいじることもあるけど、18歳とは思えないぐらい言ってはいけないことの区別ができてるし、それを言った人に対して注意もできるところがしっかりしてると感じてた。
(布野)おー、それ言われたのは初めてだわ。
(やっすー)次ははるきかな。はるきは朝昼晩しっかり食べる子なんだなって思ってて。料理は任せてって言っちゃった分、朝が早くて用意できてなかったのは申し訳なかったかな。
(布野)シェフやん。
(時生)完全にママやん。
(布野)お母さんやん。
(やっすー)はるきのいいところは、本当に優しいところとたまにふざけたりして場を和ませてくれるところ。しっかりしていて年下だとは思ってなかったかな。
時生はなんだろう。車もあるけど、それは別に1、2割の話で。
(時生)おっと?結構でかいな。
(やっすー)時生はこの家で1番みんなを気にかけてくれてて、頼りになる存在でした。人生経験が他の人よりも上だなっていうのは身に染みて感じてた。あとは甘いもの好き。
いろいろありすぎてまだ特徴を掴みきれてないけど、お肉とかも送ってくれてたしね。お米は布野がもってきて。食に関しては俺人一倍こだわり強いから、そこに対しては本当に頭上がりません。
(布野)俺と時生は食材でね。家から食材を送ってもらって、俺は米を提供し、はるきは気持ちで応援してたもんね。
これからの計画と展望
(布野)ここまで過去の話したので、最後に未来の話をしましょうか。
3ヶ月で離島する組には帰った後の予定を、残る俺らは次の3か月の過ごし方の話がしたいと思ってる。
まず離島するお2人から。3ヶ月が終わったら、この後はどうする予定なんですか?
(はるき)親孝行したいから、実家に帰ります。それから、実家がある東京を拠点にして、いろんな活動をする予定です。地方のインターンに参加してみたり、いろんな場所を回ったりして経験が積められたらいいかなと考えております。
(布野)なるほど。ありがとうございます。
やっすーはいかがでしょう。
(やっすー)俺は大学に戻ってゼミの研究発表をしたりとか、以前から関わっていた学生団体のイベントのスタッフをやったりとかかな。あと、就職先は決まってるけど、将来に向けて資格の勉強も考えてる。
町を離れるのは惜しいけど、他の形で関わりをもてたらいいなって思ってる。
(布野)なるほど。
そして、残る組の僕たちですが、次の3ヶ月はどんな動き方をしたいと思っていますか?
(時生)俺は、将来お世話になっていたとある島にホテルをもつっていう目標があって、そのために島おこしに積極的に参入したいと思ってる。海士町は島の最先端を走ってると思うから、町おこしに役立つ知識を身に付けたい。あとは、島外の人にどう魅力を伝えるかとか、価値を高める方法、リピーターの獲得方法、島の住民を巻き込む方法とかを学んで自分のものにするっていうのが目標。
(布野)ありがとうございます。
俺は、次の3ヶ月も海士の暮らしをしっかり楽しみたいと思ってる。これから夏になるし、職場でも「仕事より遊びなさい」って言われているからね。次は崎にあるシェアハウスで海がすぐ近になるからさらに楽しめそうです。
仕事面では、お世話になった分を情報発信で恩返しができるよう頑張ろうって思ってます。
対談の感想
お話を伺うなかで、寺澤邸の深い絆やお互いに対するリスペクトが感じられました。シェアハウスでの3か月がどれほど深い意味をもち、各々にとってかけがえのない経験となったのかがよく分かりました。
素敵な時間をありがとうございました!
これからそれぞれの場所での活躍を祈っています。
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