魔女と聖女―ヨーロッパ中・近世の女たち
ヨーロッパの中世から近世にかけて、「魔女」と呼ばれる人々がいたことは、誰もが、御存知だと思います。
では、同じ時代に、「聖女」と呼ばれる人々も多かったことを、御存知でしょうか?
中世から近世のヨーロッパで、魔女と言えば、忌まわしいものの象徴でした。ちょうど中世から近世へ移り変わる時代に、ヨーロッパでは、魔女狩りの嵐が吹き荒れました。
「怪しい。魔女ではないか」と告発された人は、逮捕され、拷問され、シナリオどおりの自白を強要されたのちに、処刑されました。その多くは、女性でした。
そのような、血みどろのおぞましい時代に、清らかさの象徴である聖女も、おおぜい現われました。聖女は、この上なく神聖なものとして、人々にあがめたてまつられました。
同じ時代、同じ地域で、同じ女性に対して、これほどの差があったのは、なぜでしょう?
まるで、女性には、魔女と聖女しか、いないかのようです。「普通の人間としての女性」は、いないのでしょうか?
本書は、そのような、女性に対する極端な見方から、中世・近世のヨーロッパを読み解いています。
魔女に対する嫌悪と、聖女に対する崇敬とは、紙一重の差しかありません。本質的には、同じものです。
男性の側から見て、自分とは違うものに対する興味や、恐怖や、憧れといったものが、ないまぜになった感情です。
そういう感情を持つこと自体は、いつの時代、どこの地域でも、避けられないでしょう。
中世・近世ヨーロッパの場合には、その感情が、極端な方向に走ってしまったのですね。そこに、社会の病理が見られます。
魔女や聖女といった存在を通して、中世・近世ヨーロッパ社会が見えてきます。
ヨーロッパの歴史や文化を知りたい方には、本書は、とてもお勧めです(^^)
もちろん、魔女や聖女に興味がある方にも、お勧めです。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
プロローグ
1 魔女
1 魔女狩り
2 魔女集会「サバト」
3 魔女裁判と拷問
4 悪魔学の深層
5 魔女はなぜ生まれたか
2 聖女
1 閉ざされし聖女
2 男装する聖女
3 拒食する聖女
4 聖体をいつくしむ聖女
5 聖女の恍惚
3 魔女と聖女の狭間で
1 モデルとしてのイヴとマリア
2 女のからだ
3 母性の勝利
4 娼婦とマグダラのマリア
5 異端のなかの女性たち
4 したたかな女たち
1 教会法と世俗の法
2 女性の仕事
3 権力をにぎった女たち
4 女たちの十字軍
5 中世の自由恋愛
5 女性の文化は存在したか
1 糸巻き棒の福音書
2 読書する女
3 聖なる治癒力
4 ベギンとピンツォケーレ
5 女性知識人の登場
エピローグ
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