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アメリカ・インディアンの神話と伝説


アメリカ・インディアンの神話と伝説

 アメリカ先住民の神話と伝説を紹介した本です。
 とはいえ、アメリカ大陸全体をカバーしてはいません。
 米国の北西部、太平洋に面した地域だけです。州名で言えば、ワシントン州(ワシントンDCではありません)、オレゴン州、カリフォルニア州の北部です。カナダのブリティッシュ・コロンビア州にも、またがります。

 アメリカ先住民の神話や伝説としては、中部平原地帯の部族のものが紹介されることが多いです。ナバホ族やラコタ族などですね。
 この本のように、米国北西部のものを紹介した本は、日本語では、ほとんどありません。その点で、本書は貴重です。

 米国の中部平原地帯と、北西部の太平洋岸とでは、気候や動植物がまったく違います。
 必然的に、神話や伝説も、違うものが多くなります。
 それでいて、どこか共通する点もあるのが、不思議です。

 本書では、ウイシュラム族(Wishram)、ウンプクア族(Umpqua)、オカノガン族(OkanoganまたはSylix)、カラプーヤ族(Kalapuya)、クイナールト族(Quinault)、クイルラユーテ族(Quileute)、クエーツ族、クラマツ族(Klamath)、クラルラム族(Klallam)、クリキタート族(Klickitat)、コーケル族(Coquille)、コース族(Coos)、サンポイル族(SanPoil)、シャスター族(Shasta)、スクワミッシュ族(Squamish)、スノクオルメ族(Snoqualmie)、スポーカン族(Spokane)、セラン族(Chelan)、チノーク族(Chinookan)、ニスクオーリー族(Nisqually)、ネツ・プルス族(Nez Perce)、ピューヤルラップ族(Puyallup)、マカ族(Makah)、モドック族(Modoc)、ヤキマ族(Yakama)、ルンミ族(Lummi)、ワスコー族(Wasco)などの神話と伝説が、紹介されています。
 ただし、これらの部族の名は、二〇二二年現在では、違う名で呼ばれることも多いです。本書は、一九九五年に出版されたものなので、情報が古い面があります。

 残念なのが、日本語の文がたどたどしい部分があることです。このために、意味が取りにくい部分があります。
 この理由により、評価するとしたら、満点は付けられません。

 アメリカ先住民の伝統的な考えでは、世界には、さまざまな精霊が住んでいます。善い精霊も、悪い精霊もいます。
 好むと好まざるとにかかわらず、人間は、これらの精霊と、共存していかなければなりません。どちらかがどちらかを完全に支配したり、抑制したりといった関係にはなりません。
 かつてのアメリカ先住民は、精霊たちと、時には協力し、時には取引をし、また時には、いたずらやごまかしをして、付き合ってきました。
 ファンタスティックな精霊たちの世界を、お楽しみ下さい(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

序文――山の峰々からインディアンの伝説へ

第一節 山々の神話
 自然の精霊たち
 一 シャスター山と灰色熊  モドック族
 二 シャスター山と大洪水  シャスター族
 三 ジェファスン山と大洪水
 四 フード山の酋長の顔
 五 アダムス山の物語  ヤキマ族
 六 ピュジェット・サウンドとカスケード山脈の起り

 など

第二節 湖の伝説
 湖の精霊と動物たち
 一 クレータ湖の起り  クラマツ族
 二 姿を消した湖と大鹿の精霊  ワスコー族
 三 スピリット湖の悪魔たち
 四 クワテーとクイナールト湖の怪物  クイルラユーテ族
 五 クレセント湖の起り  クイルラユーテ族
 六 ナーケーター――スザーランド湖の物語  クラルラム族

 など

第三節 河・岩と滝の民話
 昔の動物人間たち
 一 動物人間の創造  オカノガン族
 二 コヨーテとコロンビア河の怪物  クリキタート族
 三 どのようにしてコヨーテは、人々を助けたか
 四 ウイルラムエト滝の起り  カラプーヤ族
 五 ウイルラムエト谷の洞穴の怪物  カラプーヤ族
 六 何故コロンビア河は、光るか  ワスコー族

 など

第四節 創世・空と嵐の神話
 何故にそして何時民話は話されるのか
 一 クラマツ・インディアンの世界の創造  クラマツ族
 二 モドック・インディアンの世界の始まり  モドック族
 三 チノーク・インディアンの起り  チノーク族
 四 ニスクオーリー・インディアンの世界の始まり  ニスクオーリー族
 五 オカノガン・インディアンの世界の始まりと終り  オカノガン族
 六 ヤキマ・インディアンの世界の創造  ヤキマ族

 など

第五節 その他の神話と伝説
 保護霊
 一 はしばみの実――保護霊  ヤキマ族
 二 保護霊と汗かき小屋の起り  サンポイル族
 三 根菜類のお祭りの起り  ヤキマ族
 四 どのようにしてコヨーテは、人々のために火を運んだか
 五 どのようにしてビーバーは、火を盗んだか  サンポイル族
 六 コヨーテとわしが死の国を訪ねること

 など

語彙解説
あとがき



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