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死都日本(講談社文庫)


死都日本(講談社文庫)

 メフィスト賞を受賞した小説です。メフィスト賞といえば、ミステリの印象が強いですが、本書は、ミステリとは言えないでしょう。SFパニック小説です。

 「平成の『日本沈没』」という謳い文句が、ぴったりです。
 地震ではなく、火山の噴火によって、日本全体が危機に陥る話です。

 噴火するのは、宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島火山です。
 より正確には、霧島火山を含むさらに巨大な火山、加久藤【かくとう】火山が噴火したことになっています。

 宮崎県民と鹿児島県民は、全員、本書を読んだほうがいいと思います。
 この小説ほどの規模ではなくても、破壊的な噴火が、自分の住む土地で起こる可能性があると、知っておいたほうがいいからです。
 小説のストーリーは、架空です。けれども、火山噴火によって起こる災害については、真実を突いています。

 本書の舞台は、宮崎県です。実在する地名が、ぽんぽん出てきます。土地勘のある人なら、ぴんと来ることばかりでしょう。
 私は、そちらに土地勘がないことが、残念でした。

 先に、日本全体が、危機に陥ると書きましたね。
 九州で起こった噴火が、日本全体に、影響を及ぼすものでしょうか? 例えば、海を隔てた四国や本州には、関係なさそうですよね?

 その考えが甘いことを、本書で知らされました。

 高熱で、ヒトも建物も破壊する火砕流は、海の上をも走ります。本書では、鹿児島湾が火砕流に蹂躙【じゅうりん】される様子が、克明に描かれています。

 九州で巨大噴火が起こった場合、風向きの関係で、日本全体に、火山灰が降り注ぎます。火山灰は日照をさえぎり、道路や家を埋め尽くします。農作物は全滅し、交通は麻痺し、物流も滞ります。
 会社へ通勤するどころか、その日の食べ物をどうやって入手するか、考えなければなりません。

 そんな災害が、日本全体に及んだら?
 まさに、国家滅亡の危機ですね。
 読み終わった後、恐ろしくなる本です。そういう意味では、ホラー小説ですね。

 火山について知りたい方、怖い話を読みたい方に、本書をお勧めします。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

プロローグ

第一章 蠢動【しゅんどう】
第二章 K作戦
第三章 水蒸気爆発
第四章 噴火
第五章 恐怖の大王
第六章 黄泉【よみ】
第七章 彷徨【ほうこう】
第八章 脱出
第九章 ラハール
第十章 真理【まり】
第十一章 神の手

エピローグ

解説/佳多山大地



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