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ザシキワラシの見えるとき―東北の神霊と語り (三弥井民俗選書)


ザシキワラシの見えるとき―東北の神霊と語り (三弥井民俗選書)

 ザシキワラシという題名からして、妖怪について書いた本、だと思われそうですね。
 それを期待すると、ちょっと違います。

 どちらかといえば、副題の『東北の神霊と語り』のほうが、本題です。
 題名と内容に、食い違いがあるため、評価点を付けるとすれば、満点にはできません。とはいえ、そこを別にすれば、満点と言っていい内容です(^^)

 ザシキワラシについて、触れられていないわけではありません。
 ザシキワラシについて知りたいなら、この本の序、および、IV章は、必読です。たいへん貴重なデータが載っています。

 けれども、これら以外の部分には、ザシキワラシは、ほとんど登場しません。
 昔―といっても、昭和三十年代くらいまで―、東北地方で見られたシャーマニズムや、民間信仰について、書かれています。

 この本によれば、少なくとも、一部のシャーマニズムや民間信仰は、昭和の終わり(一九八〇年代末)まで、生き残っていました。ひょっとしたら、二〇一〇年現在でも、残っているかも知れません。
 この実態が知れるだけでも、驚きです。

 日本のシャーマニズム、琵琶法師のような放浪者の芸、オシラサマや山の神などの民間信仰、イヅナ使い、などに興味がある方は、ぜひ、お読み下さい。

 『遠野物語』に興味がある方にも、お勧めです。
 『遠野物語』を成立させたのは、どのような世界であったのか、わかります。より深く、『遠野物語』を知ることができるでしょう。

 都市伝説について、掘り下げたい方にも、お勧めします。
 III章の「六部殺し」の話などは、現代の都市伝説の原形を見るようで、たいへん興味深いです。

 以下に、この本の目次を書いておきますね。

序 東北の神霊と語り
 一 憑くことと語ること  二 巫女と歴史伝承

I 巫女と盲僧の語り

 陸前陸中の妙音講
  一 はじめに  二 気仙沼の妙音講  三 各地の「妙音講」 など

 神おろしのオシラサマ―宮城県気仙沼地方の神様アソバセ―
  一 はじめに  二 二種類のオシラサマ  三 旧鹿折村のオシラサマ など

 陸前北部の座頭について
  一 はじめに  二 近世の座頭  三 現代の座頭 など

II 憑依の現場から

 魂が抜け出る話―巫女の成巫譚をめぐって―
  一 はじめに  二 カミサマの成巫譚  三 ヨリとオカミサンの成巫譚 など

 イヅナと憑祈祷【よりぎとう】―日蓮宗寺院におけるシャーマニズム―
  一 はじめに  二 法華とイヅナ  三 法華の憑祈祷 など

 憑霊の語りの形成とその伝承
  一 はじめに  二 巫女の祈祷の語り  三 憑祈祷の語り  四 おわりに

 鬼と語り物
  一 鬼を感じるとき  二 語り物の宗教性  三 田村麻呂伝説の鬼 など

III 六部の語り

 「弘法」という名の六部について
  一 はじめに  二 伝聞の中の「弘法様」  三 「弘法様」と会った人の話 など

 消えた六部―ハナシの発生の基盤について―
  一 はじめに  二 口頭伝承の中の「六部」  三 「六部殺し」の伝承者 など

 ハッケオキと「六部殺し」伝承―岩手県遠野地方の事例分析―
  一 はじめに  二 遠野地方のハッケオキ  三 恩徳の平助ハッケ など

IV 『遠野物語』を支える伝承世界

 ザシキワラシの見えるとき
  一 「家の神」としてのザシキワラシ  二 ザシキワラシが文字になるとき など

 稲子沢【いなござわ】の長者伝説と担い手
  一 はじめに  二 稲子沢のザシキワラシ  三 夢見長者 など

 山神の憑依について
  一 はじめに  二 山の神に遭う(祟る)  三 土淵の孫太郎ハッケ など

 山中婚姻譚の諸相
  一 はじめに  二 『遠野物語』の周辺  三 五葉山の女  四 恐山の女 など

初出一覧
あとがき
索引



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