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宇津ノ谷峠の地蔵伝説―日光から来た素麺地蔵 (静新新書 15)


宇津ノ谷峠の地蔵伝説―日光から来た素麺地蔵 (静新新書 15)

 宇津ノ谷峠【うつのやとうげ】とは、静岡県にある峠です。
 この本は、そこに立つお地蔵さんにまつわる伝説を取り上げています。

 宇津ノ谷峠のお地蔵さんには、素麺地蔵【そうめんじぞう】というあだ名があります。
 なぜ、こんなあだ名が付いたのでしょうか?

 それは、このお地蔵さんが、「昔、素麺【そうめん】を山ほど食べた」という伝説があるからです。
 お地蔵さんと素麺なんて、まるで関係なさそうですね? どうして、こんな伝説ができたのでしょう?

 しかも、宇津ノ谷峠の素麺地蔵は、二体あります。
 峠には、二か所に、一体ずつ、お地蔵さんが立っています。どちらにも、素麺が関わる伝説が伝わっています。

 二体の素麺地蔵は、素麺を大食しただけではありません。

 片方のお地蔵さんは、自分の持つ錫杖【しゃくじょう】の半分を、栃木県(!)に置いてきたことになっています。
 もう片方のお地蔵さんは、素麺を食べたのち、宇津ノ谷峠で、食人鬼を退治したことになっています。

 素麺を食べることと、錫杖の半分を置いてくることと、食人鬼を退治することと、何の関係があるのでしょう?

 このように、宇津ノ谷峠の素麺地蔵の伝説は、謎だらけです。全国的には、ほとんど知られていない伝説ですが、面白そうですよね?(^^)
 これらの謎を解くことに、この本は挑戦しています。

 伝説の前半である「素麺大食」の逸話に比べ、後半の「食人鬼退治」の謎解きが、もの足りません。このために、評価の星を付けるなら、一点減点です。
 けれども、全体的には、謎解きの過程に、わくわくできます(^^)

 以下に、この本の目次を書いておきますね。

はじめに

第一章 宇津ノ谷峠の二体の地蔵
 一、駿河国【するがのくに】宇津ノ谷峠
 二、二体の地蔵尊
 三、宇津ノ谷峠の西の地蔵(坂下地蔵堂)
 四、宇津ノ谷峠の東の地蔵(慶龍寺)
 五、慶龍寺の地蔵縁起

第二章 日光山の「素麺地蔵」伝説
 一、栃木県さくら市 氏家【うじいえ】の勝軍【しょうぐん】地蔵
 二、素麺谷【そうめんだに】の地蔵伝説
 三、「素麺地蔵」伝説と日光山の強飯式【ごうはんしき】
 四、「素麺地蔵」伝説の成立時期とその伝播

第三章 宇津ノ谷峠の「素麺地蔵」伝説
 一、受け継がれた「素麺地蔵」伝説
 二、宇津ノ谷峠の「食人鬼」伝説
 三、地蔵の遷座と十団子【とおだんご】
 四、生まれ清まる地蔵伝説

第四章 宇津ノ谷峠と地蔵信仰
 一、宇津ノ谷峠に伝わる他の地蔵伝説
 二、「素麺地蔵」伝説翻案の意義

本文注
付録 駿河一国百地蔵尊について
あとがき



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