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魔法少女の系譜、その66~『はるかなるレムリアより』は逆ハーレムか?~


 今回も、前回に続き、『はるかなるレムリアより』を取り上げます。

 前回のこのシリーズで、『はるかなるレムリアより』が、逆ハーレム構造だと書きましたね。これに、説明が足りなかったので、補わせていただきます。

 逆ハーレム構造といえば、ヒロインが、複数の男性にちやほやされることを、思い浮かべるでしょう。
 けれども、『はるかなるレムリアより』では、そういう様子が、目立ちません。ヒロインの涙【るい】は、ひたすら、周囲から疎外されている様子が、目立ちます。スカラベとサンダーバードとナーガラージャだけは、涙【るい】に優しいのですけれどね。
 逆ハーレム構造でも、決して、「明るく楽しいモテモテ天国」状態では、ありません。全体的に、暗いです。この暗さが、一九七〇年代的です。

 そうなっているのは、スカラベ、サンダーバード、ナーガラージャの三名が、涙【るい】の正体に、なかなか気づかないからです。彼らには、涙がアムリタデヴィの生まれ変わりであることが、わからないんですね。

 アムリタデヴィの生まれ変わりを探せるのは、なんと、敵役のガアリイだけということになっています。なぜ、そうなのかは、説明がありません。
 スカラベたちは、ガアリイがアムリタデヴィを見つけだした後、ガアリイが彼女を殺す前に、アムリタデヴィを確保しなければなりません。

 この設定が、面白いですね。おかげで、ガアリイとスカラベたちとの駆け引きに、緊迫感が出ます。

 のちの「転生型魔法少女」作品ですと、転生仲間同士は、出会いから間もなく、お互いのことがわかるのが普通です。「目覚め」さえすれば、現世の記憶はそのままに、前世の記憶や能力を引き継げるからです。
 この点、『はるかなるレムリアより』は、異彩を放っていますね。転生仲間かどうかの判定が、敵役にだけゆだねられてしまうという設定は、他の作品では、ほとんどないのではないでしょうか。

 ヒロインの涙【るい】が、「変身しない」ことも、アムリタデヴィと気づかれない、大きな要因です。アムリタデヴィの記憶と能力とを取り戻しても、涙の外見は、まったく変わりません。一九七〇年代の魔法少女は、「変身しない」ほうが、普通でした。

 ガアリイは、かつてのラ・ムーに取って代わって、無限の力を持つ存在になろうとします。ラ・ムーの代わりということは、アムリタデヴィのパートナーになることを示します。
 それなら、ガアリイの性別は、男性にするほうが普通ですよね? アムリタデヴィが女性ですから。でも、ガアリイは、明らかに女性です。

 こうなったのは、ガアリイのモデルが、インドの暗黒女神カーリーだからでしょう。作品の中で、涙【るい】の父親が、それを示唆する台詞があります。
 物語的には、ガアリイが男性であったほうが自然ですが、モデルのカーリーのイメージを引きずって、女性にされたのだと思います。

 短いですが、今回は、これだけとします。
 次回も、『はるかなるレムリアより』を取り上げます。



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