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AIとシンギュラリティについて ❷ - 科学技術ではなく精神の話では? (2018年に思っていたこと)

シンギュラリティ(技術的特異点)とは:

AI(人工知能)研究の世界的権威「レイ・カーツワイル」が提唱した仮説––––自律したAIがとてつもない学習スピードで改良を繰り返した結果、人間を上回る知性が誕生するというものだが、カーツワイル自身は「AIが人類の知能と融合する時点」とも定義している。シンギュラリティに到達すると予測されている年を冠して「2045年問題」とも呼ばれる。

 AIに対して楽観的でも悲観的でもないが、シンギュラリティについて思うことはある。

 僕もAIによる音楽創作プロジェクトに携わっているので、AIによるクリエイションを否定したいわけではない。むしろ、積極的に推進していきたい派だ。

 ただし、いつまでも、ビッグデータ(大量の学習データ)のみに頼る存在であるなら、それは、知能ではなくシステムに過ぎない。

 でも、これすら否定したいわけではない。

 テクノロジーのみに依存しないシンギュラリティの起こし方、知能という存在感の生み出し方があると言いたいのだ。

 人も、既存の音楽に影響されて曲を生み出す。
 AIも既存の音楽に影響されて曲を生み出す。

 この影響という言葉の定義を「テクノロジーによって等しくするのか」もしくは「手法はどうであれ哲学的(法律的)に等しいと見做すのか」––––後者は、僕らと異なる回路を持つAIに、等しく人権を認めれば良いという考え方であり、それに従うと、何もかもを科学技術で定める必要はない。

 シンギュラリティとは、
 人間の心の中で起こることなんじゃないか?

「この曲、(人がつくった)あの曲より良いね」とか––––

 その瞬間––––その人の中で、
『この曲』をつくったAIは、
『あの曲』をつくった人を超えている。

 でも、逆の人もいるわけで……

 つまり、シンギュラリティとは、「すべての人が統一して認識できるような規格上で起こる優劣」ではなく、「各々が、心の中で、その都度、感じる、いつまで経っても完成などしない曖昧な好み」程度で良いのではないか。

 いずれにせよ、音楽が世にあふれることには、心から賛辞を贈りたい。

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 完全なる自論で申し訳ないが……

 僕はなんとなく、人間社会の一部で「法律」や「ルール」に変わる存在がAIという新しい神さまだと思っている。

(宗教に近いのかも……)

 曲であれば「好み」で済むが、法律となると「善し悪しの観念」=「倫理(モラル)」となってくる。

 そもそも、「法」とは何か?

 漫画「キングダム」で読んだ「希望」という答えが、本当に素晴らしいと思った。

 確かにそうだ。

 法というのは、希望の平均化のような存在––––道を歩きたい人/車に乗りたい人。それぞれの希望を平均化して均衡を保つ––––その具現化として「右を歩け」「信号を守れ」など、行動を限定する「規制(ルール)」になっているだけで––––

「法」という存在そのものを言葉で表すなら、
「律」ではなく「希望」と言いたい。

 テクノロジーが進化したとき、たとえば、スポーツの審判は、果たして人で(少なくとも人のみで)あり続けるだろうか?––––目や耳の代わりに大量のドローンを用い、そこから届く高次元な情報を用いたジャッジ(一人の人間には不可能な並行処理)をAIに任せる時代が来るかも知れない。

 そんな時代、「会社」という法治社会に放置された「人治社会」はどうなるだろう?

 いまだに人の決定がすべて––––人が人を評価し、人の上に人をつくる封建社会––––これをなるべく公平に近付けようとするなら、人工知能はうってつけだ。

 人類史は、人による支配から抜け出し、人ならざぬ「何か」に支配されようとする歴史だ。かつては「神(宗教による統治)」であり、やがて「法(法治国家/民主主義)」となり、今は、その2つの人外を越えて「金(資本主義)」が、その「何か」だ––––

 ––––次に、そのポジションを狙えそうな人外の存在こそ「AI」ではないだろうか。

 人事評価は、マネージャーや上司の仕事ではなく、AIの仕事になり、それによってマネージャーは教育や環境づくりに集中出来る。プレーヤーとしての時間も増えるかもしれない。

 評価と教育が別軸になるのだとすれば、当然、それは学校や入試にも反映される。

 裁判官(弁護士と検事はあえて外している)––––判例(過去の大量の学習データ)を重要視している時点で、AIにこそふさわしい。レファレンスがあり、それを大量に吸収させれば、囲碁や将棋で起こっている現象と同じような––––一部でのシンギュラリティは、すぐにでも起こせそうな気がする。

 人間は、同類からの「支配」を嫌う反面、人以外からであれば、すんなりと受け入れる性質を持っているように思う。私情や感情など入り込む隙間の無い完全無慈悲で冷酷な(いや、だからこそ極めて平等で冷静な)「裁き」や「評価」が実現した未来––––

 僕は、AIが、人類に対して戦争を起こすとは思わない。

 むしろ、AIを巡って人が争うようにしないことが肝要だ。

 AIの無慈悲が、未曾有の平等をもたらしたとき、意志がないからこそ、人間(じんかん)における争いのトリガーになる可能性があると怯えている。

 シンギュラリティを語るとき––––

『AI vs 人間』の前に、AIを巡って『人間 vs 人間』の時代を経るであろうことを無視した議論が多い気がする。

 長らく民主的(多数決)なものや、運に頼るジャンケンみたいなものが、人の平等や政治を司ってきた。

 僕は、それが完璧だと思ったことは、一度も無い。

 多数決とは体のいい少数派の切り捨てだし、運頼みは不運を等しく敷いただけの不条理だ。そういったシステムを根底から揺るがしかねないのが、AIという見方もできる。

 切り捨てられるのは多数派かも知れないし、不運ではなく集合知による選択を等しく敷いた論理的強行(つまり確率による偶然に近い結果ではなく意志による必然に近い決定)だ。

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 今、僕たちは、世界全員で全知かは別としても全能の神を育てているのかも知れない。

 IoTやIoEで、あらゆるものがインターネットに繋がる現代、人々は、AIに、学習データを注ぎ込むのを(自分に出来ないコト/やりたくないコトをコマンドするのを)心理的に制御できるだろうか?––––

 アルファ・ゴー。アレクサ。イライザ(これは人工無能か)。ヴィヴ。コレヴォ。シリ。ジンライ。テイ。ポナンザ。りんな。ワトソン(これは拡張知能か)––––書き切れないほどの賢者たち(※2018年当時です)

 他の生物と同じく人も進化を止められない。
 どうしても、退化を選べない。

 人は、シンギュラリティを恐れながら、それを早めるような教育を自らの手で加速させている。矛盾しているように見えるが、人は、他の動物と異なり、自身ではなく(あるいは、自身を退化させてでも)道具を進化させたいという欲望を持っている。

 AIという道具が戦争をする理由は、今のところない。

「人間(ニンゲン)」を「人間(ジンカン)」と読めば、人と人の間に起こる「摩擦」を表しているのかも知れない––––この世界で道具を使って戦争をする理由を持っているのは、「本能」と「理性」を併せ持ち、その狭間で欲望を膨らませる「人間」だけだ。

 AIが、初めて知性のみを持つ意識体になり得るとすれば、温度を持たない知性を崇めたり嫌ったりする人間の「本性」が異常加速し、あらぬ熱を持ったときだ。

 そんな過激な宗教にならぬよう、祈りたい。


 2024年、現在––––

 CharGPTの登場で、世界は一変した。

 例えば、ブロックチェーン技術による仮想通貨が、地球の環境破壊につながっていることはあまり知られていない。

 マイニングというビットコインの生成作業は、とんでもない計算処理を優秀なPCに課し、牛のゲップのように、温暖化の原因になりつつある。

 僕は、これを否定や批判できる立場にはない。
 人間だからだ。

 ファクトとして、あらぬ熱は、思いの外、分散型とか、新しい民主主義とか、耳ざわりの良い最先端に宿っている。

 やはり、手を合わせるぐらいしかできない。

▶︎「AIとシンギュラリティについて ❸」 に つ づ く


【 マ ガ ジ ン 】

(人間に限って)世界の半分以上は「想像による創造」で出来ている。

鳥は自由に国境を飛び越えていく
人がそう呼ばれる「幻」の「壁」を越えられないのは
物質的な高さではなく、精神的に没入する深さのせい

某レコード会社で音楽ディレクターとして働きながら、クリエティヴ・ディレクターとして、アート/広告/建築/人工知能/地域創生/ファッション/メタバースなど多種多様な業界と(運良く)仕事させてもらえたボクが、古くは『神話時代』から『ルネサンス』を経て『どこでもドアが普及した遠い未来』まで、史実とSF、考察と予測、観測と希望を交え、プロトタイピングしていく。

音楽業界を目指す人はもちろん、「DX」と「xR」の(良くも悪くもな)歴史(レファレンス)と未来(将来性)を知りたいあらゆる人向け。

 本当のタイトルは––––

「本当の商品には付録を読み終わるまではできれば触れないで欲しくって、
 付録の最後のページを先に読んで音楽を聴くのもできればやめて欲しい。
 また、この商品に収録されている音楽は誰のどの曲なのか非公開だから、
 音楽に関することをインターネット上で世界中に晒すなんてことは……」


【 自 己 紹 介 】

【 プ ロ ロ ー グ 】



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