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療養型病院でのST長期実習体験記

コロナ禍により、実習が中止になることが相次いでいるようですね。

実習ではとてもたくさんのことを実際の臨床の場で学ぶことができるので、その機会が奪われてしまうのは残念でなりません。

そこで、参考になるかはわかりませんが私が学生だった頃の記憶をほじくり返して、実習体験記を書いてみたいと思います。


私の長期実習は、1回目は療養型病院で慢性期、2回目は大学病院で超急性期とかなり貴重な体験をさせていただきました。

今日は1回目の療養型病院でのお話です。


私が行った療養型の病院では、数ヶ月〜年単位で入院されている患者さまが大半を占めます。

外来リハビリも、全員が数年単位とかなり長いスパンで通われている方々でした。


リハビリスタッフはPTが十数名とOTが数名、STは一人職場といった環境で7週間の実習が開始。

その当時、経験年数13年目くらいだったSTが私のスーパーバイザーです。

バイザーは、とても美人で周りとのコミュニケーションも上手、その上優しいというかなり恵まれた方だったと思います。


ただし、PTの科長はめちゃくちゃ怖かった!

今でもはっきり覚えています。
パーキンソン病の患者さまのPT見学をさせてもらっていた時、

「この人の重症度、わかる?」

と聞かれ、

「わかりません、調べてきます」

と答えると…

「重症度分類も知らないのに見学してるのか、話にならない!」

なーーーんてかなりの剣幕で怒られた上、リハビリ室を追い出されましたね!

実習が中止になるんじゃないかと怯えながらバイザーに報告すると、科長は大体そんな感じだから大丈夫だよ〜と笑顔で言われて心底安心しました。

ただ、それだけで終わらず、

「でもこのあとの対応が肝心だよ。これからどうしたらいいと思う?」

と、しっかりその後にやるべきことを一緒に考えくださり、A4のレポートにパーキンソン病のこと、重症度分類のことをまとめて次の日科長に提出しました。

その一件のおかげか、科長からも見学するか等なにかと声をかけてくださることが増えた気がします。

【やってしまったことはしょうがない、その後どう動くか】を身をもって体験できた出来事でした。

正直、科長に話しかけられる度に内心びくびくドキドキしてましたけどね。笑


そしてもう一つ、印象的だったことがあります。

ある日、流暢性失語症で外来リハビリに通われていた方を症例担当にさせていただくことになりました。

そこでバイザーから与えられた課題がその実習で一番大変なものでした。

その課題は、検査中の患者さまの発話を完璧に一字一句逃さず書き取ること。

流暢性失語の方は基本的に発話量がとても多いですが、その患者さまは今10年間関わってきた患者さまを思い返しても、どの方より群を抜いて発話量が多かったんです…!

発話速度も早かったので、1回で書き取ることはもちろんできず…

そのバイザーは検査を必ずビデオ撮影するという方針だったため、実習後も残ってずーーっと聞き取って⇨書き取りを繰り返しました。

特に漫画の説明なんて永遠に続くんじゃないかってくらい話していて、気が遠くなりそうでした。


ただ、発話内容を全て書き取り視覚化した上で考察ができたため、

失語症状がかなりクリアになって見やすくなりましたし、理解が深まったおかげでプログラムを立案しやすかったです。
あと、その患者さまの発話傾向が理解できたため、訓練時のコミュニケーションがスムーズにいきました。

大変でしたが、やはり意味のあることだったんですね!(当たり前)


その他にも、パーキンソン病の患者さまの嚥下リハでは時間の流れがゆっくりすぎて何度も夢の世界に引っ張られそうになったり…

右片麻痺になると左手だけでシャンプーボトルをなかなか押せないことに初めて気づかされたり…

本当にかけがえのないたくさんの経験をさせていただきました。


後日談ですが、実習が無事終わり、国試もなんとか合格、就職間近となった日にこの時のバイザーから小包と一緒に手紙が届きました。


そこには

「国家試験合格おめでとうございます。これからは同業者ですね。私が就職した時、バイザーの先生から責任を持って出勤印を押してくださいと印鑑をいただきました。印鑑はもうお持ちかもしれないと思い、その言葉と一緒に、ささやかな物を送らせてください。頑張ってください」

と大体このような内容が記されており、皮の名刺入れが同梱されていました。

嬉しかったし、身が引き締まる思いでした。


よい方に担当してもらったなぁと今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、療養型病院での比較的ゆったりとした?実習生活を過ごしました。

次回は、大学病院での全く真逆の目が回るような実習生活を書いていきます。

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