見出し画像

ぼくたちの会社の”給与”の種類が多い理由

立ち入った話になるが、オシロ社の社員の給与は多い。多いと言っても、金額の話ではなく、給与の種類が多いのだ。

どんな給与があるのか、代表的なものをいくつか紹介しようと思う。

野菜給

みんなが楽しみにしている月曜日。毎週オフィスに無農薬野菜が大量に届き、社員は1回につき4〜6品を受け取ることができる。

もともとは個人的に食べていた無農薬野菜を社員にもビタミン豊富な無農薬野菜を食べてもらいたい、健康であってほしいと思い、2017年創業時から続けている野菜給という名の福利厚生制度だ。

当初社員は数人だったので野菜を購入する金額も微々たるものだったが、いまでは社員も増え、野菜だけで年間数百万円購入している。あまりの金額の多さに、以前オシロへ投資検討中の投資家の方から「帳簿にあるこれだけの金額の『野菜』って何ですか?」と聞かれたほど。「野菜給」について説明したところ、「すばらしいですね」とその質問をされた方は株主になってくださった。われわれが売上よりまず最初に従業員の健康と幸せを追求していることに共感いただけたのはとても大事なことだと思っている。

社員からも野菜給はとても好評で、「こんなに味が濃くて美味しい野菜は食べたことない!」という声があったり、おすすめの食べ方などを交換し合ったり、社員間で感想を共有し合い交流が生まれている。なにより、ビタミン豊富な野菜を食べ、みんな元気なのだ。

オフィスカフェスペースのカウンターに無農薬野菜がずらりと並ぶ光景は月曜日の名物

芸術給

ほとんどの社員が利用している「芸術給」。日本を文化芸術大国にするというミッションを掲げるオシロにとって、社員が文化芸術に触れることはとても自然であり、意味深い。

そこで毎月3万円まで、アートや文化に触れる費用を負担している。対象は美術館や映画、舞台、音楽ライブ、スポーツ観戦、小説やマンガはもちろん、ちょっと前にファッション(ただしファストファッションは除く)も対象になるなど多岐にわたる。

アーティスト・クリエイターさんをリスペクトすることはいうまでもなく、文化芸術で心の栄養をとってほしい、という思いから始まった。

「芸術給」は、アートや文化に触れた感想をレポートに書いて社内でシェアすることになっている。一人で楽しむのもいいが、みんなと分かち合うことも大切だからだ。ただの感想レポートというより、写真とともに文章も熱量や気持ちが込もっているものが多い。ちなみにこのレポートは「OSIRO」を社内専用コミュニティツールとして使用しており、そこにブログ記事として投稿される。

オシロ社内コミュニティを「OSIRO」を使って実現している

この「芸術給」があることによって同じ映画を映画館で3回観たという社員もいるし、舞台はチケット代がネックにならず観に行けることを喜ぶ社員、若手デザイナーが独立して立ち上げたファッションブランドを応援したいからと購入する社員もいる。また、幅広いジャンルが対象になっているからこそ、自分がこれまで気になっていたものの挑戦できていなかったジャンルや、体験したいと思っていたけれどなかなか手が届かなかった芸術文化を経験する後押しにもなっている。

パフォーマンス給

アスリートはコンマ1秒を追求する。ビジネスサイドであっても同じマインドでいたい。一人ひとりがパフォーマンスを最大化してほしい。そんな思いから生まれた「パフォーマンス給」は、業務上パフォーマンスが上がるモノに対して、一人あたり年間10万円まで使える制度だ。(※芸術給年36万円のうち)

オフィスで使うモノだけでなく、心身を整えるモノまで幅広く活用できる。たとえば仕事で使う道具(打ちやすいキーボードやノイキャンヘッドフォンなど)から、体温調節のために使うもの(防寒具、インナーなど)、睡眠の質を高めるもの(マットレスや枕など)、アウトドアギア(週120分以上自然に触れることを推奨しているため)などが対象だ。また、モノではないがサウナもOK。

さらにオフィスから2キロ圏内に引越す場合は、引越し代も対象となる。その理由は、次の「徒歩給」で。

徒歩給

オフィスから2キロ圏内に住んでいる正社員は、家からオフィスまで歩いて来ると、毎月2万円の手当がある。

また勤続年数が増えるごとに月々3300円が追加される「1up」と呼ばれるオプションがあり、たとえば3年経っていれば「3up」するので徒歩給は約3万円/月となる。現在7年勤続の社員は「7up」し、約4万3300円/月もの徒歩給がある。

芸術給、パフォーマンス給、徒歩給などなど計算が複雑なため経理メンバーや社労士さん泣かせなのだが、この制度はわれわれのアイデンティティともいえる。できることならやめずに続けていきたい。バックオフィスのメンバーのおかげさまで支えられている制度であり、管理方法は常によりよい方法に改善できればと思っている。

なぜ徒歩通勤にこだわるかと言うと、駅を使わないこと、満員電車に乗らないことでMP(マジック・ポイント)が減らないから(笑)。あとは朝日を浴びながらウォーキングをすると自律神経が整い、心身の健康やパフォーマンスにつながるからだ。ぼく自身も、なるべくオフィスから徒歩20分ほどのところに住むようにしている。

銭湯給

その名の通り、銭湯に行く費用を会社が負担している。なぜ銭湯?それは、銭湯の文化を残したいから。もうひとつは、日々の疲れを取るために、交代浴をしてほしいから。アスリートが行う疲労回復の方法が交代浴ということを知り導入した。なお銭湯給は、別名「交代浴給」とも言われている福利厚生制度。週一回使える。同じく運動して健康であってほしいという思いから区のフィットネス施設に週一回いける「運動給」というものも別にある。

はちみつ給

最近できた「はちみつ給」は、風邪をひいたときに風邪薬の代わりにはちみつを舐めて治してほしいという思いから始まった。昔の人ははちみつを薬としていた。ということで、はちみつ購入を推奨する福利厚生制度。

ちなみに殺菌能力の高い、加熱処理をしていないトゥルーハニーの生マヌカハニーを推奨している。このはちみつとは別に、冬はオフィスのカウンターに常備してあるマヌカハニーのど飴がなめ放題になっている。

鉄給

もうひとつ最近できた「鉄給」は鉄分をとるための制度で、日本人は世界的にみて鉄分が不足しているといわれている。パワーがでない、疲れやすい、朝起きれない、疲労感が抜けない、イライラしやすいなどは、鉄分不足の可能性がある。そのため鉄分を積極的に摂ってほしいと思い生まれた福利厚生制度。ただしサプリ以外で、という制約がある。

このように代表的な給与と最近追加されたものまでほんの一部を紹介させてもらった。この他にも、部活動に部費がついていたり、ひげランチ(社長とさしで寿司ランチ)、ダイアローグ・ランチ(社員同士のさしランチ費)、ダイアローグ・ナイト(社員同士3人以下の飲み会費)などなど、独自の制度がたくさんある。

社員の健康と幸せのために

そもそも、なぜここまでやるのかというと、社員は家族であるという思想が根底にある。
そこまでやるって偏愛ですね。といわれたことがあるのだが、どちらかというと、無理しているというよりは、こうあると楽しいかなという具合に自然と生まれ、活用されているといった方がいいのかもしれない。

創業時は「社員は家族」というふうに考えていることを言ったらいけないと思っていた。自分には子供がいないこともあって、社員を勝手に自分の家族のように思っていた。実際それをいったら気持ち悪がられるかなと。しかし、セールスフォースの創業者であるマーク・ベニオフさんが、ハワイ語の「オハナ」には広い意味で「家族」を意味し、社員を家族と考える文化があると言っていたことを知り「あ、言ってもいいんだ」と以来ぼくも公言するようになった。

家族であれば健康であってほしい。家族であれば芸術文化に触れてほしい。さらには幸せであってほしい。当たり前のことだ。それなら給料として3万円増やせばいいじゃないかと思われるかもしれないが、思い返してほしい。給料が上がったからと言って、無農薬野菜を買って食べられるだろうか?芸術文化に捻出できるだろうか?

若い頃は健康に気をつけなくてもある程度は保てる。だが、仕事が楽しいからといって、食や文化的栄養を取らないまま仕事に没頭してしまうと、いつか身体も心も支障をきたす。そんなことがないように、仕組み習慣としたいから。

社員の健康と幸せのためには、まずぼく自身が健康かつ幸せであることが必要不可欠であり、そうして初めて社員たちも健康で幸せになれ、その集合体として会社が幸せであるといえる。だからお客さまや株主を幸せにできるのだと。

そしてぼくが目指しているのは、クリエイティブでいられること、クリエイティブなメンバーで構成されたクリエイティブな組織をつくることだ。そもそも「クリエイティブ」とはなんだろうか。次回はそのことについて伝えたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?