おさない えりか

9のつく日エッセイ✏︎ 映画『あちらにいる鬼』『私たちの声』 ドラマ『名建築で昼食を … もっとみる

おさない えりか

9のつく日エッセイ✏︎ 映画『あちらにいる鬼』『私たちの声』 ドラマ『名建築で昼食を 大阪編』『我らがパラダイス』舞台『哀を腐せ』出演中 http://instagram.com/erika_osanai ノンフィクション映像制作よんななhttps://yonnana.today/

最近の記事

楽しい時間よ、そんなすぐ去らないで

今年史上最速だった9月が終わろうとしている。 年齢と共にどうして時間を早く感じるのかという話で、10代の時にある著名人(20年も前のことのため私の記憶違いでその人じゃなかった場合を想定してあえて「著名人」)が言っていたことが一番腑に落ちていて、時の早さを感じる時はいつもその人の話を思い出す。 この話を聞いた時、私は確か10代前半だったから、そんなに経験値があるわけでもないくせに、比べものにならない経験値のその著名人の言葉に生意気にも納得していた。それから時の早さの話になる

    • 常連の女川でポンボールイベント

      宮城県女川町という場所にはダイビングで何度か訪れている。今年の5月にはダイビングが趣味の友達に女川の海を知ってもらいたくて一緒に潜りに行った。案の定、彼女は女川を気に入った。海だけじゃなく、お店、食べ物、空気、人を大好きになっていた。自分の好きなものを友達も一緒に喜んでくれるから、私もさらに女川を好きになった。 そんな女川で「ポンボールイベントやりませんか?」という話になり、日にちもすぐに決めて協力してくださる仲間ができた。女川に詳しい人たちばかりだからとても心強く、かなり

      • また一つ歳を重ねることができて

        誕生日って昔は親に祝ってもらうのが当たり前の行事の一つだった。でも上京してからは当たり前のように親も居なくて大好きな地元に居ることもない。離れてるからこそ生み育ててくれた親と出会ってくれた人たちに心から感謝できるという良さもあるけど、直接言えないもどかしさがあった。 いつどうなるかわからないと思って生きる時間が長くなると、そこに疑問を持ち始める。仕事とかで不可能ではない限り、思い立ったことはやるようになった。今年の誕生日は土曜日だから、親も友人も時間を合わせやすい。 という

        • 言語化できないよ、できないけどね

          ってまた誰かの台詞に近い言葉があるとそれっぽく言いたくなる。稽古中から本番までずっと会話の中で誰かが誰かの台詞を言う時間がたくさんあった。こんな経験は、たぶん初めてで。仲良すぎるし。でもそれくらいみんながみんなの台詞を聞いてるってことで、それくらい谷さんの書く台本の言葉が日常的ってことでもある気がする。あと、全員がずっと舞台上にいるワンシチュエーションのものって意外となくて、だから自分じゃないシーンとかあんまりないから、本気でずっと人の言葉を聴いてたんだなぁって終わった今冷静

        楽しい時間よ、そんなすぐ去らないで

          初日の幕が、開いた

          何年か前に客席に座っていて幕が開かなかったことに遭遇したことがある。舞台の幕が開くというのは当たり前のことじゃないってわかってたけど、3年前からはよりシビアになっている。 いつからか舞台の幕は「開く」ものから「開ける」ものになってきた気もする。みんなで気をつけつつ精一杯の想いで開けて「初日おめでとうございます」の習わしな挨拶に気持ちが込められるようになった。ここにはご時世のおかしな話もあるんだけど、そんなおかしさを吹っ飛ばしてくれる初日の幕が8月17日に開いた。 今回は劇

          初日の幕が、開いた

          同じTシャツを着てる人に遭遇した真夏日

          来週舞台の本番のため、真夏の稽古の日々。稽古場に近い駅よりも乗り換えのなさを選んだ結果、駅から徒歩10分ちょっとを「歩くサウナ状態」で通っている。カフェとか室内に入る時は冷房対策で上着を持参するけど、日々稽古の今は毎日半袖が当たり前になっている。 ある日、今年ボブ・ディランのライブで購入したTシャツを着て家を出た。ライブグッズというのはなかなか普段外で着ないけど、このTシャツに関しては普段使いできるくらいライブグッズ感じゃなく、バンドTシャツ感覚で着れる気がしてこの夏よく着

          同じTシャツを着てる人に遭遇した真夏日

          耳をつけるのはこわいけど、海が好きで良かったこと

          私にとって海は毎日見ていたものだった。当たり前に見ることができていた。家の窓からは明石海峡大橋が見えて、淡路島が見えていた。「あ、今日はレインボーだ」って橋の色の変化を楽しんでいた。それが当たり前だったことすら忘れてしまう今の日常。でも、まだ、全然まだまだ、その当たり前だった時間の方が倍くらい長い。 地元の神戸という街は電車が北の山側、南の海側の間を西東に直線で走っている。そのため電車内の左と右の窓で景色が全く違う。たまに帰ると海側を見つつ、山側にポツンと浮かぶ母校を見つけ

          耳をつけるのはこわいけど、海が好きで良かったこと

          今年も富士山に登れなかった

          2020年に登ろうとしたけどコロナ禍になり断念。去年は腰痛で断念。富士登山とは無縁の人生なのだと諦めかけていた頃、小学校の友人が3度目の富士登山をしたいと言い始め、私の日程に合わせて一緒に登山することになった。経験者が一緒なのは心強い。 大体の予定が見えて日にちを決め、小学校の友人の友人数名が関西から、私の友人と東京からと西から東から富士山に向かうことになった。そこに向けて、運動量を増やしたり、用具を揃えたりしていた。 登山予定日の3日前、毎週の柔術があったけどこの日はい

          今年も富士山に登れなかった

          秋田で一息ついてポンボールで「十息」③

          秋田駅から歩ける範囲に秋田県立美術館がある。「安藤忠雄建築っぽいな〜」と思ったらやっぱりそうだった。過去にも書いた安藤忠雄建築、コンクリート打ちっぱなしでも人を引き寄せる温かみのある建物は前にも来たことあるような気持ちになるのも好き。 この美術館のシンボルでもある藤田嗣治の大壁画『秋田の行事』は圧巻と同時に、秋田の良さと誇りがこれでもかってくらいに伝わってくる気がした。地元の営みを絵画で見たことがないから、かつての歴史としてもこんな大きな作品で残っていることが羨ましくもあっ

          秋田で一息ついてポンボールで「十息」③

          体験は新視点と敬意が生まれる②

          前回に引き続き、あれもこれもの欲張り幕の内弁当日記でお届け。 秋田2日目。zoomでしか会っていなかったマティログさんとついに初対面。いつも時代についていけなくなる私が、会わずとも企画や仕事ができる時代に少し乗っかれた気がした。 朝早かろうが最高潮にテンション高いマティログさんに「やっっっと会えましたね!」と言いながら高揚していた。やっぱり画面より目の前で会う方が性に合っていることも気づけた。 秋田がガラスで有名なのも知らなかったけど、この日は新屋ガラス工房で吹きガラス体

          体験は新視点と敬意が生まれる②

          初めての秋田でたくさんの人の愛を受けて①

          「なんで秋田?」 関東関西の友人たちに散々言われた。私も不思議である。でもご縁とタイミングとしか言いようがない。行ったこともない秋田県。でも4月に秋田の飛良泉本舗という酒蔵がお酒を送ってくださり、あまりの新しさに感激し「秋田に行きたい!」という気持ちが高まっているタイミングでzoomで紹介していただいた秋田在住のマティログさん。名前もノリも正直少し胡散臭いと最初は思った。でも日本酒のソーダ割『ポンボール』のイベントを「来月、秋田でやりましょう!」と言ってくださり、その次には秋

          初めての秋田でたくさんの人の愛を受けて①

          急遽の予定変更が拍手になったあの時間

          前回の、並んでも舞台を観れなかった日。時間が空白になってしまったため、私と友達は急遽予定を変更することになった。 さて、どうしよう。 私たちの「何かを観たい」欲は映画に向いた。私たちには制限時間があったが、それまでに堪能できそうな映画を選んで向かった。 その前にどうしても糖分が欲しかったんだろう。並び疲れたからか、ブラック派の私たちがホットのカフェオレを買った。梅雨の冷たさと舞台観れなかった空虚感の身体にあったかさが沁みて、ほのかな甘さに安堵した。 最寄り駅に着いた瞬

          急遽の予定変更が拍手になったあの時間

          行列に惑わされながら

          友人と観たい舞台の当日券を並んだ。開演45分前に販売開始だったので、私たちは1時間前に行ったが甘かったらしい。すでにあるかなりの行列に足がすくむ。 場所は横浜だった。東京から離れるということと、道中の会話だけで心は満たされ「今日舞台観れても観れなくてもどっちでもいいね」とすら言い合っていたのに、その30分後、行列を目にした私たちは「どうしても観たい」に変わっていた。 「行列」というのは不思議な力がある。10年近く前、表参道の長い行列の最後尾の女性に「何に並んでるんですか?

          行列に惑わされながら

          一人じゃない散歩でわかったこと

          私は道を選べない。行き先を選べない。 気づいたら方向が決まっている。 私の一歩は無意識に相手より少し後ろで、相手の向かう先に無意識に合わせている。だから気づいた時には曲がっているし、思いがけず立ち止まっていたりする。 どうやら散歩中の会話もそうらしい。私は話したいことが特になければ、ずっと聞いていたい性分なのかもしれない。相手が歩きながら、歩く速度に合わせながら話してくれるのが心地よくて、余計に私の一歩は少し後ろのままになっている。相手の話に乗っかりたいし、乗っかれるネタ

          一人じゃない散歩でわかったこと

          ボブ・ディランとエリック・クラプトン

          私はライブ情報に疎い。行った人の話を聞いて「知ってたら行きたかった」という経験が何度もある。駅のポスターで知れても、どうせチケット取れないだろうと調べもせずに身を引いてしまう。調べる時点で「あるといいな」という願いも自然と込められるから、がっかりするのがいやで「調べない」という選択をしている気がする。でも去年、念願のシガーロスとマルーン5のライブに行けたことで、ダメ元で調べると取れる希望を知れた私は「ライブ」に対して意欲的な2023を意識している。その意欲は毎朝聴くラジオで発

          ボブ・ディランとエリック・クラプトン

          ポンボール飲む皆さんの笑顔が素敵だった

          ちょうど1週間前の4月22日、世界初のポンボールイベントを開催した。「世界初って大袈裟な」と思う人もいるかもしれない。自分でも思う。でも今まで日本酒をソーダで割るイメージがなかったからか、来場された皆さんのリアクションで大袈裟なくらいの「初」感を感じられた。 日本酒には根強いイメージが様々にある。中でも、誰にも言われてないのに「日本酒は割って飲むものじゃない」という謎の暗黙ルールがある。私も2年前まで割るのは何かに対して失礼な感覚があった。イベントに何も知らず来た方も「え?

          ポンボール飲む皆さんの笑顔が素敵だった