友達の子供の名前が日本酒の銘柄
もちろん、たまたまだし、読み方も違う。
まだ名前が確定していない妊娠中に、候補としてその名を教えてくれた。私は思わず、
「え、私が好きな日本酒の名前と同じ漢字やで!」
と言った。
しかもそれはただ好きってだけじゃなく、上京して初めてのバイト先で出会い、その味とストーリーに惚れた日本酒だった。いつか酒蔵に行きたいと思っていたくらいずっと印象に残っている。
メニューにあったら必ず注文するけど、飲食店ではなかなか出会えない一本でもあった。
かつてのバイト先でお客様におすすめを聞かれたら、その日本酒をよく勧めて
「家族でやっている小さな酒蔵なんです」
と必ず一言添えていた。
今ではそんな酒蔵も知れたけど、大衆酒のイメージがまだ残っていた当時は、家族でやっているというのが尊くて、勝手に誇らしげに説明していた。
そんなもんだから、友達にその名を聞いた時は走馬灯のようにこれらのエピソードが蘇った。
出産後、子供の名前がその名に決まったことを知った。先週会えた時には、漢字で前から知ってたからってお節介にも「やっと会えたぁ〜」という気持ちのまま抱っこしていた。
まだ首も座っていないから泣かないか心配しながらもずっと抱っこしていたかった。
そしたら泣くどころか笑ってくれて、
「笑ってるー!てか慣れてない?」
と親2人に言われた。
母親役をやるようになってから10年くらい経つからかなと思い、自分の人生の蓄積を不意打ちで感じさせてもらった。
その後みんなでワイワイご飯を食べている時、私の隣で大人しく座っているその子は私の顔をじっと見て笑っていた。親2人とも
「こんなに人の顔見ることも笑うこともないよ」
とか言うから、すごく嬉しいけど
「この中で一番私が年齢近いって思ってるからだよねー!」
って私よりはるかに大人に感じるスーパーサラリーマンの友人たちを前に、本気でそう思って笑いながら言い続けていた。
一緒に酒蔵見学に行ったり、今まで何度も日本酒を酌み交わした大切な仲間。久しぶりにみんなで集まれた歓びに、癒しが加わって、この上ない幸せなひと時を過ごさせてもらえた。
それで終わらないのが親子のすごいところ。
「えりかちゃんのこと好きすぎて、たぶん今まで会った人の中で一番笑顔振り撒いてた!笑」
と言ってくれた。
そんな嬉しいことあるのか?!
たまたまだとしてもとても感動した。
翌日も
「えりかちゃんの写真見せると朝から喜んでる。笑
0歳児から完全ロックオン。笑」
と連絡をくれた。
0歳児にモテて私は自信をもらった。
名前だけじゃなく漢字も忘れられない友達の子供。また会えた時には大きくなってるんだろなぁ。どんどん年齢が近づくぞ、と自分の年齢も重なることをどこかに置いて楽しみになっている。
読んでいただき、ありがとうございます! 子どもの頃の「発見の冒険」みたいなのを 文章の中だけは自由に大切にしたくて、 名前をひらがな表記にしました。 サポートしていただけると とっても励みになります。