健康に生きるまでの道のり。
恐怖の内視鏡検査⭐︎後編は上部内視鏡検査、いわゆる胃カメラ検査。
とつぜんだが弊社はとても内視鏡検査を体験している人間が多い。前回、大腸カメラの検査をした際にこれはとてもじゃないけど耐えられないと震えたので、今まで胃カメラをしたことのある人に手当たりしだいに聴きまくった。
「鼻からだったら楽、寝てるだけで終わる」「口からのほうがカメラが大きくて性能がいい、早く終わる」「どちらにしろ涙と鼻水と唾液でぐちゃぐちゃになる。覚悟しておけ」「麻酔が効かなかったから激痛だった」「いざカメラで見てみると胃の穴が修復された跡があった」…。
やめて!やめてこわい!だがとりあえず「胃カメラは口から入れるのと鼻から入れるので選べる」、そして「口より鼻からのほうが楽」という二つのファクトは間違いないようだ。よし、入れるのは鼻からにしよう。嗚咽よりは鼻水の方が我慢できると思うし。カメラも細いだろうし。よし。
ここで手に持っていた同意書を確認する。すると、内視鏡は口から入れますとしっかり明記してあった。うそだろ。わたしには選択の余地すらないのか。
絶望に打ちひしがれながら、当日。朝の7時に起きて付き添ってくれた祖母と病院へ。出勤時間より一時間半はやい。通勤ラッシュで心が死ぬ。
息切れしながら待合室へ。いつも思うけど、消化器内科にかかっている人は多いなあと思う。以前、祖母の放射線治療に付き添ったときは2〜3人しか待っていなかったのに、消化器内科のそれは30〜40人ほど。わたしは検査だったので別ルートの受付だったのだけれど、診察になると二時間待つのなんてざらだ。故に、患者も、付き添いの家族も、フラストレーションがたまっている。
病院の待合は空気が悪い。待ち時間があればあるほど、心ぼそくなればなるほど、人間というものは精神的余裕がなくなっていく。それを横目でみて、わたしも例外じゃないな、気をつけなくてはと思う。あー。もう病院きらいだ。
「検査でお待ちの3049番さん、どうぞ」
番号で呼ばれるのも慣れたもの。待合室にいる人々の視線を真に受けながら検査室の扉を開けると、パイプ椅子が一脚、もしわけなさそうに置いてあった。
「はい、かけてくださいね。きょうは胃カメラはじめてなんだよね、がんばろうね」
と可愛い看護師さんがやさしく諭してくれる。好きになっちゃうからやめてくれ。
まず、胃の働きをよわめる薬を飲む。にがいともすっぱいとも言えない変な味で、まずい。くちのなかににょーんと広がる感じがいやだ。うう。すでに心がぽきっと折れかけている。そのあと、間髪入れずにのどの麻酔をする。スプレー式で、いわゆる「のどぬーるスプレー」みたいな感じだ。6シュッシュくらいされて飲み込むと、歯医者さんの麻酔みたいに、くちのなかがぼわ〜んとなった。舌でくちのなかをさぐると変な感じ。ぼわぼわ、ぼわぼわ。飲み終わると、すぐに検査室に案内された。
担当してくれる技師アンド看護師さんは、大腸カメラと同じ人だった。お互いに「またお前か!」という雰囲気になる。なんとなく安心。ベッドによこになり、脈をはかる機械を指先にはめる。脈拍は80くらいで、まあまあ落ち着いていた。
「小林さん、今日は大変だけどがんばろうね。胃カメラがスムーズにいくコツを今から伝授します。それは、とにかくチカラを抜くこと。よく目をつむっちゃう患者さんがいるんだけど、目を瞑るときゅってなって筋肉に力入っちゃってのどの気管が狭くなっちゃうからね、とにかく、焦点を合わさず、体を楽にすること。のどの筋肉が張っていたり、カメラに舌が接触したりするとおえーってなっちゃうからね」
検査の前に散々脅されてビビりまくる、でももうやるしかない。口にマウスピースみたいなものをはめられ、テープで固定される。「じゃあ入れますよ〜」と技師さんが管状のものをぶんぶんふりまわしてた。さながら妖怪人間ベムのベラがムチを振り回すみたいなかんじで。(ベラのムチは痛いよ!)しかもよく見たらカメラの先端が光の三原色でピカピカ光っている。なんだこれは。クリスマスか?そんなふざけた考えもつかの間、地獄をみることになる。
最初がとにかくしんどかった。深呼吸にあわせて技師さんがカメラを少しずつ入れていくのだけれど、しょっぱなからカメラが舌先にふれて、嗚咽がもれる。吐き出したくても吐き出せないしんどさといったらない。うっ、うっううとくぐもったうめき声が検査室に響く。「いったんカメラ止めます、小林さん、鼻から深呼吸しましょうね」看護師さんに背中をさすってもらう。この時点で涙がとまらない。生き地獄である。
落ち着いて、カメラ入れて、嗚咽がひどくて、また止めて、の繰り返し。ようやく胃に到達するころには、もう憔悴しきっていた。
「小林さん、胃がとてもきれいだよ〜。あとちょっとで検査おわるからね、よくがんばったね〜」という技師さんの声かけだけをたよりに意識を保っている感じだった。元気が有り余ってたら、胃がきれいなら検査する必要ないやんけ!と大声で叫んでいたことだろう。
「小林さんよくがんばったね。胃もいれいだったし、病変もないし、ピロリ菌もなかったからよかったね。つぎは鼻からやってもらったほうがいいかもね」と技師さんが言う。続けて看護師さんが笑いながら言った。
「いやいや、検査しないのが一番だから!若いんだし、ストレス溜めないようにしてね」
検査時間は体感2分くらい。しんどいものはしんどかった。でも、2人の技師さんの鮮やかな連携プレーなくては、私の体になにが起こっているのかわからなかったのだから、やはり医療従事者というか医療関係者はすごいんだよな。このひとたちは日々何十人もの検査を繰り返し担当しているにしても、そのこころ優しい言葉ひとつひとつに泣きそうになった。ありがとう、技師さん。ありがとう、看護師さん。
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地獄の内視鏡検査を二つ受けて、つぎはいよいよ検査結果。家の事情でひとりで聞きに行くのだが、なにもないことを願う。この感じだと、少なくとも胃には問題なさそうだ。問題は腸。生検でなにか原因がわかるのだろうか。わからないと怖すぎるよ。健康的な心と体がほしいな、ほんとに。
サポートの意味があまりわかっていませんが、もしサポートしていただいたら、詩集をだすためにつかったり、写真のフィルム代にとんでゆきます。