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子どもにとって安心・安全な場所はどこ? 現実と同時進行するファンタジー 『パンズ・ラビリンス』 #映画感想文

先日AIの“おはなしグプタ”さんにおすすめしてもらった『シェイプ・オブ・ウォーター』にアクセスしたら、同じギレルモ監督作品ということでこちらもサジェストが出て来て、あと3日で配信終了とあったので、こちらを先に観てみました。

パンズ・ラビリンス(字幕版)
吹替版もあります

全く前知識なしに見始めたらいきなり「12歳以下は大人と一緒に観ましょうね」の告知。これを冒頭でわざわざ表示する親切さ、誠実さ。すごく大切だと思う。一応 #ネタバレ タグを入れておこう。。。

舞台は内戦時代のスペイン。オフィリアの母の再婚相手はお偉い軍人(「大尉」がどれくらい偉いのか私にはわからんのだけど)で、共産主義ゲリラと戦ってる。産まれてくる赤ん坊は絶対に男子!と決めつけて、「男子は父親のいる場所で産まれて来るべき」という理由で臨月の母とオフィリアを紛争地域の拠点に呼び寄せ、母を大切にはするけど「産む機械」扱い、オフィリアの父親になろうなんて気持ちはこれっぽちもない。

オフィリアは森の中で迷い込んだ古代遺跡で、古代人(?)のパンと出会う。「お待ちしておりました。あなたは古代の地下王国の王女の生まれ代わり。しかしそれを証明するためには3つの“試練”を受けなくてはなりません……」
パンに渡されたアイテムで試練をこなそうとするオフィリアだが、一方で軍とゲリラの戦いは泥沼化してルールなき殺し合いの様相を呈していく。果たしてオフィリアは3つの試練をやり抜いて、母と赤子を守り、「地下王国」に辿り着くことができるのか?

あらすじ&イントロダクション

映画人や業界のことあまり詳しくないのですが『パシフィック・リム』の監督さんなのですね。ダーク・ファンタジーに分類されているだけあって、『エイリアン』とか『マトリックス』シリーズ、昔のシューティングゲームなんかも彷彿とさせる、SFと生物とドロッとした粘液とか、グロテスクさと美麗さを併せ持った、そんな感じの世界観。加えておとぎ話のゴシックテイストとも絶妙に交じり合っていて全く違和感がないのもすごい。。。(ファンや詳しい人からしたら「お前は何を言ってるんだ?」という感じでしょうけれども……)

作中、オフィリアが試練について戸惑ったり質問しようとすると、古代人のパンはそのたびに「質問なんかしてないで、いいから言われた通りにやれよ(勝手に超訳)」って言うんだけど、これもものすごいアンチテーゼですね。彼女は「いい子」なので、一応は言われた通りにやるわけです。いいの?オフィリアそれでいいの?と思いながらどんどん引き込まれてしまう。有名な日本の狂言だって、「この壺に入っているこれはね、子どもには毒だからね、舐めちゃいけないよ」って言って和尚さんは出て行って、留守番の小僧は舐めてしまうわけですが、普段我々はもう小学校から社会人になってまでも「まずは言われた通りやってね、マニュアルを覚えてね、自分で考えるのはその後ね」なわけです。『ラプンツェル』なんかは閉じ込められた塔から出ていくわけですが、この物語の少女は閉じ込められた場所から出て別の迷宮(しかも地下の!)に入ろうとしているわけで、そのために試練まで受けようとする。そうまでして今いる場所から離れて「地下王国」に行きたいと。だから言われた通りにやろうとするのかもしれません。
戦争という現実のなかに空想を見出すのは『アンネの日記』が有名ですが、オフィリアの古代王国と古代人パンは彼女の“現実”のなかに存在し、物語は彼女の現実のなかで進んで行きます。しかし、3つ目の試練、最後の局面では「言われた通り」が通用せず、自分で考えて決断しなければならなくなります。

再婚相手の軍人が清々しいまでの悪役かと思いきや、何度もふとした一瞬の迷いがあり、それを振り切って“悪の道”を進んでいくのとか、側近の人は大尉を裏切るのか、それとも裏切らないのか、結局どっちなの?と最後までずっと引っぱられるのも見事でした。ダークだし地味なんだけど、観てよかったな。でも戦場なので、拷問、外科手術、出産など血が流れるような場面もあります。描写はR12に配慮されていますが、苦手な人はご注意を。

おとぎ話に深読みしすぎかもしれないけど、これを書きながらじわじわとこの作品のよさを味わっています。これは深読みが楽しい作品。
アンデルセン童話とかグリム童話とかありますけど、これは“ギレルモ童話”なんじゃないかな……。そしてきっと反戦映画でもある。
そういえば、ゼルダの伝説『ティアーズ・オブ・キングダム』も地下迷宮に入って行く場面(イベント)が沢山ありますね。いや、あれはまた別の物語ですが、次にハイラル行くとき、絶対この作品のことを思い出すだろうなあ。
『幸福な王子』とか『人魚姫』、『マッチ売りの少女』等が好きな人にはきっとツボに入る、おすすめしたい作品です。

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