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散文

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#散文

風雨を凌ぐ

風雨を凌ぐ

乱れた髪を直してベッドから起き上がる。薄暗い部屋に散乱した服に光が差し込んでいる。扇風機は二人のいるスペースとは全く違う方角を向いて、風を送っていた。月曜日の午後、小曽根真のピアノを聴きながら、台風が過ぎ去るのを待った。腐った古木の洞に身を潜めて、風雨を凌いでいる小動物のよう。

くだらないジョークも、台風の進路も、共通の知人の話題も、古いキャベツをざく切りにして作ったsoup。いろいろなスパイス

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道裏

道裏

あなたのことを虐める人がいれば僕がその人を呪ってあげる。深い闇にひきずり込むような恐ろしい目に合わせてあげましょう。そうすることによって僕も一緒に深い闇に入り込むことになっても、あなたのことを守れるなら本望です。あなたがそのことに関して不幸に思うことはありません。あなたの目を見張るような美しさに寄り添えるだけで、幸せです。僕はもう汚れてしまった人間。あなたの悲しみをできるだけ遠くの方へ持ち去ってゆ

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閑話休題

閑話休題

食卓のテーブルに飾っているケイトウの花から種が溢れ落ちていた。小さな種。拾って翌年種蒔きをすると、立派な芽が出て、花咲かせてくれるだろうこと思うと、わくわくした。

妻が花瓶に活けてくれているタカサゴユリも、花期が終わると、雌蕊だけ残って、花弁、雄蕊、全て振り落とし脱ぎ捨てるところがなんとも面白く、世の中の男性の末路を見ているようで、私自身に準えてみても、決して笑えない姿である。

二人で楽しく、

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もやもや

もやもや

頭の中がもやもやする時には絵を描くようにしています。夢中で描いていると、頭の中がスッキリします。言葉にならない想いが言葉になり、整理出来なかった言葉が整頓されます。上手ではなくていいんだと思います。形に捉われず、夢中で描けたら。

夏の終わり

夏の終わり

夏が終わりつつあります。それは私の夏の終わりでもあります。気温、湿度、気圧、天気に心身がめちゃくちゃにされましたが、激しい恋に似て、去っていく寂しさに身を焦がしています。確実にフェイドアウトしていく夏は、私を振り回し続けたにも関わらず、たくさんの思い出と日焼けした素肌の痕だけを残して、いつまでも愛され続ける、ずるい奴なのです。