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優しさと冷たさは見分けがつかない
事件や殺人が起きるわけではないのに、とても怖い小説を読んだ。
アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』だ。
今まで理想の人生を送ってきたと思っていた主人公が、とあるきっかけから過去を振り返り「自分の人生は本当にこれでよかったんだろうか?」と振り返る話だ。
今までの自分の生き方は正しいと思っていた。人のためを思って自分のことはいつも後回しにし、相手のことを考えて、良き母親、良き妻で常にあろうと
松本清張の『青のある断層』や『或る「小倉日記」伝』のようなハッピーでもバットでもないようなエンドで、切なさがひたすら胸に迫ってくる作品もかなり好き 『菊枕』や『信号』もいい
特に『父系の指』は特別に好き 主人公の親に対する感情を考えると、いても立ってもいられなくなる
松本清張の「自分はもうこれ以上の人間になれないんだな」という同情と失望をさ、人生やり直さないと絶対に手に入らない実家の太さとか、運命とかへの反発心とセットにして表現してくるとこ、めちゃくちゃすきなんですよ
悲しみよ こんにちは
ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう。
この感傷的でうっとりする書き出しから始まる作品を、古典恋愛小説と呼ぶには少し躊躇いを覚える
わたしには17歳の少女が自分の罪を告白するような内容に思えた
法では裁けない殺人を犯した告白のような
主人公のセシルは自分の父親が軽く、享楽的な人間だと知りながら、それに伴う共犯意識が愉し