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悲しみよ こんにちは

ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう。


この感傷的でうっとりする書き出しから始まる作品を、古典恋愛小説と呼ぶには少し躊躇いを覚える
わたしには17歳の少女が自分の罪を告白するような内容に思えた
法では裁けない殺人を犯した告白のような


主人公のセシルは自分の父親が軽く、享楽的な人間だと知りながら、それに伴う共犯意識が愉しくて、なんだかんだと父親の味方をしているなあ、と思った
愉しいと思いながらも、どこかで彼に対する軽蔑が全くない訳ではないし、自分もどこか似てしまった…………と感じている


けれど、そんな父親へとある作戦を考えて、自分の気持ちを押し込めてまでも、父親を追い詰めようとするセシルに、一人の女性としての気持ちというか自立心が芽生えたのかなあ、なんて読みながら思ったのですが、最後は取り返しがつかない事になってしまう

最後にとある事件が起きるのですが、その直前に主人公のセシルが、身近にいたずっと年上の女性に少女性を見出すシーンがとても好きでした


「大人のフリが上手な人が、大人なだけだよ」なんていうキャッチコピーの映画がありましたが、セシルは大人になる前にそのことに気づいてしまったんだなあ、きっと
それに気づいたとき、父親のことはどう思ったんだろう

#悲しみよこんにちは #フランソワーズ・サガン #小説