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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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2018年8月の記事一覧

協調性から飛び降り自殺れ

協調性から飛び降り自殺れ

8月某日

15人の団体でビアガーデンへ。ほぼ初対面の人が半数。その中に私が関わっている媒体の編集者さんが偶然来ていた(私の担当では無い)のだが、話し始めて数分で私の担当者の悪口を言いだしたので胸糞が悪くなった。

ステークホルダーの前で他のステークホルダーの悪口を言う人を私は信用しない。

彼はさらに15人ぐらいの前で悪口を続けようとしたので、

「編集者さんは仕事さえできれば何でもいいですよ!

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飲み会と「パコパコ姫」とホモソーシャル 孤独よきものスイミーのごとく

飲み会と「パコパコ姫」とホモソーシャル 孤独よきものスイミーのごとく

8月某日

佐々木ののかちゃんと占い師のシュガーさんと桃山商事の清田さんとニット作家の横山さんと、新宿の池林坊で飲む。「この人はどうしてこの店で働くに至ったのだろう?」と背景を想像してしまうような店員さんばかり。カツオのホルモン揚げが250円で「嘘でしょ?どれだけ普段要らん部位なの」とびっくりしてしまった。

途中で、シュガーさんと清田さんが中学時代に経験したホモソーシャルの話に。2人とも中高時代

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読み手の人生観があぶり出される100%の"嫌青春小説"ー「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ)

読み手の人生観があぶり出される100%の"嫌青春小説"ー「彼女は頭が悪いから」(姫野カオルコ)

桃山商事の清田さんにオススメされた姫野カオルコさんの「彼女は頭が悪いから」(文藝春秋)を拝読する。夜22時から読み始めて気づいたら朝の6時だった。こんなに夢中で小説を読み進めたのは一体いつぶりだろう。ラストがどうなるのかを知りながらも、ページをめくる手を止められなかった。

これは2016年に世間を騒がせた東大生による女子大生集団猥褻条件をもとに書かれた事件小説である。

この作品に惹き込まれるの

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世界で一番好きな茶屋 前編

世界で一番好きな茶屋 前編

茶狂なのでコーヒーのことはさっぱりわからぬが美味しいお茶について聞かれたら自信満々に答えられる。世界で1番おいしい茶屋はどこかと問われれば、私は2つの店を挙げる。

西荻窪の「一芯二葉」と、ベトナムはホイアンの「Reaching Out」である。

「Reaching Out」は聾唖者の人々が働くカフェだ。”手を差し伸べる”という意味の店名の通り、聴覚障害者の就労を支援するNGOが経営するお茶屋だ

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カフェオーケストラ、インドの山小屋の味

カフェオーケストラ、インドの山小屋の味

私の地元、西荻窪はカレーの激戦地だ。
フレンチカレーの「Spoon」、酒とおつまみも出す「シューベル」、ネパーリーな正統派「サジロクローブ」…etc、いろいろあるけれどやっぱり私はカフェオーケストラのカレーが好きだ。

駅から徒歩5分。賑やかな飲食街を少し外れたあたりにある。重厚な木の扉を開けると、宮沢賢治とインドが融合したような不思議な世界観の店内が現れる。
一応「カフェ」と銘打ってはいるけど、

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苦労はしたい奴に配っちゃえ

苦労はしたい奴に配っちゃえ

7月某日

バー「漆黒」のマスターから突然電話があった。

「お前の友達がさ、うちに来てるんだよ、毎日みたいに来るんだよ、そりゃ嬉しいよ」

びっくりした。マスターは飯を食おうと言う。じゃあ、と言うことで米沢牛を食べに行った。久々に足を踏み入れた歌舞伎町は、私が漆黒で働いてた頃よりもさらに胡散臭くて汚かった。もちろん前だっていかがわしくて、ごみごみしていて、汚物と油と精子の渦みたいな感じだったけど

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「〇〇は男の/女の役割」なんて根拠のない妄想だ

「〇〇は男の/女の役割」なんて根拠のない妄想だ

7月某日

編み物作家でLIFE KNIT 理事の横山起也先生の講演会へ。横山先生は「編み物から考えるジェンダーとダイバーシティ」について研究していて、この日は江戸時代にいた「編み物侍」の話。
「江戸時代にはね、編み物ってお侍さんの内職として行われてたんですよ、ちゃんと資料も残ってるんです」と横山先生は分厚い資料の山を見せながら言う。
「編み物が『女のもの』になったのっていつからかご存知ですか?第

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"腰低ぶりっ子"と青姦、プロらしくしない事

"腰低ぶりっ子"と青姦、プロらしくしない事

7月某日

望月優大さんの登壇するロヒンギャ難民の報告会に参加するために田町に降り立つ。駅前のタリーズでは慶應生が山盛りテスト勉強をしていた。私がこの街の学生だった頃のことを思い出そうとしたが何も思い出せない。オフィス街はつるんとして直線しかなくって秘密のポケットなんもなくってなんの思い入れも抱けない。こんなことならわざわざ山奥の大学にでも行けばよかった。せいぜい西館の506号教室で青姦した思い出

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