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「〇〇は男の/女の役割」なんて根拠のない妄想だ

7月某日

編み物作家でLIFE KNIT 理事の横山起也先生の講演会へ。横山先生は「編み物から考えるジェンダーとダイバーシティ」について研究していて、この日は江戸時代にいた「編み物侍」の話。
「江戸時代にはね、編み物ってお侍さんの内職として行われてたんですよ、ちゃんと資料も残ってるんです」と横山先生は分厚い資料の山を見せながら言う。
「編み物が『女のもの』になったのっていつからかご存知ですか?第二次対戦後、政府主導の元、男は復興のための労働を、女は家のことをやりなさい、と分業されてからなんですよ。やがて編み物は商業のニッティングと、家庭で行われるニッティングに分かれた。でもね、長い長い歴史をたどると、元々はヨーロッパでは漁師の男がやるものだったし、日本でも鉄砲を包むために重宝されたり、軍事に使われていたり、それを男が作ってたりもしてね。とあるお侍さんがものすごい編み物の達人だったって記述も残ってたりする。全然、昔は『女性名詞』ってわけじゃないんですよ。
編み物に限ったことじゃなく、「○○は女の仕事」とか「男の仕事」とか、『男の役割』『女の役割』なんてね、本当は政府だったり誰かなりが勝手に決めただけのもので、その必要性がなくなった今でも、ただなんとなく続いちゃってるだけのものなんです」

なんとも心強い話だなあ。

最近、ツイッターを開けば生産性がどうだの、医大の女子受験生の点数改ざんニュースだのどうしようもないニュースが溢れていて、全くどうしちゃったんだ、本当に平成最後の夏なのか、前時代のあらゆる悪い要素、ここらで毒出し仕切ってから新しい時代に行こってことなのかしらん、いやそう思わなくちゃやってらんない、って感じ、うんざりする。

医大側は「女性医師は妊娠出産で離職するから男を取りたかった」って説明しているけれど、多くの人が指摘しているように、じゃあなんで”女が離職しても復帰しやすい職場環境を作ろう”って方向にならなかったのだろう?それこそジェンダーバイアスやら男の嫉妬やら、前時代から受け継いだ「〇〇は男の職業・女の職業」っていう全然現実が見えてない、時代にフィットしてない思い込みがシステムを作る側の人間に強固に作用している証拠だ。
勝手に社会が決めた男らしさ・女らしさ、が個人の首を締めていて、それらがいろんな現実的不都合としてあぶり出されている昨今、日大のくだんのタックル事件だって、この観点に照らしてみればショーワの遺物の爺さんたちの「過度な男らしさ」信仰が産んだニュースみたいにしか思えん、あんなもんに付き合わされて、男も女もいい迷惑である。

編み物然り、医師という職業然り、その行為が男性名詞か女性名詞かなんて、過去の誰かがその時々でその人の都合のいいように勝手に決めたもの。時代が変わればiOSのようにアップデートされて然るべきだし、本来なら男だからどう、女だからどう、なんて外野が勝手に決めていいことじゃない。ジェンダーでくくり、役割を押し付け、そこから外れたものを糾弾するか仲間はずれにする、その結果才能技能を持った優秀な人材を取り逃がすことになり、それこそ長い目で見れば「生産性(笑)」が悪い。

(あの医大だって、優秀な人材をわざと落としてそうでもない人を合格させていた、ということは将来的に優秀な人材を輩出する機会を取り逃がしていたということであり、自分で自分の価値を下げるような愚かな真似をしていたってこと、長い目でみればマイナスである。)

旧時代の遺物の人々はそこんとこ全くお分かりになっていない。

自分たちが支配されていたイデオロギーによって下の世代を支配することで、自身が価値ある存在だって称揚したいだけである。そっちの方がよっぽど社会のゴミ……おっと失礼、言いすぎたけど、とにかく「男であるから」とか「女であるから」とか、ついでに言うとマイノリティだからとか分類できない性だからとか、そういう、一部分だけに取り付けたタグによって、その人のもつそのほかの要素までをも決めつけたり、あるいは無視したり、考慮に入れるのをわざと辞めることは、本当に社会にとって意味がない。そのことに、彼らは早く気づいた方がいいね。

(長くなったので休憩。写真は横山先生のニットのきのこたち)


しっかし、今回の件で改めて、社会の中で女たちが生まれた時から包み込まれている、真綿のようにぼんやりとして、もはや当たり前すぎて今回の件のように可視化されなければ反論も糾弾も起こしにくいような、そんな生まれた時からの性的不平等を目の当たりにした感じ。

本当にがっかりであるが、しかし私は今回のニュースをきっかけに我が身を振り返って、反省したことがある。

私もここまでジェンダーの非対称性について思いを馳せたことがなかった頃、はっきり言って、「差別する側」と同じような目線で「女」を見ていたことがあるからだ。

「クイーンビー症候群」という言葉がある。このアルテイシアさんのコラムに詳しく書かれているけれど、

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