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日記とエッセイ

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僕のエッセイです。
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#創作

「エッセイ」と猫の留守

「エッセイ」と猫の留守

 お風呂は気持ちよかった。前日にはシャワーをあびた。それも気持ちよかった。しかしお風呂はもっと気持ちよかった。その事実は僕に風呂掃除の必要性を訴えかけるにいたった。キリン堂で僕と運命的な出会いをした「ルック+ バスタブクレンジング」は「シュシュッとかけて、六十秒待つだけ!」と、秘密を打ち明けるようにそう語った。しかし、甘い言葉はやはり信用してはならなかった。六十秒待てども、百二十秒待てども、あるい

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日記:とても若くて

日記:とても若くて

 まずは想像が大事だ。想像してみよう。僕たちが過ごしているこの夜が一層深くなる様を。夜の肌が黒々とぬれて、ぬらりと艶っぽく光を返している。低く響く声で歌をうたっている。僕たちは深夜には逃げるように歩いた。アスファルトから街路樹に至るまで、そこにある全てが僕たちを襲うかのように感じられていたからだ。
 明日起きられないと、深夜一時すぎに悟ったとき、僕は夜に出て燃えるゴミを片手に走った。アパートを出て

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日記:ビリーのボサノヴァ

 早春が来て、僕はもう一度ペンを取ることにした。
 ただ、怖くて仕方ない。過去作を彼女と読み返すたびに「本当にこのようなものが書けるのだろうか」という思いがこみ上げる。また、同時に、「これ以上のものが書けるのだろうか」とも不安になる。僕は自分に問いかけるのだ。おまえの才能はすでに使い果たしてしまったのではないか? と。
 「才能」ではないのかもしれない。「熱量」なのかもしれない。
 久しぶりに書い

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