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【#78】学生服に、慣れた頃
平成。
それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。
主人公・半蔵は、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?
この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。
1999年(平成11年)6月7日【月】
半蔵 中学校1年生 13歳
![](https://assets.st-note.com/img/1647828518247-0B87Jf9a27.jpg?width=800)
「ハワユー?」
「「「アイム ファイン センキュー!!アンジュ―?」」」
「アイム ファイン!よーし、みんな元気だな。英語の授業、始めるぞー!」
中学校から始まった英語は、僕の苦手科目になりつつあった。
だから、他の授業と違って、ノートに『青眼の白龍』などを描いている余裕はない。
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— しょーい (@shoooo_E) April 8, 2021
【※】
『青眼の白龍』は、漫画『遊☆戯☆王』に出てくるカードゲームのモンスター。
様々な男子から溺愛(崇拝)されるモンスターである。その理由は、
・かっこよすぎる名前
・かっこよすぎる見た目
・かっこよすぎる攻撃方法(滅びのバーストストリーム)
・たしかな実力(攻撃力3000)
・光属性
など、数えあげればキリがない。
『ブルーアイズ』のカードを3枚持っているということは、大人の社会でたとえるなら『ランボルギーニに乗っている』のと同等のステータスであろう。
「今日は、数の復習からだ。リピート アフター ミ―。ワン!」
「「「ワン!」」」
先生の後に続き、必死に発音する。
「トュー!」
「「「トュー!」」」
ツーじゃなくて、トューなんだよな。
そんなことを考えていると、アッという間に授業が進んでしまう。
「シックス!」
「「「シックス!」」」
なぜか6の時だけ、一部の男子はニヤニヤしながら大声を出すのだろう?
【※】
詳細はあえて書かないが、男子とはアホな生き物である。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「じゃ、曜日はすべて英語で書けるようにな。テストに出すから。今日はここまで」
学級委員の号令によって挨拶を終えると、僕はすぐさま黒板に向かった。
「まったく、中学校の黒板は無駄に大きいぜ・・・・・・」
![](https://assets.st-note.com/img/1647828717096-MebmZWePx4.jpg?width=800)
今日は日直である。
黒板をきれいにする仕事を忘れると、『やり直し』になってしまう。
Sunday
Monday
Tuesday
といった単語を消していると、
「どけ」
と横から声がした。
もう一人の日直の、リリーが青い瞳で睨んでいる。
「貴様は、どけ。私がやる」
その右手には雑巾が握られていた。
長身金髪の彼女には似合わない、汚れた雑巾である。
「あのな、黒板は水拭きしたらダメなんだぞ。白っぽくなっちゃうから。小学校で言われなかったか?」
「日本の小学校には通っていない。前も言っただろうが」
なぜ、こんなにえらそうなのか・・・・・・。
オリジナルコンボを叩きこんでやりたくなる。
【※】
『ストリートファイターZERO2』にて初めて登場したシステム。
慣れれば、相手をボコボコにできる爽快な連続技が可能である。
『ストリートファイターZERO2』、当時のゲーメストに載ったオリコンが微妙に難しくて、このめちゃ簡単なものを使ってた。今みてもコストのわりにかなり減るし、実は強キャラだったのでは。 #PS4share pic.twitter.com/MoPn8xPhhg
— GZL|浅葉 (@asabataiga) October 29, 2018
「貴様は、先生から、私が適切に行動できるようサポートせよ、と命令されているだろう?もっと優しく教えろ」
「だから、教えてるだろ!雑巾はダメだって!それと、先生は上官じゃない!」
僕はリリーに黒板クリーナーを渡し、こうやってみろ、といって手本を示す。
彼女は不服そうに口を閉じながらも、上から下へと手を動かしている。
「ほんと、常識ないよな・・・・・・」
「黙れ。アメリカでは訓練ばかりしていた」
どういう事情か知らないが、リリーは普通の学校に通っていなかったらしい。
噂では、父は軍人なのだという。
そのせいか、リリーも軍人らしい話し方をする。
「日本語は上手いのに、な」
「日本語だけではない。英語はもちろん、ドイツ語、ペルシャ語、ポルトガル語も話せる」
特殊な学校で学んだのだろうか。
「ねぇ、今日学校終わったら遊びに行かない?」
「うん、プリクラ撮りに行こう!!」
女子が5,6人黒板の近くで話し合っている。
今日からテスト期間で、部活がない。
だから、遊びに行く人もいるようだ。
(正直、ありがてぇ)
バスケは楽しいが、先輩たちのレベルが高すぎてついていくのがキツイ。
足の母指球も皮がむけてしまったので、ちょっと休む期間が欲しかったのだ。
【※】
バスケ経験者の方ならご存知だと思うが、バスケが上手くなってくると、母指球の皮がむけてくる。(そこに体重がかかるため)
バスケしたら足の裏の皮が…
— しっぽフリフリ弟子でし (@Reineslover) September 10, 2019
痛くて歩けない…
不幸だ… pic.twitter.com/4CSLQDqzOh
「なぁ、リリー」
リリーは、きれいになったはずの黒板を、さらに美しくするため右へ左へ動いている。
そう、この子は決して悪い人ではないのだ。
それなら・・・・・・
「今日の放課後、時間あるか?」
青い瞳が、不思議そうに僕を見つめた。
(つづく)
![](https://assets.st-note.com/img/1647831556566-gotBsJcNCz.png?width=800)
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