【#17】マグヌードルは、食事?おやつ?
1992年(平成4年)12月25日【金】
半蔵 6歳 保育園(年長)
「俺はマリオカート!」
「僕はバーコードバトラーⅡ!」
『サンタさんに、何もらった?』
今日の保育園は、この言葉が挨拶代わりだった。
「すげーなサンタさん!イイケンがほしいもの、ドンピシャじゃん」
「半蔵も、ほしいものもらえてよかったな」
マリオカートもバーコードバトラーも、二人で対戦できるのが素晴らしい。
「マリオカートなら俺も持っている」
会話に割り込んできたのは、天光寺だった。
ドッジも強いし足も速い・・・・・・そのくせ態度もでかいやつだ。
「もっとも、発売日に買ったがな。F-ZEROと同じくらい面白いゲームだ」
聞いてもいないのに、一方的に話してくる。
「明日から冬休みか。スーファミを持っていない服部にやらせてやってもいいぞ」
誰が、おめーの家に行くか。
こいつが誘ってくるなんて、何かウラがあるはずだ。
どうせやるなら、イイケンの家で楽しくやった方がいいに決まっている。
そう言いかけたが、次の言葉は聞き流せなかった。
「せめて、ゲームくらい勝ってほしいもんだ」
「なんだと!?」
たしかに、天光寺はあらゆる場面で活躍していた。
歌、お遊戯、マット運動、ドッジ。
だが、今まで勝負した覚えはない。
勝手に負けたことにされるなんて、ふざけた話だ。
それに、ゲームの腕には自信がある。
「やってやろうじゃないか」
「ほぅ。おもしろい」
話し合いの結果、マリオカートで勝負することになった。
勝負の日は冬休み開け。マリオカートを買ったばかりの僕たちに、配慮したのだろう。
絶対に負けられない戦いが、始まろうとしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「キノピオが一番使いやすいな」
「おう。壁にぶつからないのが大事だからな」
冬休み。
僕はイイケンの家でマリオカートの特訓をしていた。
ゲームをやらせてもらう分、食料は僕が持ち込んだ。
もちろん、マグヌードルだ。
「おじさんも何か手伝おうか?」
「いえ、ダイジョウブです」
天光寺と対戦することを知っているおじさんは、勝負の行方が気になるのか、しょっちゅう部屋をのぞきに来た。
「おじさんが、敵役になってもいいんだよ」
「いや、オジサンはいい人なんでゴエンリョします」
おじさんは、部屋を出て行った。
少しさびしそうにしていたのはなぜだろう。
冬休みの間は、お正月以外特訓をした。
ゲームは1日1時間しかできない。それ以外の時間は外で走ったり、近所の野良犬を見に行ったりして、心と体も強くした。
「なぁなぁ、マリカー以外に“コレ”もやっておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだな。“このゲーム”で眼を鍛えておいた方いいわ」
時には、マリカー以外のゲームもやった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
それは、冬休みの中でも特に寒い日に起こった。
マグヌードルに飽きてきた僕が、ラ王を食べていたときのことである。
「なんだ今のは!?」
僕たちは、見たことのない光景に驚く。
イイケンが操作するキノピオは、他のキャラを大きく引き離してゴールした。
「イイケン!今のどうやってやったんだ!?」
「わからん!ボタンを押しただけのはずなんだけど・・・・・・!」
二人で何度も試す。
一日が、あっという間に過ぎた。
二日目も、何もわからなかった。
三日目で、手がかりをつかみ、四日目でモノにした。
(すげーもんを発見してしまったぞ・・・・・・)
これがあれば、必ず勝てる。
くっくっくっく。
天光寺め、待っていろ。
お正月を過ぎても大量に残っている餅を食べながら、僕は闘志を燃やしていた。
(つづく)
解説【マリオカート】(ゲームに関心がない方はスルーしてください)
1992年8月27日に任天堂から発売されたソフト。
正式名称は「スーパーマリオカート」で、売上は約382万本。
日本で最も売れたスーパーファミコンのソフトである。
ドライバーとしてマリオを採用したアイディアが素晴らしい。(開発当社は、ただのヘルメットをかぶったおっさんだった)。
みんなが知ってるマリオが運転するのだから、子どもウケは抜群だった。
「F-ZERO」にはなかった画面2分割の対戦モードがあるので盛り上がるに決まっていた。
私はスーファミを持っていなかったが、友人の家でやりまくった記憶がある。
レースゲームにアイテムを導入する、というアイディアが画期的でとにかく対戦が熱い。
アカ甲羅やダッシュキノコを使えば一発逆転のチャンスがある。
最近、NintendoSwitchで「マリオカート8」をやったのだが、「羽根」のアイテムがなくなっていた寂しく感じた。
私が高校生の頃、スーファミを学校に持ってきたクラスメイトがいた。
昼休み、教室のテレビにつなぎ対戦大会を開催していた。(無論、くっそ盛り上がっていた)
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