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ジャージたばた上京(埼)日記

大学院の修了式を終え、飲み会へと向かう友人たちを尻目に、私は仙台駅から新幹線で旅立った。
新幹線に乗るまで、
「まさかこの俺が淋しくなんてなるわけ無いでしょ」
と思っていたが、新幹線が動き出し、住み慣れた町並みがどんどん窓の向こうを過ぎ去っていくと、なんとも言えない心細さが私の胸を締め付けた。
住んだこともない街で、私はやっていけるのだろうか…。
父方の実家は川越にあるものの、川口にはそれまで行ったこともなかった。荒川を超えれば東京都北区、思いっきり都会だ。相槌で「だから!」なんてのは、通じないだろう。
そうこうしているうちに、大宮駅へとたどり着いた。
スーツケースにギター2本を携えた私は、人混みの中、どうにか京浜東北に乗り込み、川口駅を目指した。
北浦和、浦和、蕨と進んでいっても、驚いたことに全然線路脇の民家の数が減らないのである。
さすがは700万人の人口を有する埼玉県、いたるところに人が住んでいるのだ。そんなことを思っていると川口駅に到着した。
ホームに降り立つと、聞こえてくる異国の言葉たち。中国語と韓国語は予想がつくが、その他は何が何やら…。
西口を出て戸田方面に歩くこと15分、私の家の最寄りのスーパーマーケットにたどり着いた。ここで今夜の夕食の材料を買うことにした。
ガスの開栓は明日、火は使えない。私は袋のうどんとごま油、麺つゆと豆苗と豆腐でサラダうどんを作ることにした。
慣れない鍵を差し込み、アパートの扉を開けると、西日に照らされた六畳一間が広がっていた。これから一体どんな未来が待っているというのだろう…。

そんなことを思っていると、引っ越し屋さんがやってきて、11個の段ボールを残して去っていった。
静かである。家族の声がしない、物音も聞こえてこない。
これが一人暮らしというやつか。と、持て余すほどの自由と少しの心細さを噛み締めていた。

先程の具材を100円ショップのプラスチック皿にぶちこみ、かき混ぜた。
箸ですくい、口に運ぶ。ごま油が染みた、うまい。


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