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グリッチ 一章

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終末的近未来大災害冒険ファンタジー小説『グリッチ』を連載します。
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#喪失体験

グリッチ (5)

 俺たちは、温泉リゾートホテルの豪華なタイル貼りのロビーエリアを抜け、無人のフロントデスク前を通り過ぎ、外に出て、元は庭園だったと思われる菜園を抜け、海辺から続く遊歩道を陸側に進み、宿泊棟脇の井戸端に来た。望月が、髭を当たってやると言ってくれたのだ。

 髪と髭は箱根の山中でも、鋏で切っていた。洗顔や洗髪は雨水でしていたから、清潔に保つにはできるだけ短くしなければならなかったが、カミソリは無かった

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グリッチ (6)

 深雪が物資の調達係を引き受けてからというもの、この島の住人はもう、本土に上陸して蠍と闘う必要もなくなったという。しかし初めの一年余りは、調達部隊というものがあり、手漕ぎの舟で本土に渡り、命がけで上陸していた。望月を隊長として、足が早く剣の腕の立つ者七人で調達をしていたが、そのやり方をやめたのは、のんぺいが怪我をしたからだった。

 当初、調達部隊は、一人を舟の見張りに立て、六人が上陸地点から一番

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グリッチ (7)

 元々、この島に行こうと言い出したのは、のんぺいだったという。小田原の町道場を根城に町内の生き残りが寄り集まり、蠍と闘いながら暮らしていた頃、のんぺいが、港に行って漁師を仲間にし、漁船を手に入れ、蠍の居ない小島に逃れようと言い出した。その島には、基本的に生活できる設備がすべて整い、水源もある、とも言った。

「なんでそんなことを知っているかと聞くと、インターネットで読んだと言うんだな。当時はもうネ

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