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お念仏と読書

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これまで読んで感銘を受けた本を紹介して、それを通して味わった仏様のお話をしていこうと思います。
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2020年5月の記事一覧

お念仏と読書⑳漫才は関係性、お笑いはスパーク/『火花』又吉直樹

お念仏と読書⑳漫才は関係性、お笑いはスパーク/『火花』又吉直樹

今回は、又吉直樹さんの小説第一作にして芥川賞受賞作品『火花』を通して、お釈迦様の説かれる「縁起」と、龍樹菩薩の「空」を味わいたいと思います。
何時もの通りネタバレをしているところもあります。

若く売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人である神谷と熱海の花火大会で出会います。誰にも媚びることなく、己の感性・才能のみを信じて、お笑いに生きる神谷に惚れ込み、徳永はその日に神谷の弟子にしてもらうという始

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お念仏と読書⑲視点場妄想譚/『置き手紙』安野龍城

お念仏と読書⑲視点場妄想譚/『置き手紙』安野龍城

この本は義父である福井県越前市専應寺の安野龍城師が、住職退任を機にご門徒さんに向けて書かれたものです。寺報や福井新聞に連載されたものがまとめられています。

皆さんは、「視点場」という言葉をご存知ですか?
私は知らなかったのですが、この本を読んでなるほどと思い、今回、仏様の「視点場」について味わってみました。
本文を引用し、紹介させていただきます。

視点場妄想譚 京都の寺々の庭の録画を見ていた。

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お念仏と読書⑱今、ここを抱くナモアミダブツ/『愛をひっかけるための釘』中島らも

お念仏と読書⑱今、ここを抱くナモアミダブツ/『愛をひっかけるための釘』中島らも

中島らもさんのエッセイ集『愛をひっかけるための釘』の中にある「サヨナラにサヨナラ」を通して、アミダ様は私達の今とここをご一緒くださる仏、南無阿弥陀仏ということについて書かせていただきます。

私たちが夜、空を見上げる時に見ているのは「空いっぱいの悠久の過去」なのだそうです。

そこに今見えているのは、宇宙の開闢以来の過去を、同時に空いっぱいの光として見ているのです。

たとえば、これから夏になって

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お念仏と読書⑰平均以上効果と愚者のすくい/『自分では気づかないココロの盲点』池谷裕二著

お念仏と読書⑰平均以上効果と愚者のすくい/『自分では気づかないココロの盲点』池谷裕二著

今回は脳科学で言われる私たちの脳の持つ特性、「平均以上効果」を通して、私たちの抱える苦しみは、「自分をよく見せたい」、「愚かに思われたくない」という心から生じることについて書きたいと思います。
そして、アミダ様のすくいの中で、私達は愚か者と知らされていくということを書かせていただきます。

池谷裕二さんの『自分では気づかないココロの盲点』を取り上げるのは、このブログでは二回目ですが、興味深く、色々

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お念仏と読書⑯プラス思考の向こう『あしたのねこ』/きむらゆういち文・エムナマエ絵

お念仏と読書⑯プラス思考の向こう『あしたのねこ』/きむらゆういち文・エムナマエ絵

今回は私が一番好きな絵本『あしたのねこ』をとおして、私たちの「プラス思考」や「解釈」はこの世を渡っていくのに最強だが、そこにも限界があるということ、そしてその解決について書いてみたいと思います。

いつものように、ネタバレ注意ですが、宜しければお読みくださいませ。

『あらしのよるに』のきむらゆういちさんが文を書かれ、完全に失明をされているエム・ナマエさんが絵を描かれています。
エムさんの淡いタッ

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