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あなたは示唆に富みたいですか?

「好奇心旺盛なので、色々なことに興味があります!」

この言葉を聞いた時、ガツンと何かに殴られた気がした。初めてその考え方に出会った私は「そんなこと言っていいんだあ〜」と目をぱちくりさせることしかできなかった。

この言葉に出会ったのは、2014年にマスコミ業界への就職を試みて面接を受けていた頃だ。元新聞記者の教授に伝授された就活の極意は「具体的なエピソードを元に話す」ということだったので、「好奇心旺盛でいろいろなことに興味がある」という抽象的な物言いは許されなかった。教授の教えを守っていた私にとって、その言葉を初めて聞いた時は違和感が残ったものの、なんて的を射た言葉なのだと強く感心していた。

その言葉を発言した人が試験を合格したかは分からないが、新聞社から内定をもらい同期となる人たちとの集まりに行くと、そこは好奇心の溜まり場だった。貧困、障害、少数者、人権など様々な社会事象に興味を持った若者たちが次々に話をしていた。貨幣、資本主義、司法制度などその興味の幅は広がる一方で、いろいろな人の話を聞いて「へぇ〜」と相槌を打ちながら聞いているのが楽しかった。

そして新聞記者にとって、この「好奇心旺盛」な側面が何よりも大切であった。
ある日、新人研修の一環で新聞だったか、警察だったかの博物館のようなところへ行った。横浜に立地したその博物館は展望台のようなものがついていて、海が見渡せた。私は「横浜の海〜!!普通〜!!」くらいのテンションでとりあえず眺めていたが、同期が説明者を捕まえて尋ねた。
「あそこに出ている船って海保所属なのですか?それとも警察ですか?海ってどこからどこまでが境界線になって警備をしているんですか?」

私は同期にえらく感動していた。23年間生きてきて、そんなことまるで考えたことがなかった。説明者は確か、海からの距離で決まってるとかなんとか言ってたけど、私はその説明をぐびぐび喉を鳴らしながら飲むように吸収している同期の顔が忘れられない。好奇心ってすげぇ…と思ったのだった。

もちろん、私も新聞記者になったくらいなので、好奇心は強い方だと思う。野次馬するし、質問するし、後をつけたりもする。その中で「これってなんだ?」「どういう気持ちなんだろう?」と好奇心を持てると、取材が2倍にも3倍にも濃くなり、上司から質問(時には詰問)されても、しっかりと返答ができるのであった。

そんな上司とのやりとりを重ねている時、自分が原稿に書けていなかった情報を上司が質問によって掘り出してくれて、良い記事になる時がある。「よくぞその質問をしてくれた!」と頭が上がらない気持ちになるが、この感じどこかで味わったことがあるなと考えてみると、それは案外、学校での授業だなと思った。

学校の授業というと眠気まなこで記憶が途切れ途切れなことが多いが、頭の良い同級生が先生に質問をし、「いい質問だね」と言われていることを思い出した。その同級生は授業を聞いていて楽しそうで、質問も鋭くてかっこよかった。

その授業のようなやりとりは、大人になってからもあった。就活で企業説明会を聞いてる時、就職して研修を受けている時、記者として記者会見(そんな重要なものじゃなくて柔らかいネタや面白ネタ)に臨む時など。思い返してみると、私もそれらで「いい質問だね」って言われることがあった。ただその時は、自分自身が心の底から興味があることについて聞いただけで、特に意識をしていたことではないことが多い。
「示唆に富んだ質問ですね」みたいなところに到達しようとすると、大体頭でっかちなよく分からない質問になってしまうが、多分、自分の興味や好奇心に従って、その事象に対峙するくらいの方がいいのだと思う。

本のタイトルで、雑談上手になる方法とか、人は話し方が100%みたいなものをみると、毎度頭に?が浮かぶ。 
興味、好奇心で話したことが正義ではないかしら(不倫話とか悪口とかそういうのは無しね)
結果だけに焦点を当てて考えた時、効率よく到達できることがある。でもコミュニケーションはいろんな要素が相まって、絡まって、逆を向いたりもしてるから、まずは興味や好奇心を持って人と話してみるのはいかがでしょうか?

新年になって気持ちも新たになった人がいるはずで、そんな人たちの心を折らせたくないなと思いました。あなたの中にある興味や好奇心を大事に一月を踏み出していこうね。


<環プロフィール> Twitterアカウント:@slowheights_oli
▽東京生まれ東京育ち。都立高校、私大を経て新聞社に入社。その後シェアハウスの運営会社に転職。
▽9月生まれの乙女座。しいたけ占いはチェック済。
▽身長170㌢、体重60㌔という標準オブ標準の体型。小学校で野球、中学高校大学でバレーボール。友人らに試合を見に来てもらうことが苦手だった。「獲物を捕らえるみたいな顔しているし、一人だけ動きが機敏すぎて本当に怖い」(美香談)という自覚があったから。
▽太は、私が尖って友達ができなかった大学時代に初めて心の底から仲良くなれた友達。一緒に人の気持ちを揺さぶる活動がしたいと思っている。
▽好きな作家は辻村深月

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