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環(たまき)です。 〜エッセイメディア「OLi」自己紹介〜

「あの、もしかして、いつも来てくれる方ですか?」
 食べログで星3・68のカレー屋「nidomi」(大阪市)。私の日常は、朝6時に起きて15分で自宅を出発、夜11時に帰宅し1時間後には寝る、の繰り返し……。そんな殺伐とした生活で、昼休憩は貴重だ。今年度は昼休憩をまともに取れておらず、6月に入ってからやっと勝ち取った1時間の休憩だった。私は友達の彼女に教えてもらった店に直行した。
 カレーはスリランカカレー。大きな皿に、ビーフとチキンの二種のカレー、サラダやキノコのクリーム煮などが乗っていて、混ぜながら食べる。一口ごとにスパイスが舌をひりひりとさせ、食欲がどんどん沸いてくる。味の奥には甘みを感じ、噛めば噛むほど日本人である私がなじんできた味に化ける。うまい、とにかくうまい。そう考えながら大きな銀色のスプーンを何度も動かした。
 食べ終えたころ、金髪にバンダナ、丈夫そうな黒いエプロンをつけ、テキパキと働いていた女性店主が話しかけてきた。私は「いえ、初めてです」と話すと、店主は「そうでしたか、失礼しました」とはにかむ。「なんか似てましたか?」「ええ、なんか似てました」
 女性店主との話は盛り上がった。私が新聞記者だと言うと驚き、東京新聞の望月衣塑子記者がモデルになった「新聞記者」という映画を見たと目を輝かせる。料理をどこで学んだのか聞くと、「ケータリングで場数を踏みました」と切り出し、過去の職歴を教えてくれた。快活かつ上品でとてもいい人だった。

 私は、誰かと間違えられたり、誰かに似ていると指摘されることが多い。
「あれ、会ったことありましたっけ?」「友達にめっちゃ似ている」「有名人の〇〇に似ていますよね(人によって全く違う人を挙げられる)」……。
小学生のころからそう言われることが多い。
 小さい頃は自分が何者なのかよく分からず悩んだが、最近は良いなと思うようになってきた。なぜか。相手が私を誰かに例えたり、当てはめたりしたあと、そのイメージを壊して特別な関係を築いていくことが好きだと気づいたからだ。


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  私は友達の性別をあまり気にしない。男友達も女友達もトランスジェンダーやXジェンダーの友達もいる。「俺は異性の友達とか無理だわ」「私は恋愛に発展したら面倒だなと思っちゃう」…いろいろな人たちが言うことに、私は全く賛同できない。
 男だから女だからと言って友達として特段なにかが変わるだろうか。私は異性の友人と洋服を買いに行くこともあればライブに行くこともある。遊園地や旅行にも行く。ワンルームに2人で住んでいたこともあるし、混浴の風呂で互いに隠すところは隠して入ったこともある。宅飲みをして、そのまま泊まることなんて日常茶飯事だ。性別が同じだったらできることが、なぜ異性だとできなくなる人がいるのだろうか。
 世間的には珍しいことなのだろう。そういうことを話すと「え、それ男女の仲に発展したりしないの?」と言われる。私が「しない。友達じゃん。同性愛者は同性と友達になれないのかよ」と答えると、「環らしいよね」とあきれられているんだか、感心されているんだか分からない雰囲気で言われる。その一連の会話を終えると、驚いていた友人は、徐々に性別という枠組みを取り払って私と付き合ってくれるようになる。


 私は東京出身の男性28歳、大学まで体育会でバレーボールをやっていて、新聞記者として朝も夜も関係ない生活をしている。この肩書きだけを見ると、精神的にも肉体的にもどんな”マッチョなやつ”かと思うだろう。いざ会ってみると日本人の平均的な体型をして、顔が薄く特徴の捉えづらいやつだと分かる。静かなわけでも賑やかすぎるわけでもない私を、人はいろいろな枠組みに当てはめていく。そのイメージを破壊するのが楽しい。クラッシャー環になるとっかかりが「性別の関係のない人間関係を築こうとしていること」だ。

 イメージを壊すというのは、自分をさらけ出すという行為だと思う。イメージ通りなことも、違うこともあって、それをお互いに確認しあう行為だ。性別や出身、職業などでいろいろなイメージが作られるが、それを壊しながら人と付き合うということはこの上なく楽しい。

 私の性的指向も関係しているのだろう。私はバイセクシュアルだ(パンセクシュアルかなとも思うが、自分の認識ではバイセクシュアルです)。私にとって、戸籍上の男性と付き合おうが女性と付き合おうが、相手は相手なのである。その時々に思うことは違うし、自分のテンションだって変わる。その人と特別な関係を作り、でも別れて、と恋愛を重ねてきた。常識や決まり事を超えて人と付き合うことがこんなに面白いんだなと、中学生ぐらいのころから気づき始めている。

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 私の特徴は自分をさらけ出し、人と付き合えるところだと思う。顔が広いとかいろいろな分野の人と知り合いとかそういうのじゃない。出身や性別、職業などのイメージを超え、1人一人と深い関係を結ぼうとする姿勢だ。 
 OLiではどんな人と出会い、深く話せることができるだろうか。私と太の記事を見て、会ってみたい、話してみたいと思ってくれる人が出てくることを望んでいる。さあ、きょうも人に会いに行こう。

 この物語の音楽:be master of life/aiko


<環プロフィール>  Twitterアカウント:@slowheights_oli
▽東京生まれ東京育ち。都立高校、私大を経て新聞社勤務。
▽9月生まれの乙女座。しいたけ占いはチェック済。
▽身長170㌢、体重60㌔という標準オブ標準の体型。小学校で野球、中学高校大学でバレーボール。友人らに試合を見に来てもらうことが苦手だった。「獲物を捕らえるみたいな顔しているし、一人だけ動きが機敏すぎて本当に怖い」(友人談)という自覚があったから。
▽太は、私が死ぬほど尖って友達ができなかった大学時代に初めて心の底から仲良くなれた友達。一緒に人の気持ちを揺さぶる活動がしたいと思っている。
▽将来の夢はシェアハウスの管理人。好きな作家は辻村深月






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