入道雲

大阪の大学2回生

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最近の記事

アクリル板越しの世界

バイト終わりのフードコート。頭の下の方に血がたまったような疲労感を抱えてさまよい歩き、空席に腰を下ろす。 椅子に腰かけると目の前にはアクリル板。疲労で視野の狭くなった私には、世界はアクリル板越しにのみ存在する。 アクリル板の向こうの世界と、アクリル板が反射した世界が重なり合う。 ここがどこなのか分からなくなる。 私を360度取り巻く世界、移ろうその世界の真ん中にひとり。 世界から取り残されたと思った。 ジュースを飲んで目をつぶる。 頭全体に血が回ったのを感じて目を開

    • 極端だから多様性

      意外とnoteに書いてこなかったけれども、小説を読むのが好きだ。小説の一番の魅力は、自分の生活を一時でも忘れて別の誰かになれること、だと思っている。 しかし、朝井リョウの小説は、自分の生活を忘れることを許さない。彼が描くのは、自分が生きているこの世界そのものだからだ。もちろん他の作家の作品でもリアルな世界に通ずるものはあるのだが、彼の描く世界の混沌とした薄暗さは、私達が今生きているこの時代の雰囲気を、克明に切り取っているように思う。その現代性が私の「世界」観とあまりに近いか

      • どこかで嗅いだことがある

        新刊の「school girl」九段理江 を読んでいた。直近の芥川賞にノミネートした本なのに簡単に予約が取れた、図書館本。図書館に入った日付と予約人数を考えると、多分私が2番目くらいだと思う。 中編が2つ入っているのだが、1篇目を読み終わり、本を閉じるその瞬間、どこか懐かしい匂いが香った。紙のぬくもりを感じさせるような優しい香りではない。化学物質をも感じさせるような鼻に抜ける匂いで、この本がどこかの工場からやってきたことを思い出させる。けれど不思議と爽やかで、人工の中に森を

        • 小学生の詩

          週に1度、学習支援のボランティアで小学校の授業サポートに入っている。 今日は、詩の創作をする2年生の国語に入った。 いろんな子がいろんな詩を書いている。 ひとつひとつの作品から、その子の生きている実感みたいなものが、ギラギラあふれ出している。 この詩は、教室の後ろに掲示される。それは多分、学期末に持って帰って、おうちの押し入れに入る。押し入れの詩が果たしていつまで存在できるかは分からないが、そこでずっと眠っていてほしいなと思う。そうして10年後くらいに親と一緒に見返して、

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          メイクから逃げる

          メイクをしたことがない。 しない。というか、したくない。もっと言うと、できない。 面倒な自我は、社会と嚙み合わずに、行き場をなくす。 メイクが分からない私の周りの女子大生は、メイクをして、おしゃれをして、髪の毛整えて、こぎれいな身なりでキャンパスを颯爽と歩く。そうではない人を見かけるのは、本当にまれだ。なんで自分はそうなれないんだろう。 理由の根っこの根っこには、「人間の顔への無関心」があるのだと思う。 髪を切っても気付けない人、というのがいるが(私もそうだ)それと同じこ

          メイクから逃げる

          体重計に乗らない

          同世代の女性が当たり前に持っているらしい「スラっとしているのがきれいだから自分も痩せたい」という感覚が、ずっと理解できなかった。今もできない。 スラっとしているのがきれい、のところまでは理解できる。私達若い女はそういう文化の中で生きているから。 けれど、それと、「自分が痩せたらきれいになるのか」「そもそも自分がきれいになりたいのか」は別問題だ。それくらい自分で決めさせてほしいものだが、脈々と受け継がれてきたジェンダー観と、美容を一大産業とする資本主義は結託し、誰もに「痩せな

          体重計に乗らない

          吐き出すために書く

          通っていた高校は、近くに製鉄工場があった。 煙突があって、昼も夜も、細い黒煙が天に昇り続けている。空気の澄んだ天気のいい日ほど、黒煙が疎ましく思えた。ある日、黒煙は環境も景観もすがすがしい気分も損なわせるけれど、そうしてできた鉄製品があるから私の便利な暮らしが成り立つんだな、とふと気づいたことを思い出す。 北風が吹くと、空がグレーにくすむ。黒煙の中にいると、遠目で見るほどの不快感は感じないものだ。ただなんとなく気分が沈むだけで、自分があの疎ましい黒煙の中にいるとは思いもしな

          吐き出すために書く

          私はあなた

          私はあなた。 もし勉強が苦手だったら、 私はあなただったかもしれない。 母が例えば病気で、幼い私に構う余裕なんてなかったら、 私はあなただったかもしれない。 そもそも、私があなたの家に生まれてあなたの友達と出会っていたなら、 私は間違いなくあなただった。 私はあなた。この地平で地続きに存在する、同じ人間。 あなたがたとえどんなに遠いところにいても、あなたは私で私はあなた。 仮に、あなたと私が一生知り合わなくても。 なのだけれど、私とあなたは確かに違う。 数々のもしを超え

          私はあなた

          バレンタインがくると

          バレンタインがくると、彼氏ほしいなと思う。 エイプリルフールがくると、どんな噓をつこうかとウキウキ頭をひねる。 七夕がくると、なりたい自分になれますようにと星に願う。 ハロウィンがくると、パーティー企画してかぼちゃケーキでも作ってみる。 クリスマスがくると、ああやっぱり彼氏ほしいなと思う。 ショッピングモールのデコレーションと共にあるような生活を、 販促ポップを見てラッキーと思えるような一日を、過ごしてみたかった。 残念でした、あなたはそれができない人でした。 きらきらし

          バレンタインがくると

          成人の日、変人である覚悟

          成人式に行かなかった。理由は、振り袖を着たくないから、だ。 自分が、振袖を着ることを楽しめない人間であることは分かってる。社会的に形成された「振袖を着たい」という感情を、内発的なものだと疑いもなく信じられれば、良かった。しかしそれ以前に、社会は私に、「振袖を着たい」という感情を植え付けてはくれなかった。もっとも、私が自ら拒否したのだが。 「振袖を着たい」と思えなくても、振袖を着ることはできる。しかしそれもできなかった。振袖文化を冷めた目で見つめてしまっていた自分は、そこに

          成人の日、変人である覚悟

          2020年と2021年の境界線、こどもとおとなのはざま。

          2020年が終わった。コロナ第三波で帰省できず、ひとりで迎える初めての年越し。年末年始ずっと頭にあったのは、虚無感漂うモヤモヤだった。 「2020年とはいったい何だったのか」 気付けば終わっていた2020年、よくわからん一年だった。自分にとって2020年とは何だったのか、ちゃんと考えてみるか。 いろんな出来事を思い返すと、「気づけば大人になっていた」と実感することが多かったと思う。 思い通りにいかないことを淡々と受け止めて、平静を装って諦めること。目標に向かって走っている

          2020年と2021年の境界線、こどもとおとなのはざま。

          変えることより、見つめたい

          今まで、自分は「不条理な世界を変えたい」と思っていた。貧困やホームレスや虐待や女性の社会進出や、自分の身近なところに限定しても不条理なことはいっぱいある。それらの状況改善を1市民の立場から応援することで、社会をいい方向に変えていくことに小さな貢献がしたいと考えていた。 その思いが、最近薄れている。なんでかと問われれば分からないが、変革そのものや理想の未来にワクワクできなくなった。何かのきっかけがあったような気もするし、なかったような気もする。たぶん、欅坂のドキュメンタリーを

          変えることより、見つめたい

          見えない世界 part1

          こんにちは。 入道雲のいい写真が撮れないまま夏を終えてしまって、アイコン画像をどうしようか迷っている入道雲です。 今回は、 「ほの暗い永久から出でてー生と死をめぐる対話ー」上橋菜穂子・津田篤太郎 を読んで考えたことを書いていきたいと思います。 「鹿の王」「獣の奏者」などの作品を世に送り出してきたファンタジー作家・文化人類学者の上橋菜穂子と、西洋医学と東洋医学の両刃使いの医師である津田篤太郎が、往復書簡という形で「生と死」というテーマについて語り合う内容となっています。

          見えない世界 part1

          困った時に助けを求めるべき?

          男の子がやってきた昨日、1階に住む男の子がうちを訪ねてきました。 (地方にある実家のマンションです) 彼は私の妹の同い年で中学3年生です。妹と特に仲がいいわけでもないし我が家ととくに接点のない子だったので、突然の訪問に驚きました。 父が玄関に出たかと思うと、父は彼を自分の部屋に案内しました。そして、10分ほどたつと「ありがとうございました」と言ってうちを後にしました。どうやら彼は、家の鍵をなくして家に入れなかったようなのです。それで、うちを頼ってきたのだと。だけれど結局カバ

          困った時に助けを求めるべき?

          はじめまして

          初めまして、入道雲です。私はどんな人間で、なぜnoteを始めようと思ったのか。自己紹介がてら紹介します。 アイコンは入道雲の写真にしたいのですが…納得のいく写真を自分でとれるまで少々お待ちを。 入道雲の基本情報自己紹介といっても、まだ個人情報をさらけ出すことに抵抗感があるので控えめでいきます。どこまでさらけ出すかはおいおい考えていこうかなあと思っています。 ・大阪の大学1回生。18歳 ・一人暮らし こんなもんにしときますとりあえず笑 そんな私がnoteを始めた理由 自分の

          はじめまして