アクリル板越しの世界
バイト終わりのフードコート。頭の下の方に血がたまったような疲労感を抱えてさまよい歩き、空席に腰を下ろす。
椅子に腰かけると目の前にはアクリル板。疲労で視野の狭くなった私には、世界はアクリル板越しにのみ存在する。
アクリル板の向こうの世界と、アクリル板が反射した世界が重なり合う。
ここがどこなのか分からなくなる。
私を360度取り巻く世界、移ろうその世界の真ん中にひとり。
世界から取り残されたと思った。
ジュースを飲んで目をつぶる。
頭全体に血が回ったのを感じて目を開けると、現実感が戻ってくる。
アクリル板の向こうの世界と、アクリル板が反射した世界。
重なり合った両者が、現実のものとして現れる。
そこは、疎外感も孤独もない、ただのフードコートだった。
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