見出し画像

私はあなた

私はあなた。
もし勉強が苦手だったら、
私はあなただったかもしれない。
母が例えば病気で、幼い私に構う余裕なんてなかったら、
私はあなただったかもしれない。
そもそも、私があなたの家に生まれてあなたの友達と出会っていたなら、
私は間違いなくあなただった。

私はあなた。この地平で地続きに存在する、同じ人間。
あなたがたとえどんなに遠いところにいても、あなたは私で私はあなた。
仮に、あなたと私が一生知り合わなくても。


なのだけれど、私とあなたは確かに違う。

数々のもしを超えた先で、私達はここにいる。
私はあなただったかもしれないけれど、今は確かに違う。

このどうにもできない孤独感は、たぶんあなたに分かってもらえない。
自分が抱えるのと同じものを、たぶんあなたは持っていないから。
持っていたとしても、お互いがそれを過不足なく正確に言葉にできないから。
完璧な共感、には永遠に手が届かない。
あなたがたとえどんなに近いところにいても、あなたと私は分かり合えない。

みんな私なのに、誰とも分かり合えない。
私は、ずっとひとりで、みんなと生きていく。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?