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「美しい」という表現について
私たちはしばしば、あるものを「美しい」と呼び、賞賛する。
「美しい」と呼ばれるものは、絵画や音楽が一般的だろう。「美しい色彩」「美しいメロディ」と言われる。一方、においや味は、「美しいにおい」「美しい味」とは呼ばれない。それはなぜか?
私たちはある程度客観的に好ましいものを「美しい」と呼ぶ。
絵画、彫刻、音楽、舞踏等は「美しい」。あるいは、美しいと思えず、自分はそれらを芸術として理解できないと
井上夢人『オルファクトグラム』感想
はじめに 近頃、調香師を主人公とした『透明な夜の香り』(2020)『赤い月の香り』(2023)と、千早茜の作品によって、嗅覚やにおいを主題とした小説が注目されつつある。
かつて書かれ、今も読まれている中で、嗅覚やにおいを扱っているといえば、ユイスマンス『さかしま』(1884)第10章、ボードレールの「万物照応」的詩作品、ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』(1985)など、海外の作品が容易に