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移住のターゲットは"イノベーター"、ここは未来広がる町。【おもせ〜ひと vol.5-2】

福島県大熊町の”おもせ〜ひと”(=面白い人)を数珠つなぎ形式でご紹介するインタビュー企画「おおくままちの”おもせ〜ひと”」。

今回ご紹介する”おもせ〜ひと”は、前回に引き続き、おおくままちづくり公社で移住促進のお仕事をされている山崎大輔さんです。

⏬山崎さんのインタビュー記事前半はこちら⏬

山崎大輔さん
千葉県出身。セブン-イレブン・ジャパン、青年海外協力隊、マヒドン大学への留学を経て、現在はおおくままちづくり公社で移住促進のお仕事をされています。目指すのは大熊の関係人口増加。町内でツアーの企画やオンラインコミュニティの運営をされています。

移住促進は人口が減少し続ける地方の自治体に共通する課題ですが、大熊町は8年間人が住めなかった地域。
一筋縄ではいかない移住促進にどのように取り組むのか町に集まるのはどのような人たちなのかについて、お伺いしました。


ー今はどんなお仕事をされていますか?

山崎:移住定住促進を担当しています。
大熊町は2027年までに居住人口を4000人にすることを目標としています。

大熊にもともと住んでいた人が戻ってくるのが一番なんですが、令和3年の住民意向調査では町に戻りたい元住民は1割強。戻らないと決めている人が約6割。どうしようかなと思っているのが2割くらい。
なので、元々大熊に住んでいた人だけあてにしてたんじゃダメで、外からの移住者を増やしていかないといけない。

まずは関係人口を増やすこと

山崎:移住を今の段階で増やせるかというと、私は難しいと考えています。
今町で住めるアパートは3棟で40戸のみ。引っ越すとき普通は数ある物件の中から住む場所を選ぶけどそれができない。そのような状況での移住促進は難しいのでまずは関係人口を増やそうと考えています。

※関係人口とは
「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。

総務省

関係人口増加のための3つのアクション

ー関係人口増加に向けてどんな取り組みをしていますか?

山崎:日本に市町村は1700ほどあるんですが、その中で大熊が選ばれるのはかなり奇跡的なこと。名前も知らない町が選ばれることはまずないので、まずは知ってもらうことから。

具体的に何をしてるかというと、まず1つ目はイベントの開催です。
大熊で5週間に渡って各1週間の農業インターンを開きました。昼に農作業を体験してもらう中で、夜の時間を使って学生に「大熊町の関係人口を増やす作戦」を考えてもらったんですが、出てくる案がどれもすごくいい。1週間大熊で生活し、町内見学や町民、役場職員などと話すことを通して、提案を受ける我々がプレッシャーを感じるくらいいい案が出てきます

そこで作った案を、「自分たちがやりたい」と言ってくれるくらい学生が町を好きになってくれた。これは間違いなく関係人口の増加につながっています。

2つ目は最近始めたおおくま町見学ツアー
町の説明と町民の被災体験を聞いて、中間貯蔵施設と町内を見学するというツアーです。
6人という少人数で実施しているので徹底的に質問に答えられ、評判がいいです。ツアーに参加した方が町のイベントに協力したり、移住の検討につながったりしています。

3つ目は大熊町サポーターズというオンラインコミュニティ。
農業インターンなどの様々な機会に来てくれる学生は「今後も大熊に関わりたい」と言ってくれている。でも、学生はお金も時間もなくて頻繁に大熊には来れない。だったらせめてオンラインでも繋がれる場所が必要だと思って作りました。
コミュニティの中でオンラインイベントを開いてもいいし、色んな地方創生に関わる企業が入っているので座談会も開けるかと思います。

大熊町サポーターズへの参加リンクはこちら
https://join.slack.com/t/okumafan/shared_invite/zt-1cthq5gd1-3bCv6LCCyRxfavzj9XJHAw

家も店も十分ではないけれど、そこには未来が広がっている

ー移住促進はどういう人をターゲットにしていますか?

山崎:マーケティング用語でイノベーター理論というのがあって、新しい製品やサービスはステージによってターゲットが変わります。今の大熊には「なんだかよくわからないけど来たい」っていう"イノベーター"が少数だけどいます。今ターゲットとするのはそういう人。それこそ新しいことに挑戦したい20代。

他にも 、50代、60代で第二の人生を大熊の復興のために使いたいという人が結構います。自分のスキルを試したいと言って来てくれています。

大熊は原発があることで、町外から働きにくる人が多かったから、1960年代から外部の人が来るのは当たり前でした。震災後にもいろんな団体が来たけどそういう人たちも受け入れてくれた。
だから、新しいことはすごくやりやすい町だと思います。

ー移住促進で課題に感じるのはどんなことですか?

山崎:「おもしろそうだ」と言って町に来て新しいことをしてくれるけど、一方で元からいた町民が置き去りにされているように感じます

町に若い人が必要なのは当然なんだけど、そればっかり強調していても町民には響かない。そこに戻ってきた町民の居場所ってあるの?って。そこは最近すごく意識しています。

━最後に、今これを読んでいる方に伝えたいことがあればお願いします。

山崎:移住定住促進として、今は革新的な人が主なターゲット。家も店も十分ではないけれど、そこには未来が広がっているので、そこに共感を覚えてくれる人がいるとありがたいです。
大熊町は、好奇心の強い人たちにとっては魅力的な場所。是非来てもらいたいです。


編集後記

取り扱っている住宅がアパート3棟40室というのは衝撃的な数字でした。今年6月に解除されたばかりで、2カ月ほどしか経っていないので当然と言えば当然ですが、かなり少ないです。そんな中でも移住を検討される方や実際に移住される方がいることに素直に驚きました。

どんな人が大熊に興味を持つかについてもかなり分析されています。自分たちのようなインターン生もイノベーターに分類される人達です。特に僕は『8年間誰も住まなかった町ってどんなところだ?』という興味でインターンに参加しています。だから大熊でたくさんの人と交流ができてすごく楽しいです。『好奇心の強い人たちにとっては魅力的な場所』というのは本当にその通りだと思います。自分自身がそうなので。

3つのアクションの話もとても興味深かったです。移住とは離れた仕事に見えますが、今の大熊には必要なことです。町を知ってもらい、来てもらい、興味を持ってもらう。地道な活動ではありますが、歩み始めたばかりの大熊ならではの移住支援の在り方ですね。

インタビュー:殿村・中井
編集:中井

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