【うつ闘病記】地宙人、家を買う - 04_夢、はじめました
ピンちゃんにせっつかれて、売り地に行ってみると確かに義母と義姉の住む一軒家の裏十数メートルに位置していて一分程度で通えてしまう場所であった。ピンちゃんは家族(特に母親)のことが大好きだし、これから子育てをするといった面でも自分の母親の近くで暮らすのは理想的に思える。また、ボクは車が運転できないから、家族をどこかに連れて行くということもできないのだけれど、義姉は車を運転できるので連れ回してもられる。そういった面でも今後の子育てにも良いように思えた。
売り地には不動産屋のお姉さんがいて、いろいろと説明をしてくれた。
「以前はここは空き地だったんですが、地主さんが突然売りに出したんです。このあたりの大方の土地は売りに出されてしまったので、今回みたいに十棟近く一斉に戸建てが立つということも、最寄り駅から徒歩圏内となると今後あまりないでしょうね」
言葉巧みとはこのことで、今逃したらもうこんなチャンスは無いと思えてくるではないか。さらに追い込んでくる。
「今はまだ公開していない売り地なので、どの場所でも選べますよ」
こうなってくると、早く決めなくてはという気持ちになってくる。
「契約に関する詳しい話は、また後日、上の者がご対応します。いつのご予定がよろしいですか?」
「あ、そうですね……う~む」
あまりにトントン拍子に話が進んでいくのでさすがに躊躇していると、すかさずピンちゃんが前のめりに乗り出してきた。
「この日とこの日と、あとこの日が空いてます!」
ああ、どんどん話が進んでいく。というか、我々には貯金なんて無いとピンちゃんからは聞いているけど(家のお金のことはピンちゃんが管理している)、家なんて、買えるのか?
ということで後日、不動産屋の担当者の「ヌキトリさん」(なぜこんな呼び方をするのかは後ほど)と打ち合わせを行うことになった。源泉徴収書を見せつつ単刀直入に聞いてみる。
「このくらいの年収なのですがローンは組めますか?」
すぐに回答。
「はい。大丈夫ですね。お勤め先も大手メーカーの系列で今後のご収入も安定されているでしょうし、余裕でローン組めますよ。それでは話を先にすすめますか」
その答えに脱力。ボクのような何のとりえも無い、仕事でも失敗続きの人間が、こんな簡単に家って買えるの?ひとえに、大学・大学院を大金を払って出してもらい、新卒として大手メーカーの関連会社に入れたおかげであろう。そういった意味でも両親に感謝しなくてはならないと思った。とはいえ、家を買える自分が誇らしくて、話をしているだけでホクホク顔になっているのがわかった。
かくして、ボクには夢が出来た。家族との幸せの生活の場所「マイホーム」を手に入れることだ。しかもその夢は、叶わない夢ではないのだった。
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★無料期間中★ 私は現在、メンタルヘルスを抱えながら「障がい者雇用」者として家族や周りの人々に支えてもらいながら(あと大量の薬服用汗)、な…
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