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詩・散文

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#詩の様なもの

詩・散文「臍考」

詩・散文「臍考」

臍考

臍と言うのは不思議なものだ。何の役に立つでもない腹の窪み。無くとも良いが無ければきっと寂しいに違いない。何故だろうか、この、臍を失う寂しさとは何か。

私は臍ではないが臍は私の一部である。しかしじっと臍を見つめていると、ひょっとしたら臍は臍として、私ではない臍として、私の腹の真ん中で何か想う事があるような気がしてくる。
しかしやっぱり臍は私の一部なのだから、単に他人でもないのだろう。すると

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詩・散文 「走る」

詩・散文 「走る」

「走る」

青空の下
走る。
捨ててきたものは何もなかった
別れた人も誰もいない。
過ぎ去ってこそ初めて出逢う人、
ものものに
嬉しくて嬉しくて
なべてリュックに背負い込んで走る
走る
稲穂の風に靡く金色の道を
只管な道を。

涙が溢れ出てくるのはなぜか。

2010年頃 岡村正敏

詩・散文「岩になり砂になり水になり空になり」

詩・散文「岩になり砂になり水になり空になり」

「岩になり砂になり水になり空になり」

真っ平らでダダ広い大地に 亀裂が入りひび割れると そこには無数のゴツゴツした岩岩がひしめいていた この岩を二つの拳が叩いて砕くと 岩岩は礫になり砂になって拡がって まるでそこは海のような砂原になった やがて風が吹いて砂の粒子を巻き上げると それは空一面に舞い散って 空のような宇宙になった そうしてそこには透明な粒子が遍いていた それはもう粒子と呼べるものでも

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