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皆様の執筆された心に留めたいnote記事を集めさせて頂いております。 素晴らしい作品に感謝です。
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#緩和ケア

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第1部)

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き05(第1部)

論点:議論は国家・個人的信条・社会的慣習などから自由であるべきである

 前回の記事では、「医師はそもそも安楽死制度の実行に関わるべきでは無いのではないか」というテーマについて議論の進め方を書きました。

 今回の記事では、安楽死制度を議論する上での最大のタブー「個人的信条を安楽死制度の議論に持ち込まない」について取り上げます。

わかりやすいタブー:経済と安楽死を結びつける議論

 いきなり「個

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安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き04(第2部)

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き04(第2部)

論点:安楽死を実行/介助することができるのは医師に限定すべきか

 前回の記事では、「安楽死を実行するのは誰か」というテーマにおいて、医師全員にその資格を与えるべきか、与えた場合と与えない場合でどのようなメリット、デメリットがあるのか、について解説しました。

 医師全員が安楽死を実行できるようにするにせよ、実行するための資格を別途準備するにせよ、大きな混乱が起きることは必至です。安楽死賛成・反対

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安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き04(第1部)

安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き04(第1部)

論点:安楽死を実行/介助する資格を全国の医師全員に認めるべきか

 安楽死制度が実現した場合の運用を考える際、「誰が安楽死を実行するのか」の問題が常に付きまといます。
 海外においては、基本的に医師が実行(処方)する運用ですが、やはり医師によって「私は自らの患者に安楽死を行うことを拒否する」方もいるようです。
 おそらくは日本においても、安楽死制度の運用が開始された場合に、それを積極的に行っていこ

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安楽死と余命の関係~安楽死制度を議論するための手引き03(第2部)

安楽死と余命の関係~安楽死制度を議論するための手引き03(第2部)

論点:安楽死制度に「余命要件」「疾病要件」を盛り込むべきか

 さて、前回に引き続き「余命要件」と「疾病要件」を設けることの利点と問題点について考えていきましょう。

 まず、大前提として(再確認ですが)「余命要件」と「疾病要件」を安楽死制度に付与することの最大のメリットは「反対派の数を減らすことができる」点です。
 例えば、「安楽死制度を利用することができる人は余命半年以内と診断されたものに限る

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安楽死と余命の関係~安楽死制度を議論するための手引き03(第1部)

安楽死と余命の関係~安楽死制度を議論するための手引き03(第1部)

論点:安楽死制度に「余命要件」「疾病要件」を盛り込むべきか

 前回まで、「安楽死制度を求めるために必要な3つの要素」、
①緩和ケアの発展と均てん化
②医療の民主化
③患者の権利法
についてお話してきました。

 では具体的に、この3つの要素を日本でどのように獲得していけばよいのか?について考えてみましょう。
 そもそも大前提として、

「安楽死を求めているのは国民の多数派ではない」

 という事

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安楽死制度を求めていくために必要な3つの要素~安楽死制度を議論するための手引き02(第3部)

安楽死制度を求めていくために必要な3つの要素~安楽死制度を議論するための手引き02(第3部)

論点:日本社会は、安楽死制度を運用できるほど「成熟」していないのではないか?

 前回までの論点は、

 それに対し、僕が示した大前提は「まず全国において(ある程度のレベルで)緩和ケアが発展し、均てん化することが大前提、といった話をしてきました。

 少し時間が開いてしまったので、僕が挙げた「安楽死制度を求めるために必要な3つの要素」を振り返っておこう。

①緩和ケアの発展と均てん化
②医療の民主

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  幸せな「凱旋」 癌で逝った弟

  幸せな「凱旋」 癌で逝った弟

 此処は埋め立て地なのだろうか。
 港湾をつなぐ水路に囲まれたベイエリアの一角に病院はあった。

 病棟の二重扉を入ると、まっすぐ伸びた通路の両脇に病室が並び、その突き当たりはニ方向ガラス張りの休息室になっていた。
 入り口脇にある来訪者の受付カウンターで手続きを済ませると、一区切りつけたくて明るい窓側の席に腰を下ろした。

 糸のように撚れた穏やかな運河のような海面を、時折小さな船舶が行き来して

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苦しみの全てをゼロにできるのか~安楽死制度を議論する手引き00

苦しみの全てをゼロにできるのか~安楽死制度を議論する手引き00

安楽死を求めた二人の物語をつづった『だから、もう眠らせてほしい』の公開、そして書籍化から2年。

国内では安楽死制度の成立を求め、それに賛成する声も多い中、国民的議論としてはほとんど進展をみせていない。

安楽死制度の話題が出るたび、「もっと議論を深めるべき」「いまの日本では時期尚早」という結論が繰り返されるが、「では具体的にどのような論点で議論を深めるべきか」「いつになったらその『時期』が来るの

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