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安楽死を行うのは誰か~安楽死制度を議論するための手引き04(第2部)

論点:安楽死を実行/介助することができるのは医師に限定すべきか

 前回の記事では、「安楽死を実行するのは誰か」というテーマにおいて、医師全員にその資格を与えるべきか、与えた場合と与えない場合でどのようなメリット、デメリットがあるのか、について解説しました。

 医師全員が安楽死を実行できるようにするにせよ、実行するための資格を別途準備するにせよ、大きな混乱が起きることは必至です。安楽死賛成・反対の議論を行う上で、「そもそも制度化が実現されたとして、それを実行に移せる人がどこにいるのか?」「資格をもった医師を作るとして、それが日本に何人生まれるのか?そしてその医師にどうやってアクセスできるのか」といった議論抜きでは、安楽死制度を実行していくことなど不可能なのです。
 では、考え方を変えて「そもそも、安楽死制度を実行できる資格は、医師のみに認められるべきなのか?」としてみたらいかがでしょう?

医師以外に安楽死が実行できる制度は存在しない

 世界で安楽死制度を採用している国のうち、その実行に医師が関与しない制度をしいている国は、僕の知る限りでは存在しません(いや、この国は実行しているというのをご存知でしたら教えてください)。
 安楽死制度を実行するにあたり、そのための薬を「処方」する権限が、基本的に医師にしか認められていない国がほとんどだからだと思います。他にも、余命や疾病の重大性、治療の可能性などについて総合的に評価できるのは医師に限られるため、その実行のプロセスに医師が関与しないことは、安楽死を希望する人にとって不利益が大きくなる恐れがあるというのもあるでしょう。
 しかし、前回も述べたように、医師は単純な医学的判断のみで臨床を行っているわけではありません。医師も人間ですから、個人的な感情や信念、宗教的バックグラウンドなど多様な背景を持っています。当然ですが、それらによって治療方針は大きく揺るがされる、というのが普通です。よって、安楽死のプロセスに医師が関与したとしても、その医師がそもそも安楽死に「賛成」なのか「反対」なのかによって、大きく行く末が変わってしまう恐れがあります。それであれば、そもそもそんな不確かな「医師」などという存在に、生殺与奪の権を与えるべきなのでしょうか? という疑問が湧いてきませんか?

医師はあくまでも「生命の保護者」の立場を守るべき

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