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「仕事と人生」西川善文(著)

・世代問わず勉強になる一冊

 この本に書かれていることは現在、何かしらの形で社会と関わっている全ての人にとって有用なことだ。これから就職する人も、バイトしている学生も、会社の重役も、平社員も関係なくこの本は世代ごとに刺さる内容が書かれている。

職種も関係ない。著者は銀行員であったことから銀行の話が多いがここに書かれていることは職種問わず社会に関わり動かしている全ての人が利用できる基礎的なことだ。私も多くのことを学ばせてもらった。

・基本だからこそ重要

 私がこの本を出合ったきっかけはその前に読んだ「郵政腐敗」から著者を知ったことだった。民営化を進めるために著者は多大な努力をしたにも関わらず政治によってその道を潰されてしまった。そんな著者のことが気になったのだ。

 この本に書かれていることはきっと職種問わず活用できる社会人、組織人、そして一労働者としての基礎に他ならない。しかし、これを改めて著者の経験に基づく言葉を通じて読んでいくといかに基礎を疎かにしすぎかと感じる節が多々ある。

例えばいろいろやりたいがままに風呂敷を広げてはみたもののどれも中途半端になってしまうというのは自分でも経験のあることだ。物事に凝り過ぎてまったく前に進まない人もよくいる。失敗をどうにかしようと粘り悪化させてしまったり、一度ついた嘘を清算できず引きずり自分の首を絞めるなどなど。

 きっと誰しもどこかで経験しているかもしれないミスについての記述が多いと思う。だからこそこの本は基本的なことだけれどもむしろその基本こそが重要であり、無理に奇をてらう必要はないと読者を落ち着かせてくれる。

焦ると何か都合のいい話に飛びつきたくなることもある。誘惑はたくさんあるが結局は基礎を地道にやりなさいとこの本は読者に警句を与えている。基礎のできない人に応用などできないのだと思い上がりを叩き潰してくれるいい本だ。

・いつの時代も変わらない普遍的な思考

 社会が技術革新によって変化し、労働の形が変わっていくということが言われる今の時代だが、その根本となる意識は変わらないと著者が一組織人として働いていた時期の例からも痛感する。

時代が変わっても変わらない普遍的な社会との向き合い方、組織との向き合い方、人との向き合い方を余すことなくこの本から読者は読み取ることができるだろう。

時代を変えようと意気込む人には退屈に思えるかもしれないこの本からきっと次代を担う人が生まれてくるように思える。なぜなら前にも書いた通り基礎が重要だからだ。

一発逆転などという賭けに勝つ人間など少数だが、基本を身に着け実践し絶えず努力を重ねた人間が巡り合うことのできる結果は誰にでもその機会が与えられている。

そんな勇気と労働の普遍性とあらゆる関わりにおける発想法と人としての基礎を学び続けることのできる一冊だった。できることなら著者に会いたかったくらいの感動を私は得たと言える。

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