人から好かれるには、興味のない人を好きになる技術が必要な件

人から好かれるには、どうすれば良いのだろうか。人気者になりたい、という欲求は多くの人が持っているけれど、実際にどうすればいいのか皆目見当がつかない。

本を読んでみると、相手にgiveすることが大事だ!と書かれている。何かを与えてくれる人に、人は興味を持ちやすいよねという理論で、まあ納得できる。けれど、一体何をgiveすれば良いのだろうか。さっぱりわからない。しまいには自分が人に与えられるものなどないかもしれない…と途方に暮れる。

もちろん僕もgiveしなければ!と思って、行動したことはある。飲み会の幹事をしてみたり、仕事を率先して引き受けたり…。けど、ほとんどの場合は続かないし、何も残らない

もちろん継続して取り組み続ければ、少しずつ積み上がっていくのだろうけど、続かないものは続かないのだ。

けれどもだ。相手のことが好きであればgiveできるのではなかろうか。むしろ喜んで率先して行う気がする。気になる女の子、尊敬する上司、長年の幼馴染…。結局は、自分の興味がある存在には、自然とgiveできるものなのだと思う。

しかも、好きである時点で好意そのものもgiveしている。相手からしたら要らないかもしれないけど…。

好意の返報性という言葉があるように、人は自分に好意を持ってくれる人のことを好きになりやすい。何かをもらったらお返ししなきゃっという感情だ。自分のことを好きになってくれる人のことはなかなか憎めないし、大切にしたいと思うのが人情というものだ。

この理論を拡張していくと、自分の好意の幅を広げていけば、自分を好きになってくれる人の幅も広がるのではないか。そしたら、その分だけいろんな人にgiveできるのではないか。という結論に行き着く。

誤解のないように記述しておくと、ここでも「好き」とは、恋愛感情の好きよりも広い意味での、愛着のようなニュアンスだ。念の為。

好意の幅を広げるためには、興味がない人にも好意を持たなければならない。

しかし、興味のない人を好きになるというのは至難の技ではなかろうか。興味がないのだから、当然だ。興味を持てない人の人口の方が圧倒的に多い。


最近読んでいた『人生パンク道場』というエッセイに、人に興味を持つためのヒントが書かれていた。この本は、質問者の人生の悩みに小説家 町田康さんが答えていく構成だ。

本の中の悩みにこんなものがあった。

友人が、カレシの話ばかりするので、うんざりしています。どうにかやめさせたいのですが、どうしたら気づいてもらえるでしょうか?

つまりは、お前の彼氏に興味ねえよ…!ということだ。もしこの彼氏が、とんでもなくヤバい浮気男だったり、DV男だったりしたら、親身になって聞けるかもしれないけれど、毎回惚気話だった日には、どうぞお幸せに!という感じだろう。

この悩みの回答は、こんなものであった。

それは、他人の人生をエンターテインメントとして捉えること、だ。

人間の生、他人の人生こそが究極のエンターテインメントなのです。それらを知れば知るほど、人間としての彼氏に対して興味が湧いてくることでしょう。つまり、仮に彼が吉野谷男という名前だとすれば、あなたは吉野谷男の研究者となればよいのです。 その研究は緻密であればあるほどおもしろいでしょう。その成果を、文章に工夫を凝らし、おもしろおかしく書けば立派な文学になります

どんな人にも、おもしろおかしい部分が少なからずある。その部分をしっかりと聞き出して、プロファイリングしていけば、少しずつ対象に対する興味が湧いてくる。最終的には、それを話のネタにしてしまおう!という提案なのである。

話のネタにすることを前提にすれば、世の中の捉え方が変わる。一見面白くなさそうな事柄も、見方を変えれば面白いネタになるかもしれないから。

こんな話を聞いたことがある。

すぐれた小説家がすぐれたエッセイストであるケースは無数だ。しかし、すぐれたエッセイストがすぐれた小説家であるケースは、稀である。

そう。小説家が書くエッセイってだいたい面白いのだ。その理由がわかった気がする。文章を書くプロなのだから、文章表現がすぐれていることは言うまでもないが、もう1つ。人間観察力がずば抜けているのだ。

考えてみれば、当然のことだ。小説にはたくさんの登場人物がでてくる。自分とは種類のまったく異なる人も描くことになる。そのためには、いろんな種類の人について深く知らなければならない。

小説家は日頃から人間観察を行い、人にまつわる情報のストックし、物語に活かしているのだ。だからこそ、エッセイに登場する人物の描写も鮮明だったりする。

この話は興味のない人を好きになる技術にも応用できる。

つまりは、話のネタにできないかという視点で人間観察をするのだ。もちろん観察とは、観るだけではなく、聞き取り調査も含まれる。

たとえば、同じ職場に苦手な上司がいたとしよう。苦手な人には、できるだけ関わりたくないものだ。けれど、そのまま放置すると人間関係は悪化して、居心地が悪くなってしまう。

そこで彼のことを観察する。少し日焼けしている。家族でキャンプに行っていたそうだ。家族について聞いてみると、実は溺愛している2歳の娘がいる。でもすでに娘からは煙たがられはじめている…。

みたいな話が出てきたとしよう。ちょっと愛着が湧いてこないだろうか。子どものために、プレゼントでも買ってあげようか、という気も少しは出てくるというものだ。

もっと深堀りして聞いてみる。

子どもがいる気持ちってどんなものか。男の子がほしいとは思わないか。家族でやってみたいこととかあるか。しんどいことはないのか。仕事に対する向き合い方は変わったか。などなど。

このような聞き取りを繰り返すと、この人物がどのような行動原理の持ち主なのか判明してくる。どんなことに喜ぶのか嫌がるのかがわかる。かなり接しやすくなるし、もしかしたら話のネタにもできるかもしれない。

行動原理がわからない人物は何をするのかわからないから怖い。逆にわかっていれば安心できるし、愛着を持てる。まずは、その対象のことをよく知ること。それが人を好きになる第一歩なのだ。

ちなみに、ネタにされるのは嬉しいような、嫌なような絶妙な気持ちになる。こっそりやるのが吉だ。


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