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スージー鈴木『平成Jポップと令和歌謡』(彩流社)を読む

スージー鈴木さんという音楽評論家の存在を知ったのはNHKBSの『球辞苑』だった。「マウンド」や「流し打ち」など野球のマニアックな1テーマで1時間というコアな番組で、その日のテーマは「応援」だった。

始まりはNHKBS『球辞苑』

自身も千葉ロッテマリーンズファンのスージーさんは推し球団の話題をちりばめつつ、各球団のいろんな選手の応援歌について音楽的見地からいろんな切り口を教えてくれる。試合中のBGMくらいの感覚だった私は「楽曲」としての応援歌がこんなに面白いのだと初めて知った。

音楽評論というとどこか難しくて、特殊なアンテナと特殊な用語を駆使する人にしか書けないし理解できないと思っていたので、そのときのスージーさんの話が「入ってきた、分かった」のがとても新鮮だった。

それで新しく見始めた番組がBS12の『ザ・カセット・テープミュージック』。マキタスポーツさんとスージーさんがおじさん目線でJポップや洋楽、歌謡曲を分析していく番組。惜しくも先日休業してしまったけれど、コード進行や過去の楽曲を絡めた文化論は毎回楽しみだった。

そんなスージーさんが最新Jポップを集めた新刊を出すという。

「最新の歌」を補完したい人へ

昔から好きなアーティストは追いかけても、流行しているJポップや歌謡曲にはあまり興味がわいてこない。自分で「これはどうにかしないとな」と思っていたところ、スージー鈴木さんのこの本に出合った。

2016年に「最新ヒット曲について、東スポで解説してほしい」と依頼されて始まった連載がもとで、2020年までの記事がまとまっている(現在も連載中とのこと)。総数200曲以上、正直知っている曲はちょっとでほとんど知らないかも…。

でも読めばその遅れをかなり取り戻せる。

『ザ・カセットテープ・ミュージック』のスージーさんのあの解説が好きな人なら知識がぐいぐい入ってくるはずだ。食わず嫌いだったヒット曲にもいろんな文脈があって、新しいこんな点も取り入れているとか、過去のこんな曲と共通しているとか。

さらに面白いのは、サブスクを活用して「聴きながら読む」と曲も文章も3倍増しで立体化されるところだ。スージーさんのnoteではプレイリストが公開されているので、いつも使っているツールから聴いて読むと「こんな楽しみ方もあるのか」とびっくりする。

書かれているコード展開の話やパートの細かな技術も「ここか…」と確認しながら読める。思わぬ曲が自分のお気に入りになったりして、久しぶりに音楽の世界が広がった。面白かった!

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『ザ・カセットテープ・ミュージック』の感激はこちらでも。


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